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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第六章 和泉屋繁盛記
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第126話 和泉屋繁盛記その8



 地下は石造りとなっており予想以上に頑丈なものだった。空気の循環やらはどうやら魔道具をふんだんに使っているらしい。流石、ギルドの頭といったところだろうか。


 ん? 近くの部屋からなにやら声がするぞ?







「おらっ、歯ぁたてんじゃねぇよ。魔族だとて首輪につながれてちゃ只の普人族以下だな」


「ひひひ、警備の合間にこんな役得があるなんて堪らねぇや」


「おい、お前ら間違っても傷物にするんじゃねぇぞ。こいつらにゃもっともっと時空石を作ってもらわんといけないんだからな」


 中にはそれなりに身なりのいい冒険者風の男が三人、首輪をつけられた亜人の女性たちを嬲っている。その行為と言動から『こいつらヤっていいよね?』『屑即斬でおk』と脳内裁判が総統の一声で瞬時に終了したため即行動に移した。


「スリーピングミスト」


 まずは全員お眠りなさい。女性陣にこれからすることは目の毒すぎる。

 そして男共を並べてトストストスと心臓を貫いた。


「あっ」「べっ」「しっ」


 痛みで目を覚ますが問答無用の『悪夢襲来ナイトメア』で悪夢を見つつ己が行動を悔いながら逝ってもらう。その間に女性陣の乱れた衣服を整えクリアで汚れを落としておく。絶命した連中は廃棄物用の次元収納へぽいっと廃棄しておいた。


 さて、あまり時間はないが女性陣から事情を聞こうか。とりあえず一番年上っぽい黒い肌の女性を覚醒させる。黒い肌といってもダークエルフではないっぽい。


「……んっ、えっ、アナタは!?」


 見開いた瞳は普人族であれば白目であるはずの部分も黒い。それが髪や睫毛など真っ白な部分をより強調している。


「しっ、静かに。君たちに酷い事をしていた連中は弾き出した。ちょっと話を聞きたいんで落ち着いてくれるかい?」


 コクコクコクと激しく頷く。身体は震えて明らかに俺に対して恐怖しているようだ。あんなことされてたんだし男に恐怖感持ってても仕方ないか。


 ――事情聴取中


「それじゃ君たちは無理やり攫われて奴隷にされていたと?」


「はい、ワタシを含めこの子たちも時空間魔法を使えることからここに閉じ込められて時空石を延々と作らされていまシタ」


 そういえば収支でやたらと時空石やマジックポーチの項目が高かったのはそのためか。


「ここにはギルドのマスターも来ているのかい?」


「奥の部屋でこの時間はいつも何かしている気配は感じマス。私たちはここと作業部屋以外は移動できませんガ気配察知だけは廊下でできたのデ」


「なるほどね。それじゃもう少し待っててくれるかな? ちょいとギルドマスターに天罰ってのをくらわせてくるからさ」


 不思議なものを見るような目で俺を覗き込みながら彼女は疑問をぶつけてきた。


「アナタは普人族なんですよネ? ワタシ達魔族のことが恐ろしくないのですカ?」


「全然。俺には不当に奴隷に落とされた同情すべき女性にしか見えない」


「ハジメてそんな風に言われましタ。普人族は誰も彼もワタシ達のことを道具のようにしか扱わなかったカラ」


「普人族だからって馬鹿なやつらばっかりじゃないさ。んじゃいってくるよ。そっちの子たちが目を覚ましたら事情を説明しておいてくれ。くれぐれも騒がないように」


 そして念のために結界を張っておく。後から人が来るかもしれないしな。


「ハイ、御武運を」


 さーて、これでギルドマスターに手加減する必要性が皆無となったわけだ。ふふふ、どうしてくれよう。



 空間把握からだとこの部屋にいるようだ。明らかに先ほどまでの部屋よりも頑丈で豪奢だな。鍵は……かかってないようだ、無用心だな。これから賊が襲っちゃいますよーっと。





「ほひーほひー、ジョリエンヌちゃんは素敵でしゅねー。ペロペロ、うむっふぅ、汗の味も甘露甘露。これだけで寿命が延びるわい」


 中に入ればやたらとゴテゴテした服を着たジジイが裸のいたいけな幼女を舐め回している。ここはHE・N・TA・Iの巣窟ですか! 一心不乱に舐め回す姿はそれはもう醜いものだった。とりあえず結界を張って眠らせてしまうか。



