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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第117話 多くのオークで御送りしました

勘違いされている方がいらっしゃるようなので再度ご報告。


スセリ=カグラママン

ウズメ=ウミネコ大将 肉球ぷにぷに


なのですよ。


 オーク。


 それは数多の女性にとって嫌悪の対象。


 集団で村々を襲い、殺し、奪う。


 ダンジョン内部ではその限りではないが地上においてオークの集団に襲われた集落は幼子一人残らないという。


 恐るべきはその身体能力。

 力士の如く厚い脂肪と筋肉に覆われたその巨体は並みの人間では刃物を突きたてたとて傷つけることは難しいだろう。大人を軽々と持ち上げる膂力は驚異以外のなにものでもなく更には武具や魔法すら使いこなす知能も有している。


 恐るべきはその繁殖力。

 異種族だろうが構わず犯し孕ませる。変異種にもなれば男すら孕ますことができるらしい。何よりその成長速度が異常だ。受精後は三月ほどで出産まで漕ぎ着ける。それらからオークに捕まった女性(一部の男性)は精神を病むか体を壊すかのどちらかで亡くなる事がほとんどである。各国の騎士団と冒険者ギルドが主体となり定期的に集落を焼き払いその数を抑制することで過剰な繁殖を抑えているのが現状だ。


 恐るべきはその統率力。

 力のある者が治めるオークの集団。上下関係がしっかりしておりその統率力は人間以上という場合すらある。特にオークキングなどを頭に置いた集団は見る見るうちに膨れ上がり小国を滅ぼしたという事例もあった。







 グシャっと何かが叩き潰される音が木霊する。

 アアアアアアとなにかが燃やされのた打ち回っている音がする。

 ヒュゴっと声を発することも出来ずそのままドサリと崩れ落ちる。

 ボゲシャアと体のうちから破裂し肉塊となる。



 ダンジョンの奥でそれらは蠢きあっていた。

 ひいっと悲鳴をあげ逃げ惑い壁へと追い詰められている者がいる。

 それに追いすがりにやりと笑みを浮かべる者も……。










 うん、蹂躙しているのはうちの嫁さんたちなんだけれどもね!



 カグラさんが金棒でオークのアレをぐしゃりと叩き潰し。

 フツノさんが火魔法と風魔法をあわせて燃やしつくし。

 ミタマが飛び回りながらその首を掻ききっている。

 タマちゃんの分体がオークの口から複数入り込みそのまま自爆すれば某野菜の王子様が言うような汚い花火と化す。


 俺? 俺は魔法で補助しながらその光景を戦々恐々と点滅しながら眺めている。思わず股間がキュってなるよ、本当に。なんで毎回股間を砕くのだろうかって質問をしたらなんとなくドロップ率が上がりそうだからとのこと。部位破壊後のドロップに期待なんですね、分かります。


 点滅しているのは空間転移を改変した『瞬間転移』の練習をしていたから。本当はするつもりは無かったんだけれどもあまりに皆様がはっちゃけるものだから出番がないんだよね。『瞬間転移』は壁の中にいる状態を防ぐため転移先になにかがあるときはキャンセルされる仕様と詠唱破棄を取り入れたもの。戦闘中にも使えるように繰り返し使いながら体に慣らしている。ぱっぱぱっぱと繰り返し転移しているので点滅しているように見えるわけだ。


 話は変わるがグネとの会合で色々と思うところがありフィフスクラスに奴隷商人を設定した。奴隷の首輪等に対する対策は多いほうがいいので隷属魔法を習得するためである。

 まあ、うん、こんな調子で狩っているもんだからあっさり10を超えすでに覚えてはいるんだ。とりあえずクラススキルもあるかもしれないしこのままにしておこうと思うよ。


 タマちゃんのスキル『自爆』は分体を使うことでその使い道を見出すことが出来た。自爆した際にフィードバックがきていくらかHPが減るものの俺かタマちゃん本人がさらっと回復することで問題はない。しかし無理矢理潜りこみ爆発したり空中から爆撃したりとタマちゃんは戦略兵器と化しつつあるな。元が最弱といわれたマリモとは誰も思うまいて。




 ぶっちゃけてしまうと物足りないほどあっさり倒せるオークたち。アイアンアントとスチールアントの集団戦のほうがよっぽど苦戦した。マザーアントの産み出した個体が有する経験という武器は統率力と相まって正面から相手取るには厄介だったしね。やっぱり遠距離から狙撃、もしくは砲撃するに限るよ。



