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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第六章 和泉屋繁盛記
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第130話 和泉屋繁盛記その12

毎度! 一ヶ月ぶりです。生きておりました。死んだのはマイパソコンです。

ご臨終のあとどうにもやる気が起きず一週間ほど。

これではいかんと友人にデータのサルベージを依頼しつつちまちま書き進めていました。なろうのパスワードが電子の海に埋もれてしまってたんですねぇ。


というわけでお待ちの方、お待たせしました。

そうでない方、生きててすいません。


本日ののぶさんはっじまるよーー。


 俺復活!


 やっとベッドから解放されたよ!!


 暇つぶしにせっせと作っていた鉄蟻の指輪は庶民でも買える価格に抑えられ手頃に買える装飾品として広く売れている。特に軽くでも付与を施し色々と細工したものなんかが人気であった。旦那から女房への日ごろの感謝を込めてなんてイメージをつける看板を設置し化粧水と並べて売ったら効果覿面である。軽い耐魅了を施した指輪を女性から男性に贈ることで他の人よりも私だけを見てというフレーズで売り出したらこっちもいい感じで売れている。やっぱり宣伝は大事だな。


 そしてもう一つ。身動きできずに暇をもてあました俺は魔工のレベルが上がると共に指輪以外の物の可能性を追求していた。


 まずは鉄蟻の甲板を複数重ねます。

 再び魔力を通して繋ぐ様に伸ばす。伸ばせば。伸ばさでおくべきか。

 するとどうでしょう。それぞれが融合し厚みのある甲板へと変わります。それをくるくると丸め棒状にし更に一体化するよう思い描きながら親指でぐいんぐいんと指圧していけば鉄蟻の甲棒に。

 その長さ1メートルほど。先から20センチメートルほどをぐにりんと曲げ形を整えます。曲げた先の部分に切れ目をいれ尖らせ逆側は先を潰し先端を垂直になるよう切り落とせば完成!


 そこの奥様必見の商品がこちら!!


 バールノヨウナモノ

 品質:特上級 封入魔力:57/57

 鉄蟻の甲殻を加工して作成された異世界の道具『バール』に似たなにか。故にバールのようなもの。鉄よりも軽く頑丈なので盾と一緒に構えてもなんの遜色もない働きができるだろう。


 初めて作った武器がこれです。苦笑いしか浮かばないね!


 が、複数作って売り出してみたのだが即日完売。

 だが、買って行ったのは木工ギルドの職人や大工たちであった。いや、本来の使い方ではあるんじゃよ。でも、なんかやり切れぬ。ぐぬう。






 それはそれとしてだ。

 やらないといけないことはしっかりとやっている。そう、元錬金術ギルドマスター『タンスコン』の屋敷から拝借してきた各種資料へ目を通して実態を把握し誰が関わっていたか読み解くのだ。


 というわけで書類と格闘すること二時間。書きなぐりのようなものから観察日誌のようなものまで様々な文書を読み解く。勿論、専門用語的なものはさっぱりなので途中からセフィさんにもご協力願った。


 こうして得た情報を纏めると次のようなことになる。


 ・人造魔族というのは過去より形を変え似たような研究がされていたものでその都度非人道的なものだと打破されてきた。だがそれでも根絶やしにすることはできず現時点のように研究するものが残っている。

 ・これは人間に寄生粘菌を取り込ませ無理矢理進化の過程を進めるもので暴走の果てに物言わぬ肉塊へと変わり果てることが何度も繰り返された。

 ・寄生粘菌そのものはタンスコンなどの間で正式名称「レベルメタフィア」と呼ばれる人造の魔物らしい。これらは王都の研究者より譲られたもののようだ。特性としては多量の魔力を宿主から吸い取る代わりに宿主の細胞などに進化を促す模様。ただし、それを受け止めきれる精神力が無ければ乗っ取られたり暴走したりすることが確認されている。

 ・これらの研究やその維持には莫大な資金が必要。資金不足に悩んでいたタンスコンは最近頭角を現した俺たちの店で扱う商品のレシピを奪い新たな資金源にしようとしていた。

 ・研究はタンスコン主導のものでなにも知らぬあの冒険者風の連中を使って資材や人間を納入していた。

 ・タンスコンが呟いた『テラーズ閣下』という名前についてだがなんでも宮廷魔導師の筆頭らしい。セフィさんでも知ってるくらいだから有名なんだろうな。


 以上からうちが狙われたのは単にレシピを狙っての事らしい。寄生粘菌を提供していたことといい明らかに事件の陰には王都のそれも宮廷魔導師筆頭という大物が絡んでいるということがはっきりした。こうなってくるとあっちはグラマダそのものを潰そうとしか思えないのだが国で二番目に大きな都市になんでそんなことをするのかという疑問が残る。


