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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第七章 レェェェェッツ、王都インッ!!
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第183話 力を借り蠢くもの、力を与え切り開くもの



 引き抜いた月猫を構えアーサーと相対する。怒り心頭なノブサダは溢れんばかりの魔力を隠すことなく思い切り放出しながら睨みつけていた。そのあまりの圧力に離れたところにいるエトワールたちの中には腰を抜かして下半身が濡れているものすらいた。


 普段なら押し隠すそれであるが今のノブサダは手加減する気など毛頭なく勢いのままに攻め立てるつもりである。無駄に近づくつもりは毛頭ない。魔力をあるだけ使い流れなど感じさせぬまま一気に押し流してやる算段であった。


氷結連装弾アイシクルガトリング!」


 勇者のガンフレイムの数倍はあろうかという氷の弾丸がアーサー目掛けて撃ち放たれた。その量に驚愕しつつも両手に持った武器を使い打ち払っている。だが、ノブサダの追撃はそれだけではない。


「ストーンランス!」


 ゴスゴスゴスと音を立てながら三本の円錐状の石壁が次々と足元から突き出てくる。左右に避けつつ前進するも掠っただけで皮膚を切り裂き一直線の傷跡が出来ていた。すぐに完治しているが一瞬足が停まる。


「アジマルド、あんたの魔法を借りるぞ」


 ―― 風よ嵐よ雷よ、竜の吐息の如く全てを蹂躙し破壊の時をここに刻まん!


「テンペストッ!!!」


 ノブサダを中心に6つの巨大な竜巻が雷撃を伴いながら発生する。速度を上げつつ取り囲むように広がり包み込んでいく。天変地異と見まごう程の大魔法に無敵感で一杯のアーサーにも驚愕の色が浮かぶ。迫り来る竜巻は重なり合うように収束し中央のアーサーへと猛威を振るった。風の刃が皮膚を切り裂き雷の雨が降り注ぐ。


「ぐがああああああ、こんのぉぉぉ。もっとだもっと力を寄越せーーーー」


 アーサーが何かに訴え声を上げているのだがそれに応えるかのように皮膚が盛り上がり再生速度が跳ね上がった。さらに星犬を力いっぱい振り切れば……なんと竜巻がずっぱりと切り裂かれる。巻き上げられた土や草などで視界が遮られていたのだが切り裂かれたことでそれが戻ってきた。


「はぁはぁこれしきでぇぇぇ」


 両手の武器を振り回しまるで暴風のようにノブサダへ襲い掛かってくる。『高機動兵装フライトシステム』を使ったノブサダはそれを滑るように移動し一定の距離を保ちつつ大魔法を連発していく。


 ―― 凍えるその身に追い撃つようによされよされと雪が舞う。雪は舞いて風と共にあり。吹けよ荒べよ白銀の景色へ世界を変えよ

風雪雪崩旅(ダイヤモンドダスト)!」


 猛烈な吹雪がノブサダから扇状に広がっていく。一面は真っ白になりアーサーの体も大量の雪に覆われていく。


「こ、んな、も、のぉ、ぉぉ」


 強気な発言ではあるが体はすでに雪に8割がた埋もれており次々降り注ぐ吹雪はやがて全てを白に染めた。だが、ノブサダの追撃はそれで止まることはない。


 ――飛べよ大地! 落ちよ綺羅星! 親父の怒りよ全てを押しのけ天より降れ!

流星卓袱台返し(シューティングスター)!」


 ノブサダが地面に手を突き刺せばひびが10メートル四方の正方形を描くようにビキビキビキと走る。ふんぬと両手を勢い良く跳ね上げれば巨大な三角錐が軽々と宙を舞った。天高く上がった三角錐は重力を纏いどんどん速度を上げアーサーがいた付近へと轟音をあげて叩きつけられる。アースウォール、グラビトン、『反重力領域アンチグラビトン』、『地壁補強ダグ』の四種を組み合わせた難易度の高い複合魔法である。質量、重力が組み合わさったその威力はおして知るべしであろう。


 ――燃やせ、燃やせ真紅に燃やせ! 怒りを糧に大河すら赤く燃えあげよ!!

赤壁突風大炎上バーストストーム!」


 炎の濁流がアーサーがいた場所を中心に溢れ出す。積みあがった土が真っ赤に染まりマグマと化しつつあった。赤熱の奔流は大きな渦を巻き天へとつき上がる御柱のようである。



 天変地異と見紛うばかりの大魔法を連発するその姿を見て後方で待機する一同の反応は様々なものであった。驚愕に目を見開くもの、魔力に当てられて気絶するもの、恐怖から腰を抜かすもの、うっとりと見惚れるもの。意識を保っているもの全てがその様から目を離すことが出来ないでいる。


「あ、あんな大魔法を連発って大将の魔力はどうなってんだ!?」


「すげぇ、そこに痺れる、憧れる!!」


「ああ、ノブサダ様。なんて強大な魔力、素敵です」


「エ、エ、エ、エトワール様。あんな魔法が個人で行使可能なのですか!?」


「お、お、落ち着きなさいローヴェル。実際に行使できているものがいる以上できるということですわ。己が目で見ても信じがたいことではあるのですけどね」


 獣人族、亜人達はその光景に畏怖とともに羨望、尊敬の眼差しを向けている。彼らは共通して強いものへと惹かれる。それが純粋な力であればあるほど。


 目の前で起こる天変地異にも似た光景を見つめる者達はそれに慄くと共に流石にこれだけやれば倒しただろうと安堵していた。


 ぬごん


 どろどろのマグマを振り払い人らしき姿が浮かび上がった。蠢くその姿を視認した後方ではひいっと悲鳴が上がる。


「あぁぁぁあああぁあぁぁぁあ」


 すでに獣の咆哮のようではあるがアーサーはいまだ生命活動を停止していないようである。待ち構えるノブサダには威圧感が衰えるどころかむしろ増大しているように感じられた。


