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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第六章 和泉屋繁盛記
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閑話その16 夏祭りだよノブサダさんSP③

レコたち新人さんは従魔たちとお留守番です。

差し入れとかはあるけどね。

『最後は前回開始五分とかからず敗北。祭り開始以降勝利した回数は0、果たして勝利の芽はあるのか! レベリット神殿より魔獣『ノブサダ』ぁぁ。っとなんと乗り手も担ぎ手もなにやら黒い布をかぶっているが一体なんだぁぁぁ?』


 前情報を与えないために俺たちは姿がばれないように着込んでいたのだ。

 もはや賭けの締め切りも終わったはず。さぁ、我らがフルメンバーをお見せしようじゃないか!


 バッ


 かぶっていた黒い布が宙を舞い俺たちの全貌が明らかになる。


『こっ、これはぁぁぁぁ。なんと全員東方でいうところの半被と褌で衣装を統一。というかちょっと待て。一番前にいるのは戦拳マトゥダか!? 職務をほっぽりだしてていいのかあんた。更にマッスルブラザーズにモンバラバラの兄弟。ソロモン亭の店主である鋼の料理人ドヌール氏と烈火の鍛冶屋マウリオまで。更に更に紅一点で血煙の戦乙女カグラぁぁぁぁぁ。なんだこの豪華面子は! 今年のレベリット神殿は神輿と共に心機一転とんでもないダークホースだぁぁぁぁ』


 半被に鉢巻、褌で衣装を統一。それが身を心を引き締め勝利へと駆け上がるのだ。というフツノさんの謎の力説から急遽このような格好で参戦と相成ったのである。


 あれ? 何気にドヌールさんやおやっさんに二つ名がついてないか!?


 神輿は俺とおやっさんが鉄蟻素材をふんだんに使い強度を保ったまま軽量化に成功。さらに俺が付与魔法を使うことで国宝級の贅沢仕様となっている。具体的にはこんな感じに。



 レベリットの神輿

 品質:国宝級 封入魔力:139/139

 付与:【硬化】【軽化】

 レベリット神殿に奉納されし神輿。神を持ち上げ宥めすかし恩恵を授かりし代物。

 鉄蟻素材で全体を強化されており衝撃、斬撃に強い造りになっている。

 天恵:【経験値上昇】



 ベルに一切を託されてから知り合いの皆様へ訪ねて回りなんとか口説き落とすことに成功。先に呼ばれた者以外にアフロ君やブライトン君。くまはっつぁんと商店街の仲良しさんが手を貸してくれている。カイルとストームさんも誘ったのだが二人とも本業が忙しく(警備と宿屋)参加は不可能だった。



『そして今冒険者ギルドで一番の新進気鋭である魔獣『ノブサダ』。知らない皆様へ詳しいプロフィールを説明しますと数ヶ月ほど前ここグラマダにて冒険者活動を開始。あれよあれよというまに現在Dランク。特筆すべきはなんと戦拳の十番目の弟子だとか』


 おおおおおと盛り上がりを見せるギャラリー。


『さらに5人の嫁と女性だけの従業員で最近出来た『和泉屋』を経営しているだとっ! おのれ、男の敵め、もげるがいい!!』


 ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 歓声から一転男衆から罵声が飛び交う始末。おい、司会者もげろとか言うなよ。


『しかしこれだけの面子を揃えてきたレベリット神殿の動向は気になるところです。個人的にはアヴェサンに掘られてしまえと思いますが善戦に期待しましょう。それにしてもエレノア嬢、あれほど参加しなかったお父上が参加するとは一体何が?』


 司会者ぁぁぁぁ。本音だしすぎだろう。


『何度も誘いはあったそうですがその際に皆、神殿に勧誘するのが煩わしかったみたいです。父は洗礼を受けていませんから』


『なんてこった。そんな因果関係があったのか。折角なので本人にも直接聞いてみよう。現場のショージさぁぁぁん』


 観客の目は師匠の側に駆け寄る妙齢の女性へと集まる。


「はいはい、こちら現場のショージです。それではマトゥダさん、今回はなんでまた参加の意向を?」


 そのまま拡声用の魔道具を師匠に向ける。


「いや、別に信者になれと言われとらんからの。そもそも生活魔法だなんだと自力で出来るもんを神に頼るなんぞ愚の骨頂よ。ま、弟子であり義息子の頼みならば職務をほっぽり出しても参加せざるを得まいて」


「流石戦拳。自由です。果てしなくフリーダムです。恐らく部下の方は激務に追われていることでしょう。ご冥福をお祈り申し上げます。以上現場のショージでした」


 師匠にはこれが終わったら超辛口に調節した新作の酒を贈る予定だ。


 賄賂?


