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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第一章 ノブサダ大地に立つ
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第11話 やっと着いたよグラマダ

どっせーい、11話目からもれっつ投稿じゃい!

 意識を取り戻した俺の目に飛び込んできたのは二つの丘だった!

 はい、ノブサダです。どうやら俺はミタマに膝枕してもらっていたようです。

 なんという至福。この余韻に浸っていたいところだけど現状はどうなってるんだ?

 大イノシシにはトドメをさした筈だけれど。


「お、ノブ君起きたんか?」


 フツノさんがこっちを覗いてくる。


「うん、なんとか。フツノさん、俺ってどれくらい気を失ってたんだろう?」


「10分ほどやね。倒れてたはずのノブ君が起き上がって大イノシシを倒したと思ったらまた倒れるもんやからうちもミタマも大慌てやったんよ? 無茶したらあかんで。ノブ君」


「あいすいません。二人は大丈夫?」


 二人とも目立った怪我などはないようだ。俺があんな所で吹っ飛ばされたことに動揺していた様だったからちょっと不安だったんだよね。


「それにしてもどうやってあの大イノシシにトドメ刺したん? ね、お姉さんにちょこっと教えてみ。な、な」


「……姉さん、ノブはまだ起きたばっかりなんだからそんな攻め立てちゃ駄目」


「うう、そやね。うちが悪かったわ」


「いや、もう意識がはっきりしてるし大丈夫だよ。この膝枕は名残惜しいけど起きる」


 本当に名残惜しい! だけど倒した大イノシシもなんとかしないといけないしな。体のほうは打ち身がまだ痛む位で済んでいる。蹴られた時は骨にヒビでも入っているのは覚悟していたのだがどうやらヒールで治療できたらしい。すごいね、魔法。

 さ、それじゃ大イノシシを捌いてしまおう、新鮮なうちに処理しないと。


「とりあえずこの大イノシシを解体しちゃおう。二人とも手伝ってくれる?」


「「うん」」


 追及をかわすには他にやることを見つけてしまえばいい。

 二人に助けられながら大イノシシを解体していく。魔物ではないので魂石はないようだ。

 それよりも肉! 新鮮な肉である!

 体の痛みを我慢してでも目の前のお肉様を処理するのだ。


 毛皮をきっちりと剥いだ後、血抜きをして部位ごとに切り分けていく。街に着いたらしかるべきところで引き取ってもらえば結構なお値段になるらし。内臓は水袋の水を全部使って洗浄し一まとめにして保存。他の肉の部位は俺が買っていた布を使って小分けにしていき3人で手分けして持つことにした。さすがに重量がありすぎてリュックに全部は入りきらないのです。

 そういや、二人に魔法のリュックだと話したら驚かれた。結構な値段がするそうで苦し紛れだが育ての爺様の形見とすることにした。

 なので高そうな部位は俺が持つことになりました。


 だが、これだけしてもやはり持ち切れないのである。流石大イノシシ。あ、トラバサミは岩陰に置いておいた。嵩張るしへこんだりしてもはや使い物にならないという判断です。


 仕方ないので持ち切れない分は焼肉なのです! はい、現在、焼肉祭りですよ。


「ふはー、うんまいわぁ。前に食べたイノシシはもっと臭みが強かってんけどこれはそんなんないね。なんでノブ君が調理したのこんなにうまいのん?」

「ウマウマ」


 なんでだろう? 家事スキルの恩恵? 前、地球で俺が捌いたのより美味しい気がする。このイノシシが美味いのだろうか?

