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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第六章 和泉屋繁盛記
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閑話その17 夏祭りだよノブサダさんSP④

 

 砂塵が消え去る頃、己が勝利を半ば確信していたオルディス神殿勢は追撃することなく異変のあった俺たちのほうへと向き直ろうとしていた。

 だがもうもうと立ち込めていた砂煙のなかから現れたのは多少の切り傷を負いつつも不動の構えで立つアーレン神殿勢だった。

 それに気づいてももう遅い。ペロリと自分の腕から流れる血を舐めとると彼らは牙を剥いた。


「はっはぁ、俺たちのこれを見てくれ。こいつらをどう思う?」


 一瞬なんのことか分からなかったがよく見れば先ほどまで羽織っていたはずの法衣はなくなりいつのまにやらブーメランなビキニパンツ一丁になっていた。しかもその身体はなぜかテラッテラだ。

 その逞しい姿にキャアアアアと黄色い歓声が一際高く上がっている。中には気絶してしまう女性もいたようだ。彼女たちには眼福だったのだろう。だが俺には目の毒でしかない。あ、マニワさんたちが対抗意識燃やしてギリリと唇噛んでる。


 そしてビキニパンツ勢は横向きになりかかっていたオルディス神殿勢へと一気に突撃を開始した。


「反転! 反転んんん!」


 シュトローイムは慌てて反転命令を出すが間に合わず正面からではなくやや斜めからそれを受け止めることになる。


「いいぞ、昨年よりも随分と鍛えてきたのがじんじんと感じる。だがまだまだだ。今のお前では俺とやりあうにはまだ足りんよ。尻を締めなおして出直すんだな」


「ぐ、おのぉぉぉれぇぇ」


 ズッドォオオォォォォン


 威力を相殺することができずにオルディス神殿勢の担ぎ手は方々へと弾き飛ばされる。乗り手が無傷だというのがまた彼の人の神経を逆撫でしそうな気がするな。






「待たせたな」


「いや、別に待っちゃいないけどもな」


「はっはっは、手厳しい。それにしてもレベリット神殿が最後まで残るとは予想外だったよ。流石、戦拳というところですかな」


「馬鹿を言うでない。これだけの面子を揃えられるうちの義息子の人徳じゃろうよ」


「ほうほう、中々いいオトコのようで。ふふう、祭りも終盤だ。さぁやろうか」


 何をやるつもりなんだか知らないが負ける気はさらさらないぞ。


「いくぞぉぉ、勝利の栄光を我らに!」


 オオオオオオオオ


「さぁお前ら。尻の穴引き締めて突撃だ! 楽しいぞぉ」


 ウホオオオオオオオオ



 広場の中央でガシイイインと両勢力一歩も引くことなくぶつかり合った。


「ハアアアアアッ」


「はっはっは、やるねぇ」


 神輿上では俺とアヴェサンによる肉弾戦が繰り広げられている。

 掴みかかろうとする手を拳で打ち落とす。掴まれたら色々な意味でやばい気がするので必死である。

 しかもなんかぬるぬるする。どうやらワセリンのような油脂でも塗っているみたいだ。これがさっきの魔法を防いだ仕組みなのか?

 眼下では前衛の茶色い肉の壁がアーレン神殿勢と競り合っている。だが後方のくまはっつぁんたちがちと危険か。いかに仕事で筋肉ついていようとことこういう戦モドキじゃ厳しいよな。すまん、みんなもう少し耐えてくれ。


 周りへの影響を考慮して最小限の使用で済ませていた魔力を解放!


 拳にウインドストームを乗せて撃ち抜けば即興の砲撃へと早代わり。


「オオオオオオリャアアアアア」


『おおっとぉぉ、ノブサダ猛攻! 先ほどまで使っていなかった魔法を使い出したか。一撃一撃が重いのかアヴェサンの攻撃が止まってしまっているぅぅぅ』


 ドンドンドンドン


 くそう、何発打ってもぬらあっとした速度で掴み掛かってくるのが止まらない。なまじっか動きが遅いだけに不気味で仕方ないぞ。


 ガシイイ


 げ、しまった。拳を受け止められたか!?


「くふふふ、掴まえたぞお」


 種としての本能かなにかがこのまま何かをやらせればいろいろな意味でヤバイと告げている。どれくらいやばいかというと師匠の一撃がうっかり入ってサンズリバーへダイブしそうになった時以来のヤバさを感じた。

 何もやらせずに一気に押し通る! 俺はなりふり構わずに思い切り魔力を込めた。


「ぬ、おおおおお?」


 ロックハンドスマッシュの要領で瞬時に手の周辺に岩を生成。膨張する岩肌で掴む手を押し返す。流石に予期せぬ行動だったのかアヴェサンにも戸惑いが浮かぶ。そして今の俺ならその隙を見逃さない!