 ははは、人聞きの悪い。弟子から師匠へただの暑中見舞いじゃないですか。


 同様にマニワ兄弟とマッスルさんたちには暑中見舞いとしてプロテイン飲料の試作品詰め合わせが贈られるのだがこれは言えんなあ、くくく。あ、ユキトーさんにも胃腸薬と育毛剤の試作品を渡そうか。臨床試験も兼ねているが喜んで貰ってくれるだろう。うちの師匠がいつもすいません。











『それでは時間一杯です。これより一時間の間、この広場は戦場となります。防御面に関しては魔術師ギルド提供の新型結界装置を各所に配置しておりますのでご安心を』


『ルールは簡単。神輿が地面につくか旗を奪われればその団体は敗北さ。ただし直接的な攻撃をしてもいいのは互いの乗り手のみ。故意に乗り手が担ぎ手を攻撃した場合は最終的に審議が入るから注意しときな』


 司会者は一旦呼吸を整え身を乗り上げながら……。


『いくぞぉぉぉぉぉテンプルファイトォォォォレディィィィゴォォォォォォォォウ』


 カーーーーーーーーーン


 声高らかに開始を宣言した。この世界にゴングあったのかと関心する間も無く神輿は広場中央へと走り出す。





 ソイヤ! ソイヤ! ソイヤ! ソイヤ!


 祭りらしく派手な掛け声をかけながら神輿同士がぶつかり合う。


 最初の一当てで脆くも崩れ去ったのはルーティア神殿の神輿。なんせ両脇がうちとアーレン神殿の重量級ですから。決してイケメン憎しとかじゃありません。あ、イケメンたちは衝撃で前歯折られたりしていたけどコレは事故、事故なんです。



 そして現在、アーレン神殿の『アヴェサン』とオルディス神殿の『シュトローイム』はビリビリと激しい殺気を振りまきながら対峙していた。


「アヴェサンよ! 昨年の借りは今ここで晴らさせてもらおうか。過去の我は魔法の土台となる肉体が非力ゆえに負けた。されど今年はそれがない。我が魔法を喰らいて地に沈めぃ」


「良かったのかい? ほいほい対峙して。俺は真正面からぶつかられたら構わずくっちまう人間なんだぜ」


 不意にフオオオオンと大気を揺らす耳障りな音が上がる。

 オルディス神殿勢の担ぎ手の法衣に編みこまれた術式が魔方陣となって浮き上がりその魔力をシュトロームへと還元しているように思われた。恐らくだが神輿も含めて一つの術式なんだろうな。


「相変わらず人を馬鹿にしたような物言いを! 喰らえぃ、新たに習得した新魔法を!! 吹けよ神風! 舞い上がれ砂塵! 我が眼前に立ち塞がりしものへ裁きの鉄槌を下せ!!」


『おお、オルディス神殿勢に動きありだ! だが相変わらずアーレン神殿勢は動かない。昨年同様、不動の構えを崩さないぃぃ』


 砂塵が周囲を包み込みその魔力もどんどん練り上げられていく。

 だが相手の詠唱最中にも関わらず不動の構えを崩さないアーレン神殿勢。アヴェサンに至っては神輿に腰を下ろして足を組んでいる。それ神輿だから神への不敬にあたるんじゃないのか?


