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新説・のぶさん異世界記  作者: ことぶきわたる
第五章 そうだ! ダンジョンへ行こう!!
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第93話 決着

没ネタ集


テムロ「ふざけるな!たかが石壁四枚、一気にかき消してやる! 流星の二つ名は伊達じゃない!」


ノブサダ「ええい、うちの兄弟子は化物か!?」

「今のは良かったがまだまだ魔力の練りと構成力が甘い。だからこの『流星』に軽く解かれただけで魔素と散る」


 テムロさんスパルタです。そして、そのモーニングスター、『流星』って銘なんですか。

 それから二度ほど無詠唱による石壁作戦を試したがあっさり打ち破られた。

 どうやら鉄球が柄にはめられた状態で振るわれるとああいった効果がでるようだ。なんというか派手な戦闘ではないが堅実かつ確実に攻め立てられるのって相手としてはきついな。でもこれが分かっただけでも収穫か。それでもせめてかすり傷くらいはつけたい。完敗は嫌ですもの!


「ストーンスキン」


 土色の光が俺の体に吸い込まれるように消えていく。下準備はOK。痛い目を見るが今出来ることで最高の動きをするしかない。


 月猫を構え息を落ちるかせる。識別の魔眼をフル稼働させて一挙一動を見逃さないように見据える。

 そしてたっと前へ動き出す。

 それを待ち構えていたかのようにジャベリンが俺を狙って飛来する。こちらはお馴染み半歩避けで対応。ここからが勝負だ。


「同じことの繰り返しかい?」


 フォンと空気を凪ぐ音がして予定通り俺の胴へとモーニングスターが飛んできた。軌道は読めた! 

 魔力纏を胴体へ一転集中。踏ん張って耐えろ!


 メキン、ゴスン


 今だ!


「グラビトン!」


 ズドンと集中的にかけられたグラビトンによって鉄球が地面へとめり込んだ。それを踏み台にして一気に懐へと飛び掛かる。

 月猫を渾身の力で構えながらテムロさんへと肉薄する。だが、彼はモーニングスターが戻らぬことなぞどこ吹く風で飄々とジャベリンにて刃を受け止めるべくすでに構えていた。


 グニン


 振り下ろされた俺の剣筋が急に角度を変えさらに鎧の継ぎ目を狙って軌道を変える。『空気推進エアスラスタ』を刀身に向かって使い無理矢理軌道を逸らしたのであった。無論代償はある。無理な動きをしたため俺の筋肉はブチブチと音を立てているかのようだ。何箇所も筋断裂をおこしていることであろう。刀を握る握力もギリギリで脂汗がとまりゃしない。これはきっと終わった後はヒール重ねがけの副作用がガツンときそうだわ。


 スパン

 カラーーン


 小手の留め金が切り裂かれ小手がからりと落ちる。その腕にも一筋の傷があり血が滲んでいた。


「やるっ、だがここまでだ」


 カチンと小さな音が聞こえたと思ったらモーニングスターの柄が分かれ俺へと振り下ろされた。柄からカシュカシュンと特殊警棒っぽいものが形成される。


 だからどんなに多機能なんだと、ゴスン!


 その振るわれた一撃によりあっさりと俺の意識は奪われたのだった。







 ザバシャッ


 ぶはっ!

 顔へかけられた水で俺は覚醒する。

 周りにはミタマ達が心配そうに見下ろしていた。


「……大丈夫? どこか痛めてない?」


「ん、大丈夫だ。俺どれだけ気を失ってた?」


 周りのギャラリーもどこかへ散ったようだ。修練場には俺達とテムロさんだけが残っている。


「ほんの数分や。ほんま無茶するんやから、もう」


「あの『流星』とあれだけ打ち合うとは思いも寄らなかったのじゃ」



 あ、わかもとサンの口はしっかり封じられている。なにかもがもが言いたそうだったけれど今は我慢な。


 そうしているとテムロさんがやりすぎたというような顔でこちらを覘いている。


「いや、すまない。ちょっとやりすぎたようだ。闘鎧を切り裂き俺の体に傷つけられたのは久しぶりだったんでね。しかし、その若さでそれだけやれるっていうのは今後が楽しみで仕方ない。師父が入れ込むのも良く分かるよ」


 そう言いながら手を差し伸べてきた。それをしっかりと掴みながら俺も思ったことをのべる。


「己の未熟さが浮き彫りになった一戦でした。今度やるときは勝てるように精進しますよ」


「ふ、ははははは」


 テムロさんが大口を開けて笑い出す。あれぇ、真面目に返答したのに。


「いや、すまない。それとほとんど同じようなことを俺も師父へ言ったのを思い出してね。やはり弟子となるものはどこかしら似ているらしい」


 テムロさんも昔はやんちゃだったんですかね? なんというか俺からの印象は面倒見の良い兄貴分って感じに思えている。さっきの模擬戦だって俺に教えるような言葉振りだしね。


「これ以上エレノア君にお小言を貰うのも辛いのでここらでお暇するよ。公爵様と隊長にいい土産話ができた。それじゃまたな。次に合う時が楽しみだ」


 片手を軽く振り上げながら颯爽と去っていくテムロさん。

 力の差を思い知らされる一戦だったけれども一太刀だけだがかすることも出来た。間違いなく戦闘技術は上がっているはずだ。それが分かっただけでも上等。魔法のほうももっと緻密で丈夫な構成を編み出さないとな。それともっと組み合わせを増やせるように練習しないといけないだろう。『超電刃嵐錐突ライトニングスピンブレイク』に『空気推進エアスラスタ』を組み合わせて突貫とかできれば攻防一体の攻撃になったりするかもしれない。やべぇ、オラわくわくしてきたゾ。


 そんな風に模擬戦の結果を反芻していると後ろからなにやら負のオーラが迫ってきたのを感じております。恐る恐る振り向けばエレノアさんが仁王立ちしておられますよ。ちょっとこめかみがピクピクしているし大層ご立腹のようです。ひいい、阿修羅じゃよ、阿修羅のオーラが見える!


「ノブサダさん。いきなりあの人と試合うなんて無謀すぎます! いいですか……」


 それから1時間ほどエレノアさんからお説教とどれだけ心配したかを切々と説かれた。

 心配かけてごめんなさい。



 そんな訳で俺が説教を受けている間に他の面子が『ゴットマンズ』からの没収品の回収を済ませていた。武器やら何やらは随分と使い込まれておりちょっと取り上げるのも忍びなかったので現金と装飾品だけ回収したようだ。うん、うちの面々は俺に賭けた事で結構な額を儲けたみたいで心にゆとりができていたっぽい。俺? 俺はしっかり賭け忘れたわけで。

 装飾品はそれほど珍しいものでもなく野郎どもが使ったものをみんなに使わせるのも嫌だったのでギルド買取にしてもらった。現金合わせ〆て18万マニー。ま、彼らには自業自得と思っていただこう。武器防