表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第八章 グラマダ動乱
221/274

第198話 大氾濫、最後の戦い②



 某早すぎたあいつと違い腐り落ちる気配はないしこのまま守っていても……って第二射!?


 再び口を大きく開けて魔力を集中する『巨菌兵』だがそうそう何度もやらせはせんよ。目標を視認。細かい座標調整は空間把握で補助。外れてもいい。そこんところは数撃ちゃ当たる!


「『フレアボム』二十八連!!」


 キュドドドドドドドドドドド


 空間把握の熟練度も上がり視認できる範囲でなら座標指定しての魔法発動も可能になったのだよ。

 ちなみに『駄女神の気まぐれ(ディバイン)癒しフルコース(ヒール)』の場合はエリアヒールから人間以外は除外するというふうに改変してあるので細かい座標は指定していない。


 連鎖的に起こる爆発が『巨菌兵』の顔を飲み込む。飛び散る肉片、弾け飛ぶ粘液。頭はあっさりと砕け散り体だけがその場に残された。


「や、やったのん?」


 フツノさんそれやってないフラグだから言っちゃ駄目!


 ずりゅん


 残された体がびくりと脈動したかと思えば嫌な音をたてて体内より新しい頭が顔を出す。豪腕のパン職人助手が投げる『アン○ンマン、新しい顔よ』ってレベルじゃないぞ! だったら精根尽きるまで吹き飛ばすさ。


「『フレアボム』三十連!」


 俺が魔法を発動しようとした矢先に『巨菌兵』は顔の前を両手で覆うようにガードした。両手ごと吹き飛ばしちゃる!


 キュドドシュウウウウウウ


 再び爆発が起こるものの最中にその勢いは失速した。確かに魔法が発動した感触はある。では何が起こった?


 そこで思い至ったのはかつて寄生粘菌が魔力を吸収した記憶。スキル群の中にも魔力吸収があった。発動した魔法を喰らったのか? こうなってくると遠距離爆撃も下手に撃てばやつの回復に繋がってしまう。両手を出したことから推測するにあの手のひらから吸収しているんじゃないかと思う。ならばあれを切り落として派手に吹き飛ばせばいいじゃない。


 よし! ここは師匠を見習って直感に従って動くとしましょうか。


「アースウォール!」


真・龍神池(マグマポンド)』を解除すればすぐ様冷えて固まっていく。その上へアースウォールで土を盛り埋め尽くした。壁の上から飛び降りふわりとその上へ着地しそのまま『高機動兵装フライトシステム』を使い右手から回り込むように移動する。


 こっちにあいつの注意をそらせれば御の字。あくまでグラマダを狙うのならば横っ面を叩っ切る!


 すっかり地形の変わった道を突っ切り『巨菌兵』へと近づくのだが周囲の警戒も忘れちゃいけない。生き残りがいたら厄介だしね。


 近づくほど『巨菌兵』の大きさがよく分かる。全長30メートル×30メートルほどでかい粘液の水溜りから上半身が突き出しているような格好である。視覚はあるのだろうか? 背後などの魔物も振り向くことなく取り込まれていたことから何らかの感覚器官があるのかもしれない。というか粘液だから人っぽい形していてもまったく別物だよね。


 ヒュオオオオン


 おっとどうやら近づきすぎたか。細長いホースほどの触手が何本か襲い掛かってきた。


「フレアボム!」


 空中に爆発が巻き起こる。巻き込まれた触手は爆炎に飲み込まれ燃え尽きた。やはり予想通り魔法そのものを吸収するのは両手っぽいあの部分だけかもしれない。どうする? 両手を切断するか。周りを削るか。



 …………



 ――フレアボム。フレアボム。フレアボム。


 完全詠唱破棄でまずは削りに入ることにした。切断するにはもうちょっと近づきたいところだからだ。連続発動させないのは発動箇所を変えることで吸収するタイミングをずらす為の小細工だな。


 右、左、後方と時間をずらして発動する爆発に『巨菌兵』の体は僅かずつではあるが削れているように見える。識別先生の情報でもHPは徐々にだが減ってきた。殺菌するにはやっぱり熱だと思って火魔法ばっかり使っているのだが他になにか有効なものなかったっけかな。


 アルコール? 俺製清酒はあるがこれを投げつけたら師匠にどやされそうなので却下。

 エックス線、ガンマ線? 放射性物質がいるものをどうやって使えと?

