表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
112/274

第103話 海でのバカンス③

色々ご指摘あった部分を修正。

ジャンルの設定が仕事中で出来ずに超出遅れました。


 にゃあああん


 ソレは逃した獲物へと貪欲に追いすがっていた。微かな獲物の臭いを頼りに海上を駆ける。

 その獲物の臭いが弱々しくなって来た頃、不意に臭いが途切れる。

 ソレは許さない。獲物を横取りした相手を。

 眼光鋭く先ほどまで臭いがしてきた方向を見つめそのままダっと駆け出した。








 浜辺へと戻った俺は月猫を魔力水で洗浄しマグロの解体に入る。ざっとした手順は知っているのだが細部までは分からないから手探りだな。

 まずエラと内蔵をとる。これらは有効利用が思いつかなかったのであとで肥料にでも混ぜようかと石バケツに入れて保存しておいた。

 次いで尾を関節に沿って落とし次に頭をなんとか落とす。

 そして背びれを落とすのだがこれまた固いったらない。身が少し余分に削れるがなんとか切り落としていく。

 背骨に沿って二つに割り三枚におろすのだがでかい分しんどい。解体用に作った石の調理台の上一杯のサイズだもの。

 骨についたのもこそぎ落として中おち丼にしようかね。

 あとはどんどん切り出してサクに切り出していく。おっほうここは大トロ、こっちは中トロか。い~い脂の乗りをしていやがる。米酢はまだないから寿司飯はできないがご飯のおかずには十分だろう。あー、わさびが欲しいな。


 俺が必死こいて捌いているといつのまにやら起きた皆が真剣な顔で解体ショーを眺めている。


「ちょっと味見してみる?」


 いいの!? と言わんばかりに目を輝かせる一同。


「醤油につけてから食べてみて。うん、生でいけるから」


 恐る恐る口に運ぶ一同。君たちカルパッチョとか食べてるじゃないの。

 ぱくりと赤身を食べると「ん~~~」と言葉にならないのか顔をふるふると震わせている。お気に召したようだね。これだけのクロマグロは日本で買えばいくらになるか知れたもんじゃない。量もかなり確保できたし師匠やおやっさんにもおすそ分けしよう。


「あとは夜にご飯といっしょに食べようね」


 そんな俺の言葉に不満げな一同。いや、さっきまで食べ過ぎて動けなかったじゃない。お腹すいてから食べればもっと美味しいよとなんとか納得させた。





 解体にたっぷりと時間を使ってしまったがバカンスは続くのだ。





「それそれぇ、うふふ、水の中で私に勝とうなんて甘いのよぉ」


 普段の緩慢な動きと違い俊敏に水の中を移動し接近するセフィさん。


「くっ、セフィはんにこんな特技があるなんて予想外や。せやかてうちもこのまま負けるわけにはあかんねんで」


 ばっしゃばっしゃと水を掻き分け突き進むフツノさん。

 エレノアさんとセフィさんのアダルトチームとミタマ、フツノさん、カグラさんのヤングチームに分かれての水辺の大合戦。頭上に紙の的をつけた5人が入り乱れて接戦を繰り広げている。

 俺はというとなんでか縛られて賞品台に括りつけられている。

 勝者のチームにはもれなく俺とデザートが賞品として授与される予定だ。

 予定なのだが……俺も一緒にきゃっきゃうふふする予定だったはずなのに! がっちり括りつけられているから身動きがとれませんよ!!

 一頻りぎったんばったん動いてみたんだがもう諦めた。

 無駄に動くよりみんなの艶姿をじっくりと眺めたほうが建設的だと思い至ったからである。

 水飛沫を弾けさせながら健康的な肉体美が俺の目を楽しませる。

 魔法は使用禁止。ばっしゃばっしゃと水を掛け合う美女5人。一人は幼女モードだが。

 水を掬い上げ互いの頭上を狙ってぶつけていく。アダルトチームは一人分のハンデであるがカグラさんがああなので戦力的にはイーブン。というわけでもなく足を引っ張るんじゃないかと思われていたセフィさんの予想外の動きにヤングチームは大苦戦している。やっぱりラミアは水辺に強いんだろうか。

 ヤングチームもだいぶレベルが上がっているがやはりエレノアさんの身体能力が抜きん出ている為、相方のセフィさんの健闘も相まってアダルトチームが勝利を収めた。水魔法を使っているそぶりは無かったが水流を操っていたように見えたのは気のせいってことにしておこうか。


 みんなには言ってなかったがセフィさんもセカンドクラスは解放されている。ただ、色々と話さなければいけないことが多いのでとりあえずは俺とセフィさんだけの秘密だ。


 セフィロト

 錬金術師 風水士

『錬金術師 水魔術師 風魔術師 風水士 暗殺者 守衛(自宅)』


 最後! 特に最後!! ニートじゃないか!

 ファンタジー世界にあるまじきクラスがあったわけなんです、はい。

 風水士ってのは余りメジャーじゃないクラスという話なのだが水の流れなどを考えるな感じろの精神でなんとなく操るらしい。ある意味セフィさんと相性がいいクラスではないかといえなきにしもあらずである。


 かくして賞品である俺がアダルトチームに進呈されたのである。

 流石にデザートなしってのも可哀想なので勝利者チームにはグレードアップしたものを差し上げることにする。







 カリカリカリカリカリカリカリ


 なんだ? なんか柱に爪たてて削られているような音が聞こえる。だが周りの皆には聞こえていないようで誰も気付いていない。ってことは結界になんかあるのか?


