第215話 和泉屋さんの雇用事情
ゆっくりだけど更新は続けるのだ! うん、頑張るorz
長い長い一日が終わり再び朝日が昇る。
ぐっともーにん、皆さんいかがお過ごし? ノブサダです。
流石に遅く帰ってきたのと旅の疲れからかあっさりと帰宅するなりベッドへとダイブしました。目覚めすっきり今日も髪が爆発しております。
ティーナさんはすでにこちらの館へと移っており顔合わせは済んだようだ。俺が帰ってきたときちょっとミタマと面つき合わせていたけども……険悪な雰囲気というわけでもなかったがネコ科の意地の張り合いだろうか? マタタビ酒を嗅がせたら二人ともふにゃんとなったのでベッドへ運んでおいたけどもね。
そしてそんな意地の張り合いは現在進行形で行われていたりする。
はくはくはくはく
がつがつがつがつ
飛び散る肉片。噴出す果汁。だがそれらがテーブルなどに広がることは無く器用に全てを空中でつまみすすり飲み込んでいる。どこの奇術師だよ……。君たちもうちょっと落ち着いて食べなさいな。これって似たもの同士のじゃれ合いにも見えるかね?
スパスパァン!!
いつもはボケ役のフツノさんからハリセンがとび仁義無き戦いは幕を閉じた。いつのまにそげなもんをこさえましたかフツノさん。いや、前に俺が使っていたけどさ。
朝食を済ませた後は俺も内心不安いっぱいの『どきどき亜人獣人面接たいむ』である。
『仁義守館』の広間に集められた総勢100名近い人数が一斉に会するのだ。まずは最初の意思確認。うちに残留して職を選ぶかここを出て独自の道を探すかの二択である。蝙蝠人族は既に異魂伝心が済んでいるため今更なのだが一応サクラとして残留の方に参加して貰う。
結果として残ったのは7割ほどだな。亜人ではラクシャ君のみが残留することになった。残りの四人は長く離れていた故郷を一度見に戻りたいと申し出てきたので受諾。その気持ちは痛いほど分かるので引きとめはせず支度金を渡して旅の無事を祈ると送り出してやる。『なんとしてでも部族を説き伏せて主の下へはせ参じましょう』とか言っていた者もいたのだが無理はしなくていいからねと言葉を濁したのは内緒だ。まるっと部族一つこられてもまとめ切れる自信がない。もし来ちゃったら指揮能力の高そうなティーナさんたちに期待しよう。させて下さい、お願いします。
他の獣人たちも同様だ。支度金は1万~3万マニーほど。家族で連れ立っていくものや道中に不安の残る亜人たちには多めに渡している。渡したときは涙ぐんでこのご恩は必ずお返しいたしますと俯く者もいた。善意100%ならいい人なんだろうけど俺にはそれなりに下心があるんでそこまで感謝されるとちょっとだけ胸が痛む。未だ取らぬ狸の皮算用ではあるが目的があるためいつかこの伝手が生かせたらなぁと思っていたりするのだ。我ながら善人になりきれぬ小者でござる。
うちから出る中でドワーフの親子はおやっさんのところへ住み込みで働く手はずとなった。昨日、ドルヌコさんのところからの帰り道にちょっと顔を出したところ相談したら二つ返事で了承を得ることができたよ。因みに彼ら夫婦は王都で共に防具の生産に携わっていたらしい。おやっさんはうまく育てば俺は武器にかかりっきりになれるなと喜んでいた。やはり武器製作のほうがやりがいがあるようだ。
実のところ彼らには俺達の専属職人として自重無いスキルアップをしてもらいたかったんだが当てが外れたな。キリシュナさんのところにいい子でもいないか後で顔を出しておこう。
おやっさんの引き抜きも考えたのだが鉄蟻装備の開発と量産以降はこの街の鍛冶ギルドですっかり顔役になっていたりする。同様に顔を出したマニワさんの話ではようやっと鍛冶ギルドのギルドマスターであるピーティアさんとの仲が進展したらしいからな。おめでとう、おやっさん。うまくいったら盛大に祝うので覚悟していてください。
ちなみにカイルたちはもう少し落ち着いてから身近な連中を集めてお披露目をするらしい。なんでも死ぬような思いをしたらしいから自重しない強化を施した防具でも贈ろうかね。
おっと話がそれた。
残った面子だがこんな感じである。
・犬人族 20名
・狼人族 10名
・リザート族 10名
・蝙蝠人族 21名
・羅刹族 1名
・ポポト君たち 8名
そのうち非戦闘員が24名だ。戦闘員は小隊3つほどを組んで行動してもらおうかね。もっとも異魂伝心を受け入れてくれるもののクラス変更などで色々と変更は随時していくだろうけどもさ。
