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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第七章 レェェェェッツ、王都インッ!!
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第165話 武闘祭本戦準々決勝②



 流石に感電したからと言ってアフロになるわけではない。

 お互い感電しちょいと痺れる体を動かし走り出す。アジマルドは時計回りに俺はジグザグに。

 片や傷の入った両手棍を振り回し距離を詰める。片や近づくものから火の壁を作り上げ距離をとる。


 勝負は一進一退。体力と魔力だけを消耗していった。


『そこだっ!』


 受け流されるのならとバックラーの中心を一点に狙いつつ捻りを加えた突きを繰り出す。


 ピキッ


 今度は横に受け流すのではなくバックステップで下がりながら俺の突きを推進力として距離をとった。


「火よ、剣に纏いて溶かし消滅させよ! ファイアウェポン!」


 カドゥケスが真っ赤な火に包まれているのだが等の本人には熱が加わっていないかのように平然としている。そして今までのサンダーウェポンよりも投入されている魔力の量が多いような気がした。


「ハァッ!」


 今までと同じく目まぐるしく走り場所をかえているのだがここで何もない虚空目掛けて剣を振るってくる。するとどうだろう切り裂いた剣閃は緋色の刃となり幾筋も俺へと目掛けて飛んできた。詠唱なしな分だけ魔法よりもよっぽど隙がない気がするが剣閃から出るせいで軌道は読みやすいのか。そんな事を考えながら出来るだけ最小限の動きで身をかわす。合間合間に嫌がらせの指パッチン。まぁ当たってもテナシティのせいで魔法に対する耐性が高くかすり傷が精々なんだけどもね。


「風よ、剣に纏いて疾風の如く切り裂け! ウィンドウェポン!」


 むむむ、風を纏ったら目に見えて速度が上がった。にしても切り替えが早い。


 キィン、ギィン


 雄曼酸棍で切り払いながら隙を窺っているのだが一撃はそこまで重くないのだが如何せん速度が速く手数が多い。


「見えたっ! 断絶せよ、ウィンドスラッガー!」


 キィン、シュダンッ ブシィ


 えっ!? が、ああああ。

 一瞬のことだった。アジマルドが身を屈めたと思った瞬間、姿を見失う。地面スレスレに飛び込んできたあと一気に切り上げたのだ。鉄蟻の胸当てが切り裂かれ流血しただけでなく……持っていた雄曼酸棍は先の一撃でついていた傷へと寸分もずれることなく当たり二つに切断されている。


 思わず膝をついてしまったものの傷口はそこまで深くない。魔力纏がなければ下手したら内蔵までいってたかもしれないが。できるだけ落ち着きながらハイヒールを流し傷口を塞いでいく。それにしても綺麗に真っ二つだな、雄曼酸棍。


 ……


 くっ付かないよなぁ……。仮についたとしても強度的な問題がある。


 …………


「手応えはあったはずだがまだやる気か。さっきの一撃は随分な深手だったと思うんだがな」


 チィィィィィィィン


 何か削るような音が微かに響く。アジマルドにも聞こえていたのか少しだけ首を傾げていた。

 そして俺はゆらりと立ち上がる。それを見てやつは再び詠唱を開始した。


 チィィィィィィン


「星の力よ、彼の者を縛る重石となれ! グラビトンッ!!」


 ズシィィィィィィ


 俺を中心に重力場が形成され重くのしかかる。何もしていなければカエルのように押しつぶされていたことだろう。だがアジマルドが詠唱を開始した時点でこちらも『反重力領域アンチグラビトン』を発動していた。中和するように威力を調整し影響がでないようにしている。治癒も同時進行。既に切り裂かれた部位はうっすらと傷跡が残る程度まで回復している。そして……改修も完了した!


 重力場を駆け出した俺に目を見開くアジマルド。足を屈さないことに多少訝しげだったが完璧に捕らえていたと思っていたのだろう。お陰で反応が遅れている。こっちには大助かりだがね。



 右手に持ったそれでアジマルドを殴りつけてやればバックラーで阻むも勢いを殺しきれなかったようで二歩三歩と後ずさる。続けざまに左で叩きつければ今度はしっかりと受け止める。が、バックラーはあくまで受け流すもの。受けてしまえばその衝撃はダイレクトに手に響いていく。今、あいつの手はジンジンと痺れていることだろう。


「武器をかえたのか。 いや……加工した!?」


 イグザクトリー! そのとおりでございますよ。ぶった切られたのはショックだったがそこで落ち込んでもいられない。だったら使えるようにしてやればいい。両手で魔工を発動し急ごしらえながら手の平にあうように加工。これで取り落とす心配も減る。両手棍『雄曼酸棍』は双片手棍『雄酸棍おっさんこん曼酸棍まんさんこん』へと生まれ変わったのだ。いや、単にリサイクルしただけなんだけどね。


 そしてこいつはおまけだ取っときな!