 アヴェサンの野太い腕もぬるぬるのためロックハンドに巻き込み掴みつつ身体は背を向けるように密着。左手で俺の腰の辺りを掴み何かをしようとしているが俺の体勢のほうがやや早い。


「星になれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


空気推進エアスラスタ』を併用してのぶん投げ式一本背負いで天高く投げ飛ばした! 手のほうは瞬間的に解除。アヴェサンが砲弾の如き勢いで飛んでいく。

 テラッテラのその身体は魔法の照明を反射しキラキラと錐揉みに回転しつつ宙を舞う。


 ドウン


 あ、結界の天井にぶち当たったらしい。結構高く飛んだね。おっと死なすわけにも行かないのでウインドストームを使って落下速度を落としてやる。


 それでもそれなりの速度で落ちてきていたのだが……くるくるくるとでかい身体を器用に回転させながら着地。まさかのにゃんこ空中三回転半捻りだと!!? なんて恐ろしいやつだ。


 とまあ相手の動向をみるのはここまでとりあえずアーレン神殿の旗を掲げてっと。


「獲ったどおおおおおおおおおおおおおお!」


 ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 周囲から歓声が沸きあがる。


 純粋に勝負を楽しんだ者、賭けに勝った者、負けた挙句母ちゃんにシバかれる者、悲喜こもごもである。

 うちの面子はレベリット神殿一点買いなので皆ホクホク顔をしていた。俺も1万マニー賭けちゃってたもんだからかなりのぼろ儲けである。それなりに賭けた人(俺の知り合い連中が主)がいたせいか万馬券とは行かないまでも倍率なんと40倍である。はっはっは、笑いが止まらんぜよ。


『勝者! レベリット神殿んんんん。圧倒的にアーレン神殿の勝利だと思われていた戦いを制したのはまさかのレベリット神殿です。開催以来初の勝利に皆盛大な拍手を!!』


 集まった観客から一斉に拍手が巻き起こり担ぎ手たちが大きく神輿を揺らす。調子に乗って派手に上下しているぞ。おわっとっとっと。










 ヒュウウウウウウウ


 突如の気まぐれな突風が広場を吹きぬけた。


 普段ならなんのことはない一陣の風。だが……。



 ハラリ



 キャアアアアアアアアアアアアアアア


 黄色い歓声というか悲鳴も混じったものが一気に沸き起こる。


 のおおおおおおおおお、なんで俺の褌が外れるんじゃああああああ。


 あ、まさかアヴェサンの最後のあれで緩んだのか!?


『おおおっとう、まさか最後の最後でポロリをお見舞いしてくれるとはさすが魔獣。二つ名に恥じぬいいもんもっているじゃないかぁぁ』


『本気を出すともっとすごいんです』


 ちょ! エレノアさん何赤裸々なこと言ってるの。


『エレノア氏から思わぬ暴露も飛び出したところで『神殿だよ全員集合 ポロリもあるよ』の終了を宣言する! 来年もお楽しみにぃぃぃ。さぁ、爺ちゃん婆ちゃんお子様どもに嫁の尻に敷かれている旦那たち。帰るまでが祭りだ。ちゃんと後片付けして遅くならないうちに帰るんだぜぇぇぇぇぇ』


 そんなこんなで今年の祭りは幕を閉じることになる。とんだハプニングがあったが概ね楽しめたんじゃなかろうか。師匠やなんかも久々にいい余興じゃったと言ってたしな。







 ブツブツブツブツ仏


 夜中に寝苦しいと思ったら駄女神からわた飴、焼きモロコシ、イカ焼き、焼きソバ、たこ焼き、焼き鳥と恨みがましい声で神託が延々と垂れ流しにされていた。仕方ないので溶かした砂糖からわた飴を作り出しつつ日々嫁たちの食欲を相手取り50年ものにも引けを取らぬであろうタレを使った焼き鳥をお供えする。そしたら調子に乗ってビールなんて要求してきやがりましたのでアルコール度数80%まで蒸留したものをミックスした酒を供えてやったら大人しくなった。永久に眠るが良い、南無。



 てってれ~♪ 称号『荒ぶる神輿』を獲得しました。

 てってれ~♪ 称号『女神を潰した男』を獲得しました。

次回からは再び本編に。

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