 まあ考えたところで当事者でもない俺が思いつくはずもないので写しをとった後は匿名で纏めた資料などを騎士団の詰め所にでも届けてさしあげよう。少なくともテムロさんや公爵様はこれがどう影響してくるか考えるだろう。こういうのは偉い人に丸投げするにかぎる。政治的なことが絡むと素人に判断できることなど高が知れているからな。







 それからしばらくは素材を狩りにいったり商品の在庫をひたすら作りまくったり魔工のレベル上げをしたりしていた。時折、衛兵隊や騎士団から冒険者ギルド経由で指名依頼として薬品の納入が入るのでギルドへの貢献はしっかりとしている。ただこれらは俺個人を指名ということで同パーティの面々にまでは反映されない。なので俺が加工なんかに没頭している間、ミタマたちは依頼をこなすのと素材集めもかねてダンジョンに潜ったりしていた。俺がいるとなんだかんだで魔法を使い殲滅してしまうことが多いので鍛えなおすにもちょうどいいと言っていた。それをただ見送るのも申し訳ないので大量の食事と簡易湯船セットを作って大き目のマジックリュックに入れて渡しておく。これには皆喜んでくれたので俺も満足である。





 そして現在。レベルの上がった魔工技術を使い俺自身の装備するとある防具の作成に取り掛かっている。


 いずれは王都へ向かい事を構えることを想定し姿を偽るためのフルフェイスな装備をだ。折角なのでと体全体一式を作ろうと思うのでまずは一番複雑なところから手をつけた。


 チィィィィィンと鉄蟻素材を細かく削る音が部屋中に響く。電気やすりのように削り作業が出来るようになっていたりする。もはや例の魔工機材いらないんじゃねってレベルだ。

 フルフェイスということで某リメイクマスクドな運転手さんを元に可動式ヘルメットを作ろうとしているのだ。デザインにはちょっとだけウルトラな人や起動する戦士も取り込んでいたりする。


 目の部分は王母蟻の甲殻の端っこを貰って加工する。これは魔力を存分に通すことで裏からは何も遜色なく見渡せるのだが表からだと紅く透き通った甲殻が見えるだけで内側まで見通せないといった特性を生かしたものだ。同様に口にあたる部分は白鋼蟻の甲殻の素材を流用。加工次第で変わるらしいのだが特性としてガスマスクの如くフィルターの役目をしてくれる部分を譲ってもらった。ついでに声のほうもちょっと濁声っぽくなるので人を偽るにはもってこいだ。目の間を面に沿って伸びる角は希鋼蟻の甲殻の切れ端を。こいつは魔力を流せば伸縮するという特性を持っておりいざと言う時の隠し武器として使える。


 手足の武具にはちょっとしたギミックを内蔵してみた。ミスリル鉱石を買いおやっさんに小さく薄い板状に加工してもらったあとに鉄蟻素材で包んで拳と足の裏に据付ける。これにより魔力伝導率が上がり魔法を纏った攻撃を出しやすくなった。ついでにそれらも手甲などの効果だと言い張れるようになるだろう。

 特に雷を纏った攻撃が伝導率や威力共にいい感じに仕上がっていた。思わず某ライダーさんのように黒電(こくでん)パァァァァンチとか技名を叫びそうになってしまったよ。ん、でもこの姿の際に偽名を使うならそういったキャラ付けしておけば多少は情報かく乱できるかな、それもありかもしれん。


 というわけで色々と趣味に走ってみることにした。

 メットはそのままだが黒で統一したスーツに鉄蟻加工の手甲と脚絆。首には濃紺のマフラーを着け腰は風車を模ったベルト。おやっさんに新たに依頼した専用の胸当ては表側が薄い緑色で背中が黒になっている。ふむ、結構いい感じになってるんでない?


