第221話 守護者
てれれてってって~♪ 色魔のレベルが上がりました。
てってれ~♪ 性豪のレベルが上がりました。
てってれ~♪ 『絶倫王』の称号を獲得しました。
『絶倫王』
うまい、ふとい、おおきいの三拍子揃ったマイサンを余すところなく使いこなす達人に贈られる称号。どれだけの乙女を鳴かせるのでしょうか~。罪作りな腕白棒はちょんぎっちゃってもよいのですよ~?
どうしてこうなったー!
いえ、もう自業自得なんですけどね……。
ついに師匠に並ぶレベルのスキルを獲得、だが人には言えない話せない。そんな~私は~どうしたらいいのでしょ~♪ 全く嬉しくないね!
しかも何だよ、この称号!!? 性豪が王級レベルに上がるのを待ってましたといわんばかりのタイミングで出てきたし! 孔明《駄女神》の罠か! というか説明文が怖すぎるわ!
もう現実逃避して眠るしかない。そんなわけで横ですよすよ寝息をたてている二人に習って布団に潜り込みましたさ……。
朝になり二人の大きなにゃんこを連れ立って帰宅した俺は事の次第をフツノさんたちに報告申し上げているのが今現在でございます。勿論、姿勢は土下座。最上級の構えでございます。
「うん、まあ、そんな気はしてたしええねんけども……しっかり責任はとったってや」
半ば予想されていたのか然程修羅場ることなく事態を飲み込んでいただけました。
でも、後から俺が持つあのスキルと新たに加わったクラスのせいか『最近、意識が飛びすぎて次の日が辛い』と生々しいお言葉をいただきました。頑張りすぎてすいません。なのでローテーションが組めるくらいの人数が望ましいと増やしてもいいのよ発言まで! ただし愛情はちゃんと注いでくれないと拗ねちゃうからねと釘は刺されました。いや、そげん増やすつもりはなかですよ? ティーナさんのことだって全く踏み抜くつもりはなかったんですけどもね。今更言っても説得力はないですが……。せめて男の甲斐性だけはしっかりせねば。よし、今日も頑張るぞ。
まずは冒険課へ行って部隊の割り振りを。当初の予定通り3部隊に分け2部隊を食材の収集と依頼の消化、残り1部隊はここへと残り訓練と和泉屋の警護に当たる。
最初の一週間は探索組にミタマ、フツノさん、カグラさん、タマちゃんを派遣し心得と補助をお願いする。クラスチェンジ組のため、特に修道士に教えるためというのが大きい。明確に傷が治るイメージが強いほど、人体の構造を把握しているほど回復力が上昇するようなので現場で教えるほうが効率が良いのである。
待機組はティーナさん、セフィさん、エレノアさんが稽古をつける。セフィさんは戦闘を離れ鈍っていたところを鍛えなおすという意味合いも兼ねていた。というかエレノアさんとガチで戦えるとは思ってもみなかったよ。鈍っていてそれなら本調子はどうなのか。そう思ったが『本気を出すのは殺してもいい相手だけなのぉ』と言われたので『わーぉ』と返すしかなかった俺がいる。家族サービスはしっかりしないと、しないと駄目だね!
次に向かったのは和泉屋農園二丁目。既に日もいいだけ昇っているので薬草の採取作業と水撒き、栄養剤散布は終了しており雑草と格闘するものだけがこの場に残っていた。
冒険者になった当初、薬草の素材であるヒラ草などを根こそぎ持ってきていた俺であり依頼を出していた冒険者にもそう教えていた。その方が出来上がったポーションの品質が高くなるからであったのだがここにきてその前提が覆ったりしている。うちの農園で育てた薬草限定だが伸びてきた葉の部分だけでも十分に効果を発揮することが判明したのだ。分かったのは識別先生のお陰である。うちの場合、栄養剤を濃魔力水で割ったものを追加散布している。そのせいで薬草自体の保有魔力が上昇し効果を飛躍的に高めているらしい。
という訳で株からある程度の新葉を採取したら定期的に新芽を植え替えて若返りを図るというサイクルを構築しようと思う。葉が硬化し始めたあたりが植え替えのタイミングかね。判明してから初めての試みだから失敗しても仕方ないと割り切っているのであとはやってみるだけである。
元の素材が高品質であればポーション作成の際に使う分量を減らすことで品質が維持できるため増産がより楽に行えることになる。水増しというなかれ。あくまで求められるのは一定の品質なのだよ。
なんせ際限なく濃くしてしまうとハイポーションより上のエクストラポーションとあまり差がない回復効果を発揮しやがるのだ。他の錬金術師からどんな目で見られるのか分かったもんじゃない。
このことについては俺とセフィさんだけの秘密なのだ。ま、うちの面子には『ディバインポーション』という女神の祝福を受けた特別なポーションと銘打って配ったりしているが。非売品であるから誰にも文句言われないし言われてもしったこっちゃないで押し通す所存ですわい。
その後、素材作成を全てこなしお昼をとったあと午後からは本日のメインイベントでございます。
「うふふぅ、それじゃセフィさんのゴーレム作成講座、始めましょうかぁ♪」
まってましたと拍手を送るも生徒は俺一人。訓練のほうはセフィさんだけこのために早引けです。
「まずゴーレム作成に必要なスキルは錬金術、魔工、あとは各種素材に合わせた専門の知識と加工技術かしらぁ」
ふむ、ん? ということはセフィさんはゴーレム作れないんじゃ?
