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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第106話 海でのバカンス⑥

※訂正とお詫び

カグラの母親の名前とウミネコ大将の名前がかぶっていました。これは単純に作者がすこーんとど忘れしていた為です。謹んでお詫び申し上げます。尚、母親の名前をウズメ→スセリへと変更したことをここにご報告申し上げます。


 ふと気付けば見知らぬ城の中にいた。なぜか城であると認識できている。

 昼間のようだが内部は薄暗く光を求めて歩を進めればそこは町並みが一望できる開けた場所、屋上だった。

 年月を感じる城壁には見たこともない植物が蔓を這わせており古城と言ってもいいほどの歴史を感じる。

 見える町並みの中には獣人や魔族と呼ばれる多種多様な種族が日々の営みを送っていた。

 畑を耕し汗を流す父親達。

 水場に集まり洗濯をしながら会話に興じる母親達。

 種族は違えど仲良く野山を駆け巡る子供達。

 裕福そうには見えないがそこには確かな幸せが見て取れる。

 その光景を目にして俺は自然と笑みを浮かべていた。



「ちちうえー」



 背後より幼子の呼ぶ声がする。



 誰だろう? 俺はこの子を知らない。


 どうしたんだい? 僕はこの子を知っている。



「あのね、ははうえがちちうえをさがしてたの。だからわたしがおよびにきたの」



 にっこりと花が咲いたように微笑むこの子供がなぜか愛おしく感じる自分がいる。


 とととと駆け寄ってくるこの我が子が何よりも愛おしい僕がいる。



「どうしたの? ちちうえ、おむずかしそうなかおをしているの」



 愛おしいはずなのだがなぜだか悲しい。

 そんな感覚が襲い来る。


 愛しさが溢れて止まらない。

 そんな僕自身に不安がよぎる。



 そんなものをかき消そうと子供を抱きかかえ精一杯微笑みかける。



「○○○○はいい子だね。それじゃあ一緒に母上のところへ行こうか」



「はい、ちちうえ。うふふ、ちちうえとおなじたかさです。ちちうえはこんなけしきをみていたのですね」


 高い目線から辺りの景色を満喫する幼子。満足げにもたれかかると早く母親の元へと行かないのかと言わんばかりにこちらを見ている。


 おっといけない。●●●のところへ行かないとね。


「さ、母上のところに行こうか」


 我が子を抱きかかえたまま城の中に戻る。

 愛しき我が子よ。これからお前に降りかかるであろう苦難を知りつつ何も出来ぬ不甲斐ない父を許しておくれ。











 目を開ければそこは夜の明けかけた海の家。

 周りには愛しい女性達が共に寝ていた。

 なんとなく違和感を感じそっと頬をさすってみればうっすらと涙が流れた跡がある。夢の内容は思い出せないがなんとなく儚くも悲しい気持ちが胸を締め付ける。

 そんな寂しさを紛らわすように横に眠るミタマの頭をなでてもう一度目を閉じた。







 おはようござんす、ノブサダでござんすよ。


 ウズメたちは群れの話し合いで結局もとの住処へ帰ることに決まった。ウズメ自身は俺の傍に残りたそうだったが集落に残るように言っておいた。いきなり頭が抜ければ只でさえ統率の取れていないウミネコ集が霧散してしまいそうだったからだ。ちゃんと後継者を育てたらおいでとウズメの頭をなでくりまわす。たっぷりの食料を束ねた布袋をいくつも預けてウズメとその一行を見送った。

 最後に「ご主人、跡継ぎできたら、そっち、いくね。待ってて」と言って前足を器用に振るウズメにちょっとキュンとしたのは内緒である。



 そういえば寄生粘菌についてエレノアさんに確認してみたんだが彼女がギルドに所属してからそんな魔物の話は聞いたことがないという。ハイクラーケンのケンさんは理性的に押さえた部分が大きいのでウミネコたちの被害も少なかった、人的(猫的)被害はゼロだったからね。だがこれが知能の低いそれも巨躯だったり凶悪な攻撃手段をもつ魔物だったとしたら……。狂戦士の如く暴れまわる魔物は苦戦すること請け合いだろう。事情を知らない冒険者パーティなら寄生粘菌に捕まって寄生されてしまう可能性だってある。エレノアさんと話し合った後、間違いなく上層部へと伝えて貰う様にお願いした。



 上層部といえば先達て人事が一新され随分とすっきりしたらしい。公爵様からの後押しもあって腹黒い連中は追放されたり閑職に追いやられたりしたようだ。特定冒険者パーティに割の良い仕事ばかりを不当に斡旋し賄賂を受け取っていた者は財産没収の上、強制労働に従事している。女性冒険者の弱みを握って幾人も手を出していた者は男っ気しかなく汚物たっぷりの下水処理に回された。俺にも関係していたが錬金術ギルドとグルになって碌でもない依頼を出してくれやがった者は賠償金を払った後に王都へと逃げ去ったらしい。少しでも風通しのいいギルドになればいいね。