 あとは武器だな。大っぴらに魔法は使えないし刀なんて使っていれば身元にたどり着かれるのも時間の問題だろう。だが流石に格闘だけではきつい。なんせ武技を使えないしな。だったら適性のある両手棍でも使おうか。そういえば王母蟻の毒針がそのまま放置されていたしレベルの上がった今の魔工ならば加工できるんじゃないだろうか。



 取り出した王母蟻の毒針は持った瞬間、じゅわっと手の表皮を溶かす。あっちちちち。持つだけで劇毒物ってか。相変わらずやばい素材である。

 これら危険な代物の加工方法であるがやり方はいままでとそこまで大きな差があるわけではない。自身の魔力を素材全体へと流し浸透させるのである。危険物もその方法でそういった特性を押さえ込み自在に使うことができるようになる。問題なのはこれが触るだけで溶かすほどの強酸特性だということ。



 ふう。いよっし、覚悟は決まった。いざ、参る!


 ジュワワワ


 皮膚が溶け嫌な音が聞こえてくる。それを気にしないように意識は魔力の浸透に無理矢理集中させる。ぐずぐずと骨まで響く痛みがくるが気にしない。ノブサダは強い男の子なんです。こんなんじゃ負けません! 気にしたら泣き出しそうな訳じゃないんだからね。脂汗を流しながらひたすら我慢なのだ。誰か痛覚遮断とか教えてくれませんかね、ほんと。


 波紋の如く広がる魔力はやがて王母蟻の毒針全体へ浸透しそれに併せるかのように強酸が俺の皮膚を傷つけることがなくなっていった。うん、手の平の状態を見たくないので早々にリジェネーションとハイヒールを併用して癒していく。あー、痛かった。


 そこまでいったら後は持ちやすいように加工するだけ。まずは先端を切り落とし続いて先の太さに合わせて回りも一直線に切り落としていく。この辺の部分は投擲用の短剣にでも加工するとしよう。

 切り落とした後は手に馴染む様削りをかけていく。

 そうしていくうちに先端の断面が八角形の俺専用両手棍が完成する。



 結構痛い思いをして出来上がった一式はこれらである。予想以上にいい出来だと思う。


 魔獣の兜

 品質:遺産級 封入魔力:169/169

 付与:『軽化』『硬化』『鋭化』

 様々な魔物の素材を集めて作り上げられた兜。赤外線を感知する瞳、清浄なる空気を取り込む口、魔力に応じて変化する角など仕掛けが満載である。防具としても優秀であり特に衝撃、斬撃、魔法防御に長けている。



 魔獣の胸当て、手甲、脚絆、腰帯、首巻

 品質:遺産級 封入魔力:158/158

 付与:『軽化』『硬化』

 腰帯:『耐毒』『耐気絶』『耐麻痺』

 首巻:『耐魅了』『耐即死』『耐呪』

 ノブサダがオーダーメイドした装備一式。鉄蟻の甲殻を圧縮し複数重ね合わせた胸当て、ミスリル板を内蔵し魔力伝導が跳ね上がった手甲と脚絆、各種耐性が付与された腰帯と首巻により攻守併せて強化されている。



 魔獣棍・雄曼酸棍

 品質:遺産級 封入魔力:188/188

 付与:『軽化』『硬化』

 王母蟻の毒針から作り出された両手棍。使用者の魔力に応じて強酸を作り出す特性がある。

 天恵:【強酸】


 魔獣の投げナイフ

 品質:遺産級 封入魔力:157/157

 付与:『硬化』

 王母蟻の毒針から作り出された投擲専用の短剣。予め魔力を込めて投げつけることにより強酸の効果を纏い目標へと突き立つ。

 天恵:【強酸】



 知ってるかい、これらの名前って俺が考えてつけた訳じゃないんだぜ?

 出来上がってその能力を確認しようとしたらすでにこの名称が付いていた。もはや悪意しか感じないのだが犯人はあの駄女神だろうか? 今度問い詰めてやろう。


 これらの防具は換装の指輪を使って収納することにした。指輪に魔力を流して設定したキーワードを発することにより瞬時に装着される。それまで装備していた防具は入れ替わるように指輪の収納空間へと収まる仕様だ。これで二つの人物像を使い分けることが可能だろう。ちなみに魔獣装備を着込むと僅かだが背が高くなる。靴底にミスリル板を仕込んだことで厚底となったせいだ。決してシークレットブーツのようにしたかったわけでない。本当だよ!


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