第1話 おいでませ異世界
やっとこさ地味ーに復活です。
年末からずっと連続勤務で改稿できやしない……。
よって、ゆっくりとですが投稿していきたいと思います。あらすじでも書きましたが以前のものを踏まえつつも色々と変更されています。登場人物等も色々改変されていくと思われます。それでもいいよ!っていう皆様。ごゆるりとご賞味くださいませ。遅れましたが明けましておめでとうござる!
「んじゃ、店長。お先に上がりますね」
「あいよ、おつかれさーん」
現在時刻は午前9時。やっと夜勤を終えて背伸びする。
俺は和泉信定。某コンビニでしがない副店長をしている。
副店長と言ってもバイト時代とたいして変わっていないけれどね。
ちょっと残業が増えてちょっと休みが減ってだいぶ休日出勤が増えたくらいだ。
……悲しくなってきた。暗い話題はやめよう、これからやっと掴み取った3連休なのだ。
「久々の連休だな。なにをしようかなー」
色々と計画を建てようとしたものの結局何がいいか迷って決められず現在寝不足でふらふらしてたりする。
うん、優柔不断とあえて罵りは受けよう。
結局、予定は組まないで溜まっていた用事を済ませてから考えようという結論に至った。
洗濯物を片付け布団を干して漬物をこねくりまわしてとやることは山ほどある。独身生活35年、炊事洗濯はそこらの主婦にも負けない自信がある。あまり自慢できたことではないけどね。結婚できない男性ほど家事に走るというし。
俺の場合は3年前の震災以来天涯孤独になってしまったもんだから全部自分でやらないといけないだけだったけれども。人間切羽詰れば何とかなるものである。
さてと帰りに食材を買い込まないとな。ある程度まとめてお買い得品を狙わないと財布に余力が無くなるからね。今晩のは簡単にすませて明日どこに行くか候補でも見てみよう。
某薬局チェーン店にて食材を買い込む。田舎の復興はいまだ進んでおらずスーパーなどは出来ていない。真っ先に出来たのがコンビニだったから食にはそこまで困ることはなかったが流石にずっとコンビニ飯では財布にも体にも堪える。務めている俺が言うのもどうかとは思うが……。
買い物用のマイバックに買い込んだ食材を詰め込んで車に戻る。
欲しいものの中で結構な量がお買い得セールとなっていたので助かった。今月は友人の結婚式なんかで突発的な出費が多く厳しかったからな。
ん?
マイバックを置いた助手席に見覚えの無いビー玉が転がっている。こんなもの置いたかな? そう思いつつ手にとって見る。光の加減からか見る角度によって虹の様に色を変えるビー玉。なんとなく気に入ったのでズボンのポケットに押し込んだ。家に帰ったらどこかに飾ってみようか、癒しを求めるおっさんは貪欲なのである。
そんなことを考えながらエンジンをふかし帰路についた。
「ただいま」
出迎える人のいない我が家へと戻る。家族がいなくとも帰宅時にはつい言ってしまうクセのひとつだ。
「豆腐ハンバーグはいつでも使えるように仕込んで小分けの冷凍にしておこう。今日は生ラーメンを煮てすませるか」
肉は大好きだが35歳にもなるととり過ぎには脳内アラームが鳴り響く。なので豆腐とおからを混ぜ込んで豆腐ハンバーグにする。量増しと経費削減でお得なのだ。
仕込みを済ませると日課である糠床のかき混ぜをする。この一軒家と糠床が祖母と両親から遺されたものだ。正直なところ独り身には広すぎるし維持費も結構なものになる。
それでも手放すつもりはなかった。節約していけばそれなりに貯金もできるし生きていく分には問題ない。
ずぞぞぞぞぞぞぞぞ
スマホで小説投稿サイトを眺めつつラーメンをすする。
「ん、うまいな。インスタントと比べると割高だけどそこらのラーメン屋なみに美味くなってるよな、最近のは」
一時期、料理にのめり込みすぎ豚骨砕いて自分で手打ちラーメンを作ってみたりもしたのだが驚くほどの手間と経費がかかり二度とやるかと思った。商売でもなければできないな、あれは。
タカタン♪ タンタ♪ タカタン♪
スマホから某百姓一揆ゲームのBGMが流れる。これが意味するところは……。
「どうした駄目後輩?」
「開口一番がそれでありますか!? 可愛い可愛い後輩ちゃんにそれは酷いと思うであります」
当然のような軽口の応酬。中学時代の後輩で俺のそんなに多くもない友人の一人である。
「で? こんな時間に連絡よこすとは珍しいな? どうした」
「えーっとですね、先輩が今日から連休だと店長さんから情報を入手したのでだいぶ前から借りていたDVDを返しに行こうと思った次第であります」
「ああ、アレか。今晩は家でまったりしている予定だから適当な時間に来てくれていいぞ」
「了解であります。ではまた後ほど!!」
「あいよ」
うむ、相変わらずせわしないやつである。あのフットワークの軽さは俺には真似できないな。俺が重いだけなんだけどな。
ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ
ラーメンをすすりこみ、後輩がくる前に少し部屋を片付けておこうかと思ったときである。
…………
「ん?」
誰かが呼んだ? この時間になるとここらへんの住人は寝ているご老体が大半である。静かな山間だから少しの物音でもだいぶ響く。
あたりを見回しても誰がいるわけでもない。いや、ちょっとホラーは苦手なほうなんだがな……。
……las……po……lisj……
「……幻聴じゃ……ない?」
頬に冷や汗が流れる。
その時だった。
「な」
フローリングの床一面に光が溢れる。よく見れば幾何学模様にも見えなくも無い。
「なんじゃこりゃあーーーーーーーーー」
目の前が真っ白になり俺はあっさりと意識を手放した。