「そうねぇ。私は知識として知っているだけなのぉ。だから手順は教えられるけれども実際に作るのはノブちゃん次第になっちゃうわねぇ」
なるほどね。話の腰を折ってすません。続きをお願いします、先生。
「ゴーレムを作り出す方法には二通りの方法があるのぉ。一つ目は素材を集めそれへコアを埋め込んで作り出すやり方ねぇ。もう一つはコアに直接魔力を注ぎ込んで魔力を物質変換する方法よぉ。どちらも一長一短があるからそれを説明するわねぇ」
セフィさんが説明してくれたものをまとめるとだ。
素材を集めて作り出すやり方であれば長所は作り出す際に必要な魔力が少なくて済むことと同じ素材さえあれば魔工で埋め込むことで修復が容易になることだ。短所としては素材にかかる費用か。希少金属などで作り出そうと思えばそれ相応の財力がなければ不可能だということだね。その分、性能の伸びは大きいらしいけどもさ。
もう一つの物質変換に関していえばコアさえあれば作成できる。ただし、必要とされる技術と明確なイメージ、それに応じた膨大な魔力が必要とされる上、失敗すればコアは砕け散り失われてしまう。セフィさんでも成功したのを見たことは一度きりだそうだ。
俺がどっちをとると言われればまずは前者で肩慣らしをして慣れたら本腰入れて後者をやるという日和見作戦しかあるまい! 現在手持ちのコアは3つ。2つを素材ありで1つを博打でやってみよう。
それからどげんした?
セフィさんを引き連れて再び和泉屋農園へリターンです。防犯にマンドラゴラを植えてはいるもののやはり見張りは必要ということでお試しにストーンゴーレムあたりを作り出そうと思うのですよ。
まずは元となる像をいつものあれで作り出す。うーむ、護衛? 守衛? かかし?
よし、こいつに決めた!
「ストーンウォール! 出でよ! 混合力石像!」
ズドム!
地面を突いて現れたのは大柄で彫りの深い顔の像と長い前髪の小柄な引き締まった体を持つスタイリッシュな像の2体。2体とも得物は拳。トランクスにシューズとフットワークの軽さは抜群に見える。どこかで見たことあるとか言わないの! 本来なら石を魔工で削ってっていう作業が必要なんだろうけど俺のストーンウォール技術は日々進歩しているので今回はそれがいらないという事態に。おぅふ。
そんな石像にコアを押し付けてやるとそれはなんなく中へと吸い込まれていった。
「それじゃ私の言うとおりに詠唱してねぇ。『我は望む。我が魔力を糧に汝産まれ出でん。真理の下に』。そして名前をつけてやれば完成よぉ」
「『我は望む。我が魔力を糧に汝産まれ出でん。真理の下に』」
詠唱した途端にギュオっと音がするほどの勢いで魔力が石像へと流れ込んでいく。なるほど、これじゃ一般の錬金術師だったら干からびてしまうかもしれん。というか精巧に作りすぎたせいもあるかもね。1体につき1,000ほど魔力を持っていかれているもの。
「汝の名はトール。汝の名はジョウ。我が記憶を読み込め。汝らに命ずるは農園の守護者なり」
俺が名づけると石像の目に光が宿りゆっくりと動き出し始める。ファイティングポーズだったその手を地面につき跪いた。それにしても記憶の読み込みなんてふっと口に出たけどこれは一体どういうことだ? もしかしたらグネの知識が入ったりしてきているのだろうか。
『トーーーール』『ジョーーーウ』
ああ、しっかりとした言葉は喋れないのね。試しに動いてもらったがそれでもただのゴーレムとは違い動きは遅くない。割合華麗なフットワークでグローブ状の拳を打ち込んでいた。てっきり昔のポリゴン並みのカクカクした動きかと思えばぬるぬる動いている。ゴーレムと言えば重厚なものというイメージのあったセフィさんは少々目を丸くしているもの。俺もそうだとは思うのだけれどこういった泥棒相手だからこそある程度動けないと駄目かなーと感じて試してみたらこうなった。
ノリと勢いで農園の守護者命じたけれどもちゃんと認識しているかな? うちの従業員殴っちゃだめだぞ?
『トーーーーーール』『ジョーーーーーーウ』
何となく理解してるっぽい? 取りあえず君たちの立ち位置はここな。阿吽の如く入り口を守護してくれたまえ。
『トーーーーーーーーール』『ジョーーーーーーーーウ』
若干不安になったため残りのコアで司令塔を……と思って物質変換のほうの作成方法を試してみる。
パッキャーーーーーーン
50,000と大量の魔力を消費したくせに見事に失敗してしまったよ。それはもうパリンと粉々に砕け散ってしまった。タンゲー!! 名前も考えていただけに無念でござる。
農園守護用ゴーレム『混合力石像』
素材が石の割には素早く動けるスタイリッシュなストーンゴーレム2体。大柄なほうはアッパーカットが得意。小柄なほうは技巧派でカウンターを上手く使用する。活動には魔力の補充が必要で最大まで補充すれば1年は運用可能。通常は石像として入り口の両脇にスリープモードで立っている。