 この階は溜まった鬱憤を晴らすかのように女性陣が暴れまわっております。俺も感じていたがやはり蟻ばかりを狩り続けた上の階は苦行だったらしい。この階層はゴブリンとオークが主体だが新鮮味はあるだろう、今のうちは。俺とミタマのトレジャーハンターのおかげでドロップ率低めなオークのゴールデンボールが結構な数出ているので加工すれば一儲けになるしね。



 そしてこの階層まで来て気づいたことがある。

 宝箱が置いてあった部屋で魔物がいないか識別先生にお仕事してもらったんだが……宝箱自体も鑑定できた!


【銅の宝箱】

 罠:毒霧 期待度:微妙


 こんな感じで。素敵過ぎます、識別先生。でもいままで気付かなかったのが悔しい。ま、罠があるってことが分かるだけでも嬉しいよ。予め準備できるしね。

 それにしても期待度ってことは開けるまで中身は不確定なのかな? 相変わらず謎が多い仕様だ。





 そんなこんなでオークやゴブリンを見敵必殺しながら二日ほどかけてボス部屋まで辿り着きました。

 空間把握のおかげで魔物の配置が丸分かりですから余裕もあるというものです。死屍累々を積み上げてこの場へ辿り着いたのですよ、敵のだけどもさ!


 さて、ここのボスはゴーレムらしいとは聞いておりました。それでもボスというものの引きが良すぎるわたくしでありますから油断はしないんですのよ。今ある最高の補助魔法をかけ万全の態勢で挑むのです。あ、部屋の前での順番待ちはありません。というか前の階層からマッスルさん達の他は同業者を見ていないのです。








 皆へ準備の確認をすればこくりと頷かれ俺が先頭で部屋へと踏み込む。

 その部屋の天井は高く広さもかなりのものだ。


 毎度お決まりの如く入り口は黒い靄で封鎖され部屋の奥には2メートル半はあろうかという黒い塊が見える。


 アイアンゴーレム28号

 HP:555/555 MP:23/23

 鉄で作られたゴーレム。迷宮の守護者たる貫禄は十分。動きは多少遅いもののその硬さと重さを生かした攻撃は驚異である。




 ブオンという何かが灯る音と共に黒色のゴーレムの瞳に力が宿る。なんか鼻が高いゴーレムだな。


 マ゛アアアアアア


 ドズンドズンとゴーレムが走ってくる。多少遅いって表示だが予想以上に早い!


「散開!」


 合図と共に全員が散らばる。力自慢のゴーレムということもあり固まって行動するのは上手くないと話し合っていたからだ。


 正面に立つのはカグラさん。って真正面から受け止めるつもりか!?


 ゴーレムは走り来るそばから右腕をあげ勢いを乗せた拳がカグラさんへと振り下ろされる。


 ガッキイイイイン


 金属同士が激しくぶつかり合う音が部屋中に響き渡った。カグラさんが振り上げた金棒はゴーレムの片手をしっかりと受け止めギリギリとぶつかり合っている。力比べは互角といったところだろうか。相手は片手だが対格差を考えれば破格の腕力である。


 間髪入れずに両脇から俺とミタマがゴーレムへと斬りかかる。


 ギイイイン


 これまた金属同士がぶつかり合う音が響く。やっぱり金属に刃物で打ち合うのはだめか。ミタマも当てた手が痺れたのかふーふー手を吹いている。


「燃えよ踊れよ、金色こんじきに輝きし妖狐の灯火よ。踊り舞い飛びて全てを溶かせ!」


 カグラさんの背後でフツノさんが詠唱を開始している。どうやら秘伝の術はいくつかバリエーションがあるようだ。おっと、俺も追加でプレゼントしないと。


「カグラ! 横っ飛び!  金狐妖飛炎!!」


 フツノさんの合図にカグラさんが横へとひっ飛ぶ。ほぼ同時にゴーレムを金色の炎が包み込んだ。


赤壁突風大炎上バーストストーム!」


 金色の炎は俺の放った火炎竜巻と混じり合いアイアンゴーレムを熱し上げる。その体は真っ赤に染まりかなりの高温に曝されているだろう。

 全身を炎に包まれるゴーレムだが生き物のように叫び声をあげるでもなくその場に止まっている。


 マ゛アアアアアア


 止まっていると思いきや一転、背中から大量の風を噴出しフツノさんへ真っ直ぐに飛び出すゴーレム。まるで炎の弾丸のようなその巨体は先ほどまでとは違いびっくりするような速度でフツノさんへと迫る。


「ひあああ!?」


 素っ頓狂な声をあげてしまい身動きの取れないフツノさん。あのままじゃやばい!?