 ところで話は変わるが夜の営みのおかげで着々と成長しているスキル『性豪』でございますが具体的な性能はと申しますとアレの持ち具合と回復力の上昇、様々なテクニックも上がっているんじゃなかろうか。明らかにレベルが上がるごとにパワーアップしてますわ。今じゃ全員同時にお相手できるくらいになりましたもの。


 ただ……ガリガリと寿命は削ってそうな気がしないでもない。頑張れ、俺。男の夢とは言いますが腹上死だけは避けたい今日この頃です。





 軽い朝食を済ませた後、再び海へと踊りだす。

 俺と泳ぎの上手なミタマとエレノアさんで潜りながら海の中を満喫する。澄んだエメラルドブルーの海の中は色とりどりの魚が群れを成し泳いでいた。昨日の雷撃でかなりぷかぷか浮かんだはずなのだが敵意のない魚は結界内に入り込みすいすいと水を掻き分けている。この魚たちも6Fで修復された木々のようなものなんだろうか。でもちゃんと食べれたしどうにも不思議な仕組みである。


 眺めと泳ぎを楽しみつつワカメやアワビ、サザエ、トコブシ、カキと様々な食材も海女さんよろしく大量に確保した。誰も獲る者がいないせいかそらもうわっさわっさと獲れた。ウズメたちにマグロ以外の魚類をあるだけ進呈したからしっかりと確保しておこう。



 お昼になる頃にはもう3人とも肩で息をするくらいくたくたになってしまった。いや、はしゃぎすぎたよ。


 昼ご飯はフツノさんと……なんとセフィさんとカグラさんが一緒になって作ってくれていた。

 実はこっそりと練習していたらしい。

 空腹なところにそんな心遣いの篭った料理をだされたら堪りません。俺はガツガツと味わいつつも豪快に料理を口へと運ぶ。時々ザリっとかガリっとか音がしたが気にしない!


 お返しとばかりに一品料理をお見舞いしましょうか。

 熱した石焼ビビンバに使うような器をテーブルの上に置く。そこへ辛口に仕上げた日本酒っぽい『和泉守』に浸けたエビが丼に入ってのご登場。『和泉守』はどんどんバージョンアップしているんだぜ。

 そしてそのまま丼を器の中へひっくりかえす。少ししたら指先に灯した火種を近づけると……フランベよろしくボウっと火が舞い昇る。これには皆もびっくりしてくれたようだ。アルコール分が蒸発し火も消えたところでどうやら蒸しあがったかな。

 エビの酒蒸しは特に酒飲みの三人に好まれた。エビの旨みが凝縮されほのかな酒の香りを漂わせたその身はかむほどに甘味を出し塩や醤油をつければ味わいを変えて口の中を満たしていく。

 幸せそうな皆の顔が俺にはなによりのご褒美です。




 食事を終えたら帰り支度をすませ海の家を解体した。維持する魔力を解除すれば霧散して消え去るだけなんだがね。地上で作るならそんなことはないがダンジョン内で作成した壁や建物はこうなるのだ。



 さあ、お家に帰るまでがバカンスです。

 帰り道とはいえそこは冒険者。女性陣がにゃっはーと魔物を粉砕している。

 特筆すべきはエレノアさんも戦闘に参加したこと。瞬時に姿が掻き消えたと思えば冗談じゃなく魔物が飛んだ。壁にめり込むほど打ち付けられた魔物はそのまま絶命する。その有様に4人は驚いていたがすぐに適応し自分も負けじと魔物を狩り進めていた。セフィさんは後ろから水魔法ぽんぽこ撃っていただけだが。

 皆曰く非常識は俺で慣れたらしい、解せぬ。


 俺は後ろで補助魔法なんかをかけているだけだったのでファーストクラス以外は普段上げていない奴隷商人、大工、石工なんかをつけておいた。さっきから駄女神アナウンスがけたたましく鳴っているが絶賛放置中である。


 道中に出会った冒険者と話を交わすと実のところあの海の家付近は話題に上っていたらしい。何にもないのに食を誘うやたらといい匂いが漂ってきたりドガアアンと大きな炸裂音がしたり姿も見えぬ女性の声がしたりといった噂が……。全部に心当たりがある。やっぱりギルドに報告はしていても末端まで話が伝わりきらないってのは往々にしてよくあるなと実感。あの寄生粘菌についての話はしっかりと浸透するよう強くお願いすることを誓った。





 たった一泊二日だったが楽しかった。イレギュラーもあったけれどそれもまた良いスパイスであろう。また折を見てみんなでゆったりとした旅をしたいものである。温泉とかいいよね。


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