「スリーピングミスト」


 だが俺の魔法はジジイを眠らすことなくパキイインという音と共に霧散した。


「何奴じゃ!」


 そう問われて何者と話すほどお約束を遵守しないのが俺のポリシーだ。続けざまにエアバインド、グラビトンを放つ。


 パキン、パキン


 どうやらジジイの身に着けている装飾品は全部魔道具っぽいな。発動するたびに壊れて力を失っていく。流石はギルドマスター、無駄に金をかけている。


「ぬぐう、どこぞのギルドの回し者か! ジョリエンヌちゃん、あやつを肉片にしてやるがいい」


 ちぃ、やっぱりそうくるか。こういう欲深系のジジイが前に出てくる訳ないですよねー。


 いたいけな幼女は裸のまま信じられない勢いで飛び掛ってくる。その手には瞬時に爪が伸びており鋭利な刃物を思わせる光沢をだしていた。


 名前:ジョリアンヌ28号 性別:女 年齢:2 種族:人造魔族

 クラス:グラップラーLv25 状態:隷属

 称号:【怪力乱心】

【スキル】

 身体変化Lv4 身体強化Lv4 身体硬化Lv4 咆哮Lv3 



【怪力乱心】

 ただ目標を破壊するためだけ一心不乱に力を振るうものを指し示す称号。肉体に宿る力を全て破壊にだけ回すことにより爆発的な威力を叩き出す。ただし防御力などは反比例するように低くなってしまうため諸刃の剣より扱いづらいだろう。



 おおう、どこからつっこめばいいか分かったもんじゃない。

 取りあえずこの子を無力化するとしようか。


「エアバインド×3!」


 三連掛けのエアバインドならどうだ?


 ブウウン、バチン!


 ふんぬと振り払われた右腕から順にエアバインドが外されていく。おいおい、この幼女、カグラさんより怪力なんじゃないのか?


 フオン


 振るわれる爪は絶対に受けられない。バックステップで間一髪かわせばそれは床を難なく切り裂いた。ちょっと待て、バンジロウよりエグイ攻撃してきてないか。こいつはやばいな。接近戦はご法度だよ。


「ほひひひ、流石はワシが精魂込めて造り上げたジョリエンヌちゃんじゃ。それ、そこじゃやってしまえい」


 ジジイの解説がうざい。こっちは幼女を傷つけないように気使っているというのに。

 普段使っていない分、使い慣れていないがアレを使って無力化するか。下手に拘束してもそのままじゃあっさり破られるのがオチだしな。


 強化魔法のフルコースをかけなおし魔力纏を圧縮展開する。識別先生、一挙一動を見逃さないようサポートよろしく。幸いにして力任せの攻撃で動きは読みやすい。


 真正面……からステップで横っ飛びした後、跳躍して襲い掛かってくる幼女の爪。

 だが軌道を予測、力の流れに逆らわず返しの型を応用してふわりと投げ落とす。そして同時に小声で魔法を発動するのだ。


「メルトストレングス」


 組手中に何度か使ったことがあるだけで実戦では初使用のこの魔法。やはり熟練度が低いため接触していないと発動しない。一度きりではそこまで大きな効果は望めないが何度も繰り返し発動することで効果は蓄積される。大体、10回ほどであのカグラさんも槍を持つのに一苦労するくらいに弱体できた。


 伊達にバンジロウと一戦交え死線を潜り抜けたわけではない。たしかに威力こそ空恐ろしいが当たらなければどうということはないのだよ。


 目標をセンターに受け流してメルトストレングス

 目標をライトに受け流してメルトストレングス

 目標をレフトに受け流してメルトストレングス

 はい、アップ、ダウン。


 徐々にだが組し易くなってきたな。このままならあと2,3回もかければエアバインドで捕まえられると思う。

 それにしてもいまだに幼女はずっと無表情である。声も一度すら発していないし端正な顔立ちだけにアンティークドールのようだな。



幼女NOタッチ!

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