 フオオオオン、ドゴアン


 高速で飛来する物体がフツノさんへぶつかりつつゴーレムの射線上から押しやりそのままゴーレムは壁へと突っ込んだ。


「あんがとな、タマちゃん。ちょっち痛いねんけど助かったわ」


 ふるるん


 何かあったときの対処のためタマちゃんは空中に待機していたのだ。タマちゃん、グッジョブ。



 壁へと突っ込んだことで無理矢理炎を消したアイアンゴーレムだが未だ熱は冷めやらず真っ赤な体をぎこちなく動かしこちらへ向き直ろうとしていた。もはや触れるもんじゃないのでこういうときはお約束の金属疲労狙いですネ!


 --吹き荒ぶ風は氷河の風よ。そこは棺桶、そこは墓場。一面の氷が汝の棺なり。


北墓場(アイスコフィン)!」


 対単体拘束氷結魔法として考案。魚や野菜の保存にも最適。もしかしたらコールドスリープも可能かもしれないよ。さあ、君も喰らってみようじゃないか。

 アイアンゴーレムの周囲が霜に染まりその直後、ガキンと一気に固まる。加減の問題かサイズの問題かは図りかねるがアイアンゴーレムの体表から5センチメートルほどの氷で覆われている感じだ。

 うーむ、予定では氷の棺のような感じの魔法だったのだがいまいちだな。まだまだ改良が求められるようだ。


 ピシピシピシッ


 あ゛っ!


 時を置かずして氷の膜はあっさりと壊されてしまった。

 だが、急速に冷やされた効果は間違いなく出ており真っ赤だったその色は元の黒へと戻り体中に幾本ものヒビが入っている。


「カグラさん!」


「任された!!」


 再びこちらへ動き出す前にカグラさんが猛然と飛び出す。そして勢いそのまま金棒での強烈な一撃を見舞った。


「武技『虎棍無双(ここんむそう)』!!」


 巨大な虎が襲い来る様を模したと言われる両手棍の武技がカグラさんの持つ金棒を介して放たれる。金棒には闘気のようなものが纏われており威力を高めるのに一役買っているのだろう。


 グァラゴラガキィィィィィン


 振るわれた金棒がアイアンゴーレムへと打ち付けられると激しい音と共にその動きを止める。やがて打撃の中心点からヒビが走りガラガラと崩れ落ちた。


 動かなくなったことを確認した後、俺達はハイタッチしながら喜びを分かち合う。駄女神アナウンスが流れたがレベルが上がっただけで特に珍しいものは無かったので割愛。

 魔素へと還元されたアイアンゴーレムを見届けドロップしたものを確認しよう。さてさて一体何を落とすのかな~。


 近寄って見てみればコロンと転がる指輪一つと正方形の立方体が3つそこに残されていた。


 換装の指輪

 品質:高品質 封入魔力:13/13

 指定した装備へ瞬時に着替えることのできる効果を持つ指輪。元々の装備、換装する装備は指輪に実装されている収納空間に納められる。使用する際はまず身につけた後に指輪へと装備を収納しておくことが前提条件。



 ゴーレムコア×3個

 品質:良 封入魔力:5/270

 ゴーレムの核となる立方体。込める魔力が多いほど自由なゴーレム設計が可能である。創る際に必要となる素材が大量に必要。ただし、素材を練成できる魔法を所持していればその限りではない。魔力で素材を形成した場合、ゴーレムの維持に順次魔力を消費すると共に特定範囲外へ出るとゴーレムは崩れてしまう。


 ほうほう、なかなかいいものではないですか。換装の指輪は俺がお買い上げしちゃおうかな。あとコアのほうは家の門番に最適ですがな。これ何度も通ってゴーレム兵団とか作ったら防衛機能は完璧になるんでない? ゴールデンボール集めにきたらここにも寄ることにしようか。

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