『サンダーハンド』


 先ほどの要領で片手棍、バックラーと流すようにサンダーをお見舞いしてやる。無論、左手には思い切り力を入れているので受け止めたままのアジマルドは早々動けやしない。


「がああああああ」


 アジマルドの足ががくがくと揺れる。先に相打ちで発動したものと違い今度は三重に同時発動したサンダーだ。いかにテナシティで魔法に対する抵抗力が上がっていようがそうそう耐えられるもんじゃないはずだ。


「こ、これ、くらいで、負けてなるものかぁ!」


 気合一閃。痺れていた体で突きを入れてくる。思わず後方に下がり距離を与えてしまう。油断していたわけではないがここまで鋭い突きが来るとは思っていなかった。あいつにも譲れぬ何かがあるらしい。


「こんなところで負けてみろ。あの糞婆になにをされるか分かったもんじゃない!」


 そっちかよ!


「死にたくなくば降参するんだな! 風よ嵐よ雷よ、竜の吐息の如く……」


 聞いたことのない詠唱を始めるアジマルド。オリジナルの魔法か? 嫌な予感に抗うべく詠唱中断を狙い両方の片手棍を左右続けて投げつけた。


「……全てを蹂躙し破壊の時をここに刻まん! テンペストッ!!!」


 詠唱途中から体が浮き上がるほど魔力の奔流が溢れアジマルドの体を覆う。俺の投げつけた片手棍はそれにより軌道を逸らされ明後日の方向へと飛んでいってしまった。そして詠唱を完了したアジマルドを中心に竜巻の如く暴風が荒れ狂う。風は身を切りつけんばかりでありその中には雷が縦横無尽に走っている。俺の『超電刃暴竜巻ライトニングストーム』に似てはいるが指向性を持たせず周囲に広げている分、範囲は広い。威力に関しては落ちていそうだ。


 その範囲は広がり続け今にも俺の下へと到達しそうな勢いである。だが敢えて突っ込む。


 ――轟け迅雷、逆巻け天嵐。降り注ぎて荒れ狂え!


超電刃暴竜巻ライトニングストーム(ボソリ)』


 指向性を持たせた同種の魔法で渦の輪を作り出せばアジマルドまでの直通路の開通である。同種の魔法だけになんとなく混じっても周りにバレにくいんじゃないかという安直な思考だがね。魔法の制御で手一杯のやつは今まさに驚愕に目を見開いていた。これで最後だ! 最大加速で前のめりに突っ込んでいく。


 ――ときめくぞハート! 燃え尽きろイケメン! 爆ぜて吹き飛べリア充達よ!


乙女傷心爆裂弾ヨシヲボンバー 特攻形態ダイブバージョン!』


 いざ逝かん人間魚雷! 掌底打ちどころかクロスチョップで体ごと突っ込んだ俺の勢いに反応できないアジマルドは身体をくの字に曲げてぶっ飛びゴロゴロゴロと転がっていった。途端、猛威を振るっていた試合場の嵐はあっさりと霧散する。盤上に残されたのは俺と……魔力を飛ばされ白目をむいて倒れているアジマルドの姿だけだ。


『こ、これは!? アジマルド選手の魔法により突如試合場が嵐に包まれたと思いきや僅かのうちに消え去りました。そして立っているのはノーヴ選手のみ。アジマルド選手は気絶している模様。審判、一体どうなってますか!? ってあなたも場外に避難しているのかよ! え、うん、はい、見えなかったと。えー、ただ今彼らから連絡が入りました。一時的に避難したもののギリギリのところで確認作業はしていたようですが視界が遮られ発生以降の内部の様子は不明だったそうです。審議の結果、現在の状況を踏まえノーヴ選手の勝利とする、とのことです。準々決勝第一試合の勝者はノーーーーーーーヴ!!』


 解説がそう宣言すると会場はワアアアと歓声が上がる。だが幾人も首をかしげているのは仕方のないことなのかもしれない。



 てってれ~♪ 片手棍を習得しました。

 てってれ~♪ 魔工のレベルが上がりました。

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