 電磁波? 魔法でどうやって発動するのか分かりません。


 学がないって悲しいわ。楽してできそうなのは皆無であるからして地味に削るしかなかばってん。ANZAI先生、ビー○○グナムが欲しいです。


 ぎにょん


 ん? げ、なんでこっちに顔が……一つじゃないんですね。ってやばいやばい。また口元で何かを溜めている。


 その場から飛び上がり空中に躍り出る。先ほどまでいた場所には拡散された細めの破壊光線が雨あられと降り注いだ。おーおー、穴ぼこだらけにしちゃってからに。継続して魔法を放ち削りつつ俺は月猫を引き抜いた。


 飛び回りつつ爆撃しつつ準備もする。並列思考のレベルが上がっていなければどこかで破綻しているな。やれやれだ。やれるに越したことはないので助かっているけれどもね。


 月猫にどんどん魔力を喰わせて折れたりしないように補強していく。材質のハッキリしない魔法金属のような刀身は青白い光を放ち始めた。高まる魔力を刀身に這わせ照準を『巨菌兵』へピタリと合わせる。刀身からは次第にヒィィィンと甲高い音が鳴り響く。


「改変武技『獅子奮刃』!」


 構えた月猫を気合一閃水平に振りぬく。見えづらい、されど凶悪なほどの魔力を込められた剣閃が『巨菌兵』へと向けて放たれた。


 ザン!


 ただその音ひとつ。それだけで『巨菌兵』の両手がドサリと地面へ落ちる。その先の木々も手当たり次第切り倒されていたが……。


 むぐぐ、練習で成功したときよりもはるかに規模がでかくなっている。自重しないで魔力を込めているからか。

『獅子奮刃』は王都へ向かう道中、常に試行錯誤していた武技を改変する試みの現段階唯一の成功である。組み合わせたのは『震刀・滅却』と『魔刃・絶刀』の二つ。どういう原理か震動し切り裂く飛ぶ斬撃という説明するのも難しい代物だがなぜか成功した。使っている本人さえよく分からないものだが結果良ければ全て良しである。段々考え方が師匠に似て気た気がして怖い。


 デメリットとしては『震刀・滅却』以上に得物への負担が大きいこと。消費する魔力が桁違いに肥大化したこと。薄っすらとしか見えず範囲もでかくなるので味方の巻き添えが怖いことなどだろうか。特に得物えの負担は顕著で手持ちの中で月猫以外はたぶん放つ前に刀身がお亡くなりになるだろう。


 ず、ずずずずりずり


 ん? 何の音だ??


 どさりと落ちていたはずのやつの両腕。それがスライム状に変化してずりずりと這いずっていた。近場の足下にドッキングすればするりと吸収され……あらやだ、あっさりと手が生えてきたじゃありませんか。


 …………


 神は死んだ! あ、駄女神から抗議が来そうなので今のなしで。


 あれか。剣閃があたった部分は消滅したけれど他は無傷ってことか。まさか鋭すぎるのが問題になるとは……。


 そんなことを考えているとシュルシュルと触手が集まってきていた。やばっ、考察に没頭しすぎた。


 ちゅどむ!


 小さな爆裂音が何度もあがる。近寄ってきた触手は俺に触れるどころか一定の距離に近づいた段階でなにかの爆発に阻まれていた。


 ちらりと肩口を見やればタマちゃんの周りに凄く小さなタマちゃんっぽいのが複数浮遊していた。ま、まさか!?


 タマちゃんが一震えすればそれらは触手へと向かって飛び込んでいく。取り込まれたり捕まったりしないのかと思いきや触れる直前に木っ端微塵に自爆しその衝撃で触手を沈めているのだ。なんという肉弾戦車的攻撃であろうか。


 あの小型のタマちゃん、略してコタマは分体を改良したものだろう。まさにビット兵器として使っていなさる。しばし会わなかった間に随分とスキルアップしていたようだ。やるな、タマちゃん!


 識別先生で確認するとほんのり本体へとダメージが還元してくるようだが即座にヒールで回復していた。なんというか主従で似たもの同士ということにほんのり心がほっこらしたよ。


 その場から滑るように旋回しつつ円を描くように移動しながら攻め方を思考する。確かに『獅子奮刃』は有効だったがいかんせん線の攻撃なためにあれに対して効果が薄い。面の攻撃だが魔法だと吸収される可能性が高い。


 そんな時、唐突にある一文を思い出す。『魔刃・絶刀』の識別先生による解説部分だ。


 やれるかな? ちょっとした不安を感じタマちゃんを見やる。

 ふるるんと大きく震えなんとなく俺を激励していることが分かった。


 うむ、やれるかではなくやるしかない! タマちゃんサポートよろしく!


 ふるふるるん



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