で、残った人たちを二つに分けて個人面談をする。面接官は俺、ミタマ、カグラさんの組とフツノさん、ティーナさん、レコの組で行った。レコも鑑定のレベルが上がりサブクラスがあるかどうかまで判別可能となっている。俺がアドバイスしたら分かるようになったと言っていたのでそういうものがあるという認識がまず必要なのかもしれない。ただ、どんなクラスに就けるかまでは把握できないようなのでそれらの人には後で俺が再確認する必要がある。
俺とカグラさんが質問しミタマはその挙動に気を配る。質問の内容は様々。これからどうするかの展望。冒険者志望なのであれば今のクラスが自分にあっていると思うか。仮に変更できるのならばどうするか。前衛、後衛の希望はあるか。などなど。基本は個人だが子供がいるものは家族単位での面接にした。やはり子供の意見もちゃんと聞いて家庭内不和がないようにしないとな。旦那元気で留守がいいなんて言葉が流行らないようにしないといけない。うむ、これ大事。人事じゃないので家族サービスはしっかりしよう……。
それと同時に雇用形態について大事なことなのでしっかりと説明する。うちは基本月給にて賃金を支払うことにする。それが冒険者であってもだ。冒険者のほうの業務は俺が提携を結んだ商店街の皆様への食材供給と冒険者ギルドで塩漬けになっている案件などを優先的に行う。業務内容が偏らないようにローテーションを組んでやることで計画的に消化していくのだ。業務は短期集中型で遂行し休日もちゃんとつくるし、また捕まる事の無いように対人の訓練日も設ける。講師はティーナさんとエレノアさんに頼むつもりである。俺? 戦い方が独特なので変な癖つけたくないので自粛させていただく。
メリットは月給制のため怪我などでダンジョンに潜れなくても給料として支払われるし家族がいれば見舞金も出す。もちろん、軽い怪我であれば薬品詰めなどの内職はしてもらうが。
それと先の案件と重複かつ矛盾しているのだが俺やタマちゃん、フツノさん達が魔法で治療する分には無料となる。ただダンジョンの罠などでの状態以上や病気など魔法でなんとかできないものもあるかもしれないので一応決めてある訳だ。
あと武具や薬品、マジックリュックなどは基本こちらで支給するものが配備される。メンテナンスなんかは各自するか武具屋でやってもらうことになるだろう。自分好みのものを買ってきて俺が付与で強化する場合もある。そこら辺は貢献度とかを加味してやるべきかな。
デメリットだがダンジョン内部で入手したドロップ品に関しては依頼の品以外は全て提出する義務をつけた。無論、没収ではなく功績として記録され後で特別褒賞が与えられることになる。そいつを換金した金額から何割か分配する、俺が付与をかけた装備品を贈る、ノブサダさんちの夕食会へご招待など色々と用意するつもりだ。
やはり折角入手したアイテムを使ったりできないまま渡すというのは抵抗が大きいようで当初、怪訝そうな表情は拭えなかった。だが魔法での治療が無料だったりある程度の薬品は無料で配布することや買うにしても社員割引があると分かると食いつくように聞き入っている。
やはり冒険者稼業の日常で死の次に怖いのは怪我での長期休業らしい。銀行などがないため貯蓄という考えは薄く結構刹那的な生き方をしている冒険者が大半を占める。そのせいか動けない期間の資金を捻出できずに奴隷落ちなんてことも結構あることのようだ。お前らどこの江戸っ子だよと言ってやりたい。まぁジャラジャラと嵩張るし盗まれるのも癪だから使ってしまえと思っているのかもしれないな。そこら辺は俺か当人しか使えない使用にするマジックリュックを貸し出しするので解消できるだろう。作成に必要な時空石も自作できるようになったし原価が格安だから全員に配ることが容易くなったのだ。
それに他の冒険者連中を見ていてもヒーラーのいないパーティなんかは傷口を洗い流し自然治癒を待つかポーションを使っておくくらいが関の山である。特に駆け出しになるほど酷い。地味な薬草採取などをすっとばして討伐に挑むもんだから怪我も多いし武具の痛みも早い。やはり安全第一ですよ、奥さん。俺が依頼出していた若手はそこら辺をきっちりやっているから装備も徐々にいいものに切り替えて上手く回っているっぽいよ。大氾濫でもサポート要員として頑張っていたらしいしな。
話が飛びまくっているか。飛びついでに何気に最後の夕食会ご招待に食いつきがあったのは苦笑するしかない。始めは場を和ます冗談で言ったんだが真剣に考え込む姿にこれもありなのだろうかと思ったよ。
お子様たちは未来の幹部候補として通常業務以外にも色々と教え込むつもりだ。それもできるだけ内政よりに。NOUKINはそこら辺にいくらでもいるけれど識者は育つのに時間がかかるからねぇ。四則演算は当然として公爵から借りた本から抜粋して紙芝居にでもすれば覚えやすいかな? 一気にはできないだろうからここらは追々やっていこう。