 まぁ、いいや。そこまで深く考えるよりもいまはこの肉を楽しもう。塩のみのシンプルなのからフルーツを使ったソースをかけたもの。あとは少ないながらイノシシの天ぷらも作ってみた。これで買ってきた油は使い切ってしまったな。野菜は面倒なので細切りにして肉巻きで食べている。


「ああ、やっぱり肉はいい。果物や黒パンと比べるとなんというか力が湧く感じがする」


 こくこく、と肉を頬張りながらミタマが同意の意味を込めて頷く。うむ、思う存分食べてくれたまえ。かなりの量が残っているのだよ。




 恐ろしい……うまい肉だが残りの量を三人で全部平らげることができるとは思わなかったぜ。フツノさんもミタマも大満足のようだ。ミタマはいつもちょっと物足りなさそうにしてたもんな。


 大分、食事の時間とったけど再び歩み始める。余計な戦闘のおかげで時間をくったけど出発時刻も早まったということでトントンといったところらしい。このまま行けば日暮れ前にはグラマダへ着きそうだってさ。


 歩きながら大イノシシを倒した後に確認してなかったステータスを見てみる。


 名前:ノブサダ・イズミ 性別:男 種族:普人族?

 クラス:戦士Lv7 状態:健康

 称号:【マリモキラー】

 HP:39/70 MP:30/82

【スキル】

 エターニア共通語 異魂伝心Lv1 魔法改変Lv1 家事Lv5 農業Lv3 剣術Lv2 投擲Lv1 魔力纏Lv2(up!) 回避Lv1 神聖魔法Lv1 属性魔法適性Lv2(up!) 偽装Lv2


【固有スキル】

 識別の魔眼Lv2(up!)


 おお、一気に2レベル上がってた。スキルもレベルアップ! 今回上がったのでクラスとスキルのレベルアップは別物と考えたほうがいい気がしてきたな。MP上がらない戦士でも属性魔法適性上がったし。

 おや、種族のところも見えるように……普人族のあとにある”?”はなんだろう。

 識別の魔眼が上がったことでなにかしら変化があったかなと思ってたら状態の項目が解放された感じ?

 大イノシシのも見えたからあのときには上がっていたんだろう。






 それからの行程は特になにかに遭遇することもなく順調に進んでいた。街道も徐々に広く整えられていってる感じがする。そんな僅かな変化を感じていると遠目になにやら城壁の様なものが見えてくる。


「ノブ君、あれがグラマダやで。町全体を大きな壁が覆っててん。アレくらい大きく強固なんは最西のアヴァオアク砦くらいやで。それかて魔王領に接しているから強固にしてるんやけどな」

「ほうほう、それだけ強固な壁をつくるほどこの街が重要視されてるってこと?」

「せやね、ここらの領地を治めるアズベル公の直轄やし物流の中心でもあるよ。騎士団に常駐の守衛隊もおるから治安もええねん」


 アズベル公。ここら辺一帯を治める公爵様らしい。その政治的手腕はかなりのものらしくグラマダは彼の代になってからずっと善政が敷かれている。さすがに詳しいことはフツノさんも知らないけどグラマダの過ごし易さは他の非ではないらしい。色々と期待が持てるな。


 街の入り口である門には検問の列ができていた。俺らもいそいそと最後尾に並びます。


「街に入るには200マニーいるねんで。身分証ない場合はここで仮登録証を発行してもらえるんよ。預かり金として2,000マニー必要やね。あとはどこかのギルドへ登録してギルドカード持ってこれば預かり金は戻ってくる仕組みや」

「どこかのギルドってことは複数あるの?」

「せや、大きいところは冒険者ギルド、商業ギルドやね。あとは職業ごとに中級ギルドがあるわ。ノブ君は冒険者ギルドに登録するんよね?」

「そうだね、伝手やなんかもないしそれが無難かなと思ってる」


 いろいろ話しているうちに順番がきたようだ。


「お、『風のしっぽ』のお二人さん。無事帰ってきたな」


 軽そうな衛兵が二人に話しかけてきた。年のころは20代半ばってとこか。わりかしイケメンよりだな。


「カイルはん、お疲れやで。なんとか無事に戻ってきたわ」


「ギルドで指折りの美人姉妹になにかあったらみんな悲しむからな。かく言う俺もその一人だし。どうよ、仕事あけたら俺と飲みに行かない?」


「……嫌」


 ミタマ、一刀両断だな。


「依頼人への報告と彼の案内があるから無理やね。さ、仕事してや」


「むむむ、二人に男だとぅ! どこのどいつだ」


「俺、俺。よろしく、カイルさん」


「って子供じゃねぇの。驚かせやがって」


 15歳相当のはずなのに……。東洋系の顔は幼く見えるってのもあるんだろうが、この低身長が恨めしい!