 空間把握で周囲を検索するとさっきマグロッスを仕留めた方向に小さななにかがいる。見たこともないものらしく一体なにかなのかまでは把握できない。そして小さいながら結構な数だ。



 スパンスパン


 ぬな!? 結界が切り裂かれてなにかが内部に侵入してくる。そんな簡単に斬れてしまうの!?

 おかしいな、カグラさんの槍だって余裕で食い止めた強度なんだが……。


「全員、ちゅうもーく。すぐに海からあがってくれ。何かが結界内部に侵入した。俺はここで迎撃するんで念のため置いてある荷物から武器を出してきて」


「……分かった。すぐ戻るから無理しないでね」


 こくりと頷き海上の先を見据える。

 海パン一丁に月猫だけ。フルプロテクションと魔力纏で防御力はある程度は確保できる。服を着て水を吸われて動きが鈍るよりはいい。ガゴンガゴンと水辺を境にストーンウォールを展開して背後にいかないよう備える。


 さあ、一体なにがくる!?



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


 少し待った俺の目に飛び込んできたもの。

 それは海上を走る多数の猫の集団である。


「「「「「「にゃあああああああああああああん」」」」」」


 その数たるや30匹以上はいるだろう。なんで猫が水の上走ってるんだよ!


 ウミネコ大将

 HP:128/128 MP:42/48

 水の上を疾走する猫型の魔物の一種。小さな体格ながら素早さを活かした戦い方で戦闘能力は高い。肉球から発する魔力で干渉し水を反発することで水上を走ることが可能になっている。爪を使っての戦闘方法が主だが年を重ねたものは魔法も使用することも。各地を放浪するが稀にダンジョンなどに住み着く習性がある。


 ウミネコ ×34

 HP:68/68 MP:23/36

 水の上を疾走する猫型の魔物の一種。以下略。



 そういう魔物ですかそうですか。もはやそういうもんだと諦めるしかない。って言えるかーい。ウミネコは鳥だろう!



 水際を境に相対しているわけなんだが魔物とは言え子猫サイズの猫達が大挙しているのだ。猫好きにはたまらないだろう。無論、俺もそうだ!


 35匹か……。一気に殲滅したいところだが……あのつぶらな瞳が攻撃を躊躇わせる。なんとかできないもんかと次元収納をごそごそとあさりミタマに使ってみようかと忍ばせておいたアレを気付かれないようにゆるーーーいウィンドストームで風に乗せて流してやった。



 うにゃあああああん


 バチャンバチャンと一匹、また一匹と波打ち際に倒れこんでいく猫たち。流石に大将はふらつきながらも俺への注意を怠らない。ウミネコたちの状態は現在泥酔になっている。そう、振りまいたのはマタタビの粉である。魔物にも効くんだね。本当なら酔っ払ったミタマさんとにゃんにゃんしようという邪な考えから持っていたのだけれども意外な使い道があってある意味良かった。


 ふしゃあああ(あたしがこんなので負けるわけにはいかないんだよ!)


 飛び上がり俺へと爪を薙ぐウミネコ大将。月猫で受け止めればギインと金属がぶつかり合う音がする。見れば魔力が爪へと流し込まれて強化されている様だ。こいつが結界を斬ったのかね。


 キンキンガキン


 ふらつきながらも懸命に踊りかかってくるウミネコ大将。なんか俺が悪役に見えて仕方ない。


 うにゃあああああ(なんとぉぉぉぉ)


 ふらっとふらつきながら掛かってきたところをわしりと掴む。


 ふにゃ! ふにゃあああああん(くっ! 殺せぇぇぇぇ)


 にゃああああああん((((あ、姐御ーーーー))))


 いにゃあああん(ウミネコの頭たるあたしがこんな辱めをっ)


 見よ! この指捌き! ミタマやフツノさんを腰砕けにしたもふもふハンドの力だ!

 喉をゴロゴロしたりお腹をさわさわと撫で回したりウミネコ大将の目は恍惚に緩んでいる。


 はにゃあああああん(そこいやぁ、だめえぇぇぇぇ)


 にゃにゃああああああん((((あ、姐御ーーーー!!??))))


 甲高い大きな鳴き声をあげウミネコ大将はぱたりと気絶した。尚、ナレーションはノブサダの勝手なアテレコでお送りいたしました。



 ふう、やれやれ。手ごわい敵だった?


 とりあえず波打ち際の猫達をあげておかないと溺れちゃうから引き上げないとな。武器を携えて慌てて戻ってきた皆も大量の猫たちに目を丸くしているぜ。



 結果的にどうなったかというとウミネコ大将を降した俺に他の猫たちも平伏している。きゅーんと切なげにお腹を鳴らしていたのでいまだ残っていた小魚を与えるとすごい勢いで食べていた。

 ウミネコ大将も今は大人しくちょこんと俺の脇に座っている。他の猫たちも大将がこうだから大人しく皆さんに抱きしめられていたりする。

 さて、この猫たちはいったい何故にこんなところにいるのか。ミタマのもふもふ感とはまた違った良さのあるこの猫達を見捨てるのは忍びないなあ。


感想欄でウミネコって話がでてどきっとしてました。

書いちゃってたんだもの!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