 高温で揺らぐ視界に映るその姿はもはや人と言えるものではない。その姿はまるでとある昆虫の如く真っ黒で光沢を放っていた。どう考えても台所の悪魔である。更に不自然に盛り上がった皮膚の内部ではなにかが蠢いているようにも見えた。


「おぉぉおおおぉぉおぉおおお」


 完全に化け物と化したアーサーは業物でありあれだけの熱量も耐えた片手斧を投げ捨て傷一つついていない星犬を両手に持ち勢いのまま切りかかってきた。あれだけの魔法で仕留め切れなかったノブサダも覚悟を完了しそれに応戦する。


 星犬から放たれた風の刃がノブサダ目掛けて襲い来る。それを魔力を流した刀身で切り裂けばそのまま霧散し返す刃で下段から手首を狙って切り上げた。


 切っ先が掠め体液が滲むも瞬時に修復される。獣とも似つかない咆哮をあげ上段から真っ直ぐに切り下ろすアーサー。ラクシャの腕二本を両断した威力を持つ一撃ではあるが振り上げて伸びた腕を舞を舞うかのようにくるりと翻しつつ星犬の腹に月猫を叩きつけ軌道を逸らした。


 だが刃の周囲に風の奔流が渦巻いていたのかノブサダの二の腕に削ったような傷がつき血が流れ出ている。しかし、それは魔力纏にヒールを流し込むことによって随時癒されていく。


 ガンギンゴンと刀のぶつかり合う音にも思えぬ音を響かせながら刃がぶつかり合う。更にはギリギリと互いに押し込みあうように鍔競り合いをしている。


 だがその光景は傍から見ればおかしな話だ。そもそもアーサーの得意とするのは斧であり両手刀を用いた経験などありはしないのである。なぜか星犬を得物として選択し尚且つスキルを持つノブサダと互角の戦いをしていた。

 一方、ノブサダの方も少年と変わらぬ体格で今のアーサーと力の押し比べにも負けていないのだ。それだけでも十分に異常である。嫁達だけが知っていることだがノブサダはクラス設定していないものでもレベルが上がれば上がるだけ身体能力が強化されていく。中々に自分のスペックを発揮できていなかったノブサダであるが武闘祭などの経験を経て己の体の使い方を実戦で学んでいた。


 そして手に持つ刀もその奮闘に応える。ノブサダの魔力を吸う度に淡く光る刀身は強度を増していった。


 ――喰らえ喰らえ、魔力は有り余るほどあるんだ。どんどん喰らってあいつをたたっ斬る刃となれ!


 留まることなく流される魔力を喰らいどんどん輝きを強める月猫。月猫が蒼白い光を放つなら星犬は淡い黄色の光を放ち始める。だがそれは蛍の光のように点滅といっていいほどか細く小さな光であった。


「ごあああぁうぁ、おれのからだぉぅぉかってにぃぃつかぅなぉぁぁぁぁあ」


 意識を取り戻したのかアーサーのうめき声が響く。今までの動きは星犬主導で行なわれたのかと感じたノブサダには思い至ることがあった。自らの魔力に応える月猫にも意思があるんじゃないかと思うことがしばしばあったからである。そして今、星犬とアーサーの意思の統一がなされていないこの時がチャンスだと感じ取り精神を集中する。


 月猫を上段に構え全力を持って飛び込み振り下ろした。その速度たるや弾丸も霞むほど。アーサーもさるものでそれに反応し星犬で受け止める。ギイイイイイイインと刃と刃が中空で激突し火花を散らした。


「おおおおおおらああああああああああ」


 叫ぶノブサダ。刀身と自らの背に『空気推進エアスラスタ』で更なる推進力をつけ一気に押し込んでいく。徐々にだが月猫は星犬の刀身へと食い込んでいった。それにあわせるかのようにアーサーの口から悲鳴にも似たうめき声が漏れ聞こえる。


 パキイイイイン


 甲高い音が鳴り響く。刀身の半ばまで食い込んだところで星犬は真っ二つとなると同時になんと月猫の刃へと吸い込まれてしまう。ノブサダに多少の戸惑いがありつつもその勢いをとめることはなくそのままアーサーを脳天より股間まで一直線に寸断した。原理は分からないが最早再生も起こらないようで半分に分かたれた体は足の先からボロボロと灰になっていく。


「よくも、俺の……道をぉぉ。だが、だがなぁ! ひ、ひひ、俺を倒していい気になるなよ。お前らが絶望のふちに沈むのはこれからだ。グラマダに着いて絶望するお前にざまあみろと言えないのが心残りだがなぁ、くはぐおおあ」


 半分になった体でどのように判断し喋っているのか知らないが器用なことである。その言葉と同時にボロっと崩れ去り吹き行く風に灰が飛ばされていった。








 てれれてってって~♪ 侍大将、武芸者、中忍、時空魔術師、異世界人のレベルが上がりました。レベル40に到達したのでシックスクラスが解放されます。

 てってれ~♪ 属性魔法適性のレベルが上がりました。

 てってれ~♪ 魔法改変のレベルが上がりました。

 てってれ~♪ 並列発動のレベルが上がりました。

 てってれ~♪ 刀術のレベルが上がりました。

 てってれ~♪ 魔力操作のレベルが上がりました。

 てってれ~♪ 重力魔法のレベルが上がりました。

















 〔……オボエタ……オボエタネ……オクレ……オクル……ゲヒュゥ…………〕

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