「子供じゃないって。冒険者になりに田舎から出てきたんだ」

「はは、そう言っているうちはまだまだひよっこなんだぜ。まぁいいや、身分証はあるか?」

「森の中で育ったからそういったものは持ってないんだ。フツノさんの話だと冒険者ギルドでギルドカードを発行してもらえるそうだからそこで作るつもりだよ」

「そうかそうか、んじゃ仮登録証の発行だな。ちょっと待ってろ」


 そう言うとカイルは衛兵の詰め所に戻っていき小さな水晶玉を持ってきた。


「こいつの上に手を置くんだ。こいつは『断罪の水晶』って言ってな。過去に犯罪歴があるとギルド経由で情報を共有して浮かび上がらせる代物だ。ま、真っ当に生きてりゃなんの問題もない」


 促されるまま水晶玉へ手を置いてみる。水晶玉に変化はない。


「よし、犯罪歴はないみたいだな」


 そう言うとサラサラっとチケットみたいなものに記入していく。ちなみに後で聞いたことだが犯罪歴があるとなにをしでかしたか水晶玉に浮き上がってくるそうな。


「あとは通行料200マニーと仮登録証発行代金として2,000マニーだ。こいつは身分証となるものを発行後にこっちへ持ってきてくれればそのまま返却するぜ。あとギルドカードさえあれば今後の通行料は免除になる」


「んじゃこれでお願い」


 リュックから2,200マニーを取り出して手渡す。


「たしかに受け取った。こいつが仮登録証だ、無くすなよ?」


「ありがとう」


「グラマダへようこそ、未来の上級冒険者さんよ。ま、怪我しない程度に頑張れ」


 軽そうだけど結構面倒見がよさげだ。悪いやつじゃないよね。どれどれ、チェックはいります。


 名前:カイル 性別:男 種族:普人族

 クラス:戦士 Lv12 状態:健康

 称号:なし

【スキル】

 剣術Lv3 槍術Lv2 生活魔法


 これくらいが衛兵としての標準なんだろうか? あの大イノシシくらいならなんとかなる?

 それにしてもカイル? 衛兵なのに視線がずっとフツノさんたちのお尻に向いているんだが……。仕事しろよ、衛兵(笑)。

 そんなカイルを尻目に街へと足を踏み入れる。なぁ、カイル、名残惜しそうに見送っているけど本当にいいの? 他の人、溜まってきた行列に四苦八苦してるけど。



「それじゃギルドまで一緒にいこか。残念やけどそこからはうちら依頼主へクエスト完了の報告にいかなあかんねん。本当は最後まで付き合いたいとこなんやけどね」


「いやいや、一人じゃこんな早くここまでこれなかったろうし十分助かってるよ」


「そう?今後なにか困った事あったらうちらに声かけてな。定宿は『炎の狛亭』ってとこや。宿の人に言付けてもらえれば連絡とれるようになっとるよ」


「……そこ、料理美味しいの」


 流石ミタマぶれないな!


「あ、それとあのイノシシのお肉と毛皮はギルドで買い取ってもらうとええで? いま持っている分はみんなノブ君のでええんよ」


「いや、きっちり三等分しないと……」


「ええの、駆け出し冒険者になるんやからお金はいくらあっても足りひんやろ。お姉さん達からの餞別や」


「……私は肉のほうが好きだから問題なし」


 ぐぬう、とんだ不意打ちだ。だから俺の荷物に高い皮とか入れてたのか。この借りは必ず返すよ! いい意味で!!


「ほな、またねー」


「ありがとう、二人とも」


 冒険者ギルドの前で二人と別れる。ポツンと一人、なんとなく寂しいな。

 よしっ! 気持ちを入れ替えていざ参らん!


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