「ゴッドサンズストーム!」


『昨年と違い魔法の名前も規模も変わっているが果たしてアーレン神殿勢に通用するのか! 今、今まさに目の前へ迫る竜巻に彼らは笑みを浮かべたままだぁぁぁ、どうなってるの!』


 聞いたことの無い魔法名を発したその場には砂が舞い上がり小規模ながら竜巻がうねりを上げていた。それは意思を持つかのように速度を上げながらアーレン神殿勢目掛けて飛んで行く。

 が、それでも動きを見せないアーレス神殿勢はそのまま竜巻に飲まれてその姿は見えなくなった。


「ハアッハー、オルディス神殿の魔法技術は世界一ィィィィィィ」


 勝利を確信したかのように高笑いを上げるオルディス神殿勢。





 そんな中、俺たちが何をしていたかというと……。


『あっちはあっちで三つ巴になっちゃってるねぇ。マトゥダ氏が投入された時点で警戒度は跳ね上がるんだろうけどもさ』


「シュコー、シュコー」


「フー、フー、フー」


 危ない面子二人に取り囲まれていたりする。


 あっちの二組が互いに火花を散らせている間にどうやらこちらの二組は共闘して俺らを倒しておこうという腹積もりらしい。未知数かつ正面に陣取るのは師匠だし恐ろしさを感じても仕方の無いことではある。

 それでも中々動き出せずにあちらさんは牽制しあっていた。


 というかあの女性はメイス持って随分と息が荒いんだが大丈夫か? 正直危ない人にしか見えない。黒鎧のほうも大概だが。




「そういやこないだ作った包丁のほうの切れ味はどうだい?」


「あれはいいものだ。いつもなら堅くて梃子摺っていたガンセキウオも簡単に捌けたな」


「そうかい。ノブサダのやつに言われて鉄蟻素材で加工してみたが思いのほか上手く行った様だ」


 おやっさん、ドヌールさん緊張感緊張感。世間話してる場合じゃないでしょ。


「なんじゃお主等これくらいで緊張しとるのか? いかんのう主殿を見よ。適度に緩んでおるじゃろ。ああいうほうがいざと言う時にすっと動けるもんなんじゃ」


「は、はい!」


 コクリと素直にうなずくアフロ君とブライトン君。

 あの二人は違う意味で堅くなっているのではなかろうか。彼らの背後にいるカグラさんの装いはサラシに褌である。傷だらけではあるものの逆にその傷が野生的な色気を出しているようにも思える。周りのギャラリーでも鼻の下を伸ばしているやつが何人もいるしな。けしからん、本当にけしからんのう。カグラさん、帰ったらお仕置きですよ。


「師匠、全然動きませんね。さくっといっちゃいます?」


「そうじゃのう。どうせぶちかますなら血沸き肉踊る感じがいいのう」


 ふむ、ならばこちらから参りますかね。空間把握でうちの人員をきっちり把握。この間、覚えた新たな神聖魔法を改変したものを加えて超強化しちゃいましょう。


「フルプロテクション! アンド フルブースト! いくぞ皆の衆! 今宵は何に遠慮することもなし! レベリット神殿勢、突貫するぞぉぉぉ!」


 オオオオオオオオオオオオオ


「むうう、これほどの補助魔法とはやるなノブサダも」


「これは確かに筋肉も震えるほどの鼓動だわ。むっほーワタシも今宵は猛るわよぉぉ」


 突如動き出したレベリット神殿勢に若干驚きつつも同時にぶつかって来る両勢力。2対1のガッチリスクラムが組まれ……。


「そおおおおりゃぁぁぁぁぁ」


 高鳴る鼓動! ミシリミシリとパンプアップしていく筋肉! 踏み抜く地面は足の形にへこむほど!


 師匠+筋肉勢の肉の壁は分厚く立ち塞がりぶち当たる担ぎ手たちを弾き飛ばした。

 俺は?  倒れかけた神輿に乗る黒鎧へライ○ーキックばりの飛び蹴りをかまして旗を奪い取りつつ物質転移でアメトリス神殿勢の旗も回収する。


 私たちの出番これだけぇとリサリ嬢(32歳)が叫んでいたがこれだけです。全部魔法で旗奪っちゃえばいいじゃないってのはなしよ。それは興が削がれる。あくまでお祭りだしな。


 どうやらあっちも終わったみたいだし油断は禁物なんだけどもさ。



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