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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第六章 和泉屋繁盛記
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第132話 和泉屋繁盛記その14

キリのいいところまで進めました。次回から新章になるざます。

けどちょっと立て込みそうなので少し遅れます。復帰したばかりなのにすいませぬ。

 

 赤い絨毯が敷かれた豪奢な執務室。その部屋の中には主の席に座った壮年の男へと報告に走る大男が一人。着ているその服には杖と魂石が模られた紋章がつけられており宮廷魔導師であることを示していた。一本の頭髪も無いその頭は窓から差し込む光を煌びやかに反射している。


「ふむ、手筈どおりいっているか」


「はっ、何家かは当主ではなくその子息などが来ることになっておりますが計画には支障がないと思われます」


「よろしい。あちらの頃合はどうなっている?」


「『道化師』が仕込んだものならば……そうですな、武闘祭が終わって数日後あたりに始まるのではないかと」


「多少の躓きはあったものの概ね予定通りか。テラーズ、小僧の仕上がり具合は?」


 宮廷魔導師筆頭へ目線を向ける壮年の男。髪はオールバックにきっちりと固め眉のないその顔は鋭い目線も相まって見るものに冷たい恐怖感を与える。そんな視線を向けられてもテラーズはひるむどころか心酔した面持ちであった。


「勇者殿は現在騎士団長殿と稽古の真っ最中です。鑑定の水晶では先日片手剣、盾術共にレベル5まで上がったそうですな。私が指導した魔法のほうは火魔法のみレベル5に達しております。あとは神聖魔法がレベル1ですが使えるだけでも十分でしょう」


「なかなかの性能ではないか。これならば武闘祭で優勝できそうだな」


「はっ、それ以外にも色々と工作してありますので万事お任せを」


「よろしい。各国からも使者が訪れるようだ。我が国(・・・)の武功を示すいい機会となるであろう。ぬかるなよ」


「畏まりました、ディレン宰相閣下」


 恭しく頭を垂れると即座に動き出す宮廷魔導師筆頭テラーズ。



 華々しい国家行事であるはずの武闘祭の影で幾多の不穏な動きが活発化していた。




 ◆◆◆



 半月はあっという間に流れた。


 今月の収支は予想では安定する分、減るんじゃないかと思っていたのだがそんなこともなかった。寧ろせっせと増やした指輪なんかの商品が収入を底上げしてくれた感じになり先月よりも結構プラスになっている。ありがたいこってす。和泉屋がいい繁盛店になったのは嬉しい限り。


 それとは別に準備している間、色々とあった。その一つがドルヌコさんの来訪である。契約している間柄なので一応しばらく留守にするという挨拶にいったあとに思いつめた顔をして相談に来たんだよ。

 顔を突き合せるもしばらく沈黙が支配していたのだがやがて重い口を開く。

 どうやら王都にいた際に引き取られた息子のことが気がかりなんだそうな。しきりに申し訳なさそうな顔をしていたが店のほうを覗くくらいの時間ならとれると思うので様子をみてきますよと頷けば思いっきり手を握ってむせび泣くほどだった。ぎゅっと握り締めていたもんだからじっとり汗ばんでいたけど。

 息子の名前はポポト君。御年10歳だそうな。髪の色はドルヌコさんと同じでうなじに7つのホクロがあるそうです。どこかの世紀末主人公さんぽくないですか?

 大事な取引先だからしっかりと覗いてきましょかね。



 和泉屋のほうの問題も解決済みだ。

 屋敷の俺の部屋に祭壇の如く空間転移の目印である『次空宝玉』を設置したため俺一人なら転移で戻ってこれる。高品質の時空石を加工することによりたったの二つだが作成に成功したのだ。

 撫闇族なでやみぞくのチルハにもらった現物が手元にあったのが大きいな。とはいえお高い時空石を何個も失敗で消失してしまったのがかなり懐に痛かったが。ま、作るノウハウを確立できただけで元は十分にとれると思うけどね。

 それでもホイホイ戻ってくるわけにもいかないだろうから前もって十分な量の素材を準備している。その辺はもはや場慣れしてきたみんなに任せよう。俺がすべきことはできるだけ戻って奥様たちの心と体のケアをすることだ。そう考えれば習得してて良かったね、房中術! ミタマの忍術と比べてしょっぱすぎると涙していたのは内緒だ。


 そうそう、おやっさんに頼んでいたみんなの防具も完成した。王母蟻の甲殻からはカグラさんの手足胴防具とフツノさんの胸当て。白鋼蟻の甲殻2つを使ってエレノアさん用の手足胴防具。希鋼蟻の甲殻からミタマ用の手甲と脚絆をそれぞれ作ってもらった。素材持込なものの加工賃に結構なお値段がとんでいったがかなりおまけしてもらったし満足である。さらに俺が付与を加えたことで性能は折り紙つきだ。指輪作りに精を出していたおかげで付与魔法のレベルも上がったからやりたい放題になった。自重? 嫁の安全のためならば辞書から抹消するくらいは当然なのであるよ。



 鬼刃装甲『紅姫』(胸当て・手甲・脚絆)

 品質:遺産級 封入魔力:241/241

 付与:『硬化』『剛力』『金剛』

 カグラ専用に作られたマウリオとノブサダの合作である真紅の装甲一式。腕力や脚力の向上を促す『剛力』と体力と耐久力の底上げをする『金剛』が新たに付与されている。また、王母蟻の甲殻が持つ天恵として微弱ながら再生能力が付いている為、持久戦に効果が高い。

 天恵:【再生・微】



 王母の胸当て

 品質:遺産級 封入魔力:249/249

 付与:『軽化』『硬化』『博識』『忍耐』

 フツノ専用に作られたマウリオとノブサダの合作である朱色の胸当て。魔法の威力が上昇する『博識』と防御と治癒の魔法系統の性能が上昇する『忍耐』が付与されている。また、王母蟻の甲殻が持つ天恵として親しいものへの魔法効果が上がる【慈愛】がついている。

 天恵:【慈愛】



 破軍装甲『白姫』(胸当て・手甲・脚絆)

 品質:遺産級 封入魔力:244/244

 付与:『軽化』『機敏』『剛力』

 エレノア専用に作られたマウリオとノブサダの合作である純白の装甲一式。敏捷性が上昇する『機敏』、腕力や脚力の向上を促す『剛力』が付与された速攻が主体の戦闘スタイルに合わせた仕様となっている。また、白鋼蟻の甲殻が持つ天恵として【打撃・反射】が付いている。これは打撃が打ち込まれる瞬間に魔力を通すことでその威力を打ち返すもの。ただし、そのタイミングはかなりシビアなので天性の戦闘センスか熟練の勘が必要になるだろう。

 天恵:【打撃・反射】



 宵闇の手甲・脚絆

 品質:遺産級 封入魔力:249/249

 付与:『硬化』『器用』『機敏』

 ミタマ専用に作られたマウリオとノブサダの合作である漆黒の防具。急所を突き仕留めるミタマの戦闘スタイルに合わせ器用さを底上げする『器用』と敏捷性が上昇する『機敏』を付与してある。希鋼蟻の甲殻の特性として魔力を通すことにより複数つけてある装飾が伸び暗器として使用可能。最大で1メートルほども伸びることが確認されている。もう一つ気配を抑える【隠密】の天恵もついているのが特徴的。

 天恵:【伸縮】【隠密】


 はっきり言ってとんでもないものを造り上げてしまった気がしないでもない。正直、これほどの装備をしている人はいままで鑑定した中だとテムロさんくらいしか知らない。あの人の装備はいまだに識別できないからだが……。とにかく今出来る最大限の力を込めた。これでなにかあっても早々敗れることはないと思う。俺がいない間無理だけはしないでね? え、俺が言うなって? ご尤もでございます。


 装備だけではない。こと俺自身に関することでも強化を図っていたのだ。これは依頼を受けると決めたその日のこと。


「エレノアさん、ミタマ。折り入って頼みがあるんだ」


「……??」


「改まってどうしたんですか、アナタ」


 これを言うのは勇気がいる。酷い目にあうのは確実だからだ。それに二人を傷つけてしまうかもしれない。だがこれをすることで俺自身や一緒に行くエレノアさんを救うのだと思えば覚悟は決まる。


「二人の手料理が食べたい!」


「「!!??」」


 そう、俺の耐性を強化しいざというときに備えるためだ。対峙することになれば色々とあくどい手を使ってきそうな気がするのでやれることはやっておきたい。俺が耐え切れば他の人には魔法をかけられるしね。


「今から少しずつでいいので俺に作ってくれないだろうか」


「……でも、私たちの料理は……」


「そ、そうです。アナタを辛い目にあわせるのは本意ではありません」


「それでも、それでもだ。きっと耐え切ってみせる。いや、更なる成長を遂げて二人の料理を美味しく味わってみせるから! だから俺を鍛えてほしい」


「……そこまで言うなら私頑張る」


「ええ、溢れんばかりのこの思い込めて作らせていただきますね」


 さ、最初はほどほどでいいんじゃよ? あ、すごくやる気になってる。お、男は度胸だ! バイタルアップなどで気休めに耐久力や抵抗力を上げていざ参る!!


 ――実食中――


「ぶべらっ」「あべしっ」「やまだっ」


 はぁはぁ、キュアポイズン、キュアパラライズ、キュアシック、ディスペルカースを続けざまにこっそりかけていく。一度魅了に抗えずにエプロン姿の二人に襲い掛かったのはきっと状態異常のせいだ。そうに違いない。


 ――再び実食中――


「あひーん」「ばるすっ」「ひでぶっ」


 げふう、強い。今まで対峙してきた何よりも強敵だ。だってこちらからは攻めようがないからね。二人には心を鬼にして頑張ってもらわねばならぬ。耐性が上がってきたからか味がおぼろげに分かって来た様な気がする。うん、もったりとしたなかにムキンとした酸味がほとばしる感じ。おかしいな、以前なら味は美味しく感じれたはずなのになにか更に強力になってきている? おっといけないまた毒に侵されていたよ。


 そんな俺をじっと見つめる影がある。


「あのぉ、ご主人様。私はずっと鑑定してていいんですか?」


「ああ、レコ。悪いけどリポビタマを飲みつつ続けて欲しい。鑑定スキルのレベルはどうだい?」


「いまだにご主人様のステータスは見えませんけどすごい勢いで上がってる気がします」


 識別先生と違い通常の鑑定は体力でも魔力でもないなにかを消費しているため使いすぎるとすごくだるくなるらしい。試しにとポーションやマナポーションの各種薬品を使ってみてもらえばリポビタマ系を服用すればだるさを軽減できるらしいことが判明した。ようは栄養不足なんだろうか? はっきりしたことは分からないがこれで偽装のスキルを強化すると共にレコの鑑定も鍛えられる。俺のいない間、レコには不審人物が来たりしないか見張ってもらわないといけないから頑張ってくれ。








 そんな涙ぐましい努力の甲斐もあって半月過ぎた現在このようなステータスになっておりますのよ。


 名前:ノブサダ・イズミ 年齢:15 性別:男 種族:普人族?

 クラス:侍大将Lv30 武芸者Lv30 中忍Lv30  時空魔術師Lv30 異世界人Lv30

 状態:健康

 称号:【和泉家当主】

 HP:1,571/1,571 MP:536,871,603/536,871,603


【クラス】

 異世界人Lv30(up!) 戦士Lv30(M) 拳士Lv30(M) 魔法剣士Lv8 中忍Lv30(up!) 侍大将Lv30(up!) 武芸者Lv30(up!) 修道士Lv25 魔術師Lv10 呪術師Lv10 奇術師Lv12 錬金術師Lv12 時空魔術師Lv30(up!) シーフLv10 狩人Lv10 獣使いLv10 商人Lv10 奴隷商人Lv23(up!) 農家Lv10 主夫Lv10 大工Lv9 石工Lv9


【スキル】

 エターニア共通語 異魂伝心Lv4 魔法改変Lv5(up!) 複合魔法Lv5(up!) 並列発動Lv5(up!) 並列思考Lv4(up!) 魔力操作Lv2(new!) 家事Lv6 農業Lv4 剣術Lv3 刀術Lv5(up!) 格闘Lv5(up!) 両手槍Lv2 両手棍Lv3(new!) 投擲Lv4(up!) 射撃Lv3(up!) 身体強化Lv4(up!) 魔力纏Lv6(up!) 回避Lv4 受け流しLv5(up!) 直感Lv4(up!) 頑健Lv4(up!) 開錠Lv1 罠Lv1 神聖魔法Lv6(up!) 暗黒魔法Lv3 重力魔法Lv3 時空間魔法Lv5 属性魔法適性Lv5 付与魔法Lv4(up!) 忍術Lv2(up!) 魔工Lv5(up!) 彫金術Lv4(up!) 結界術Lv3(up!) 隷属魔法Lv2(new!) 生活魔法 偽装Lv5(up!) 錬金術Lv5(up!) 加工技術(木・石・鉄) 全耐性Lv4(up!) 性豪Lv6(up!)



【クラススキル】

 挑発  トレジャーハンター チャクラ 手当て 鷹の眼 心眼 士気高揚(new!) 残心(new!) 隠遁 一隻眼(new!) 癒しの心 空間の理


【固有スキル】

 識別の魔眼Lv5  レベリットの加護(大盛つゆだく) 神託(直通)


【契約者】

 ミタマ、フツノ、カグラ、セフィロト、エレノア


【従魔】

 タマちゃん、わかもとサン、ウズメ



『士気高揚』

 侍大将のクラススキル。指導者として所持する者の活躍や鼓舞により味方の士気が高まりやすくなる。


『残心』

 武芸者のクラススキル。周囲に気を配り常に戦場という心構えを見せる事。直感へボーナスを得られる。


『一隻眼』

 中忍のクラススキル。ものを見抜く特別な眼識。嘘や罠を見破りやすくなる。


 称号【荒ぶる神輿】

 神を称える神輿の頂点にて生まれたままの姿で挑んだ者へと与えられる称号。股間に吹きつける荒ぶる風により男気が上昇する。いいモノ見せて貰ったのですよー、くふふ。


 称号【女神を潰した者】

 女神を物理的に潰したものへと贈られる称号。女神への好感度(供物・賄賂)にボーナス効果あり。私を酔わせてどうするのですよー、いやーんノブサダ君のえっちぃ♪


 称号【毒を喰らう者】

 毒物へ自ら喰らいつく者。毒素への耐性が10%上昇する。



 色々と増えている中、称号は微妙なものが多いな。随分とやつの自己主張が目立ってきたようだ。一度話をつける必要があるか?

 魔力操作は魔工での工作中に覚えたもの。魔力を用いた緻密な作業を行うスキルのようだ。



 装備はいつもの鉄蟻装備に魔霊銀の脇差とこの半月で作ってもらった予備の脇差。こいつは同様の付与魔法を施して魔鉄鋼の脇差に変化している。魔霊銀の脇差の劣化版みたいな性能だが普段使いには問題ない。今度二刀流でも試してみようか。


 それと以前ジャミトーから分捕った魔道具をみんなに配っておいた。そろそろほとぼりも冷めただろうし今ならそれらを買っても問題ないほどの資金が手元にあるから言い訳は万全である。

 フツノさんに水霊の指輪、カグラさんに癒しのイヤリング、ミタマに水蜘蛛、それと身代わりの腕輪をエレノアさんを含めた4人へ。俺が離れれば恐らく異魂伝心による魔力供給が途切れるだろうから少しでも足しになればと思う。


「それじゃみんな留守の間は頼んだよ!」


『いってらっしゃいませ』


 みんな総出でのお見送り。ちょっと気恥ずかしいが帰る場所があるっていうのはなんとも嬉しいものだ。いよっし! 気合入れていきましょうか。薬品、食料、おやつのバナナは準備完了。さて、集合場所であるギルドへと向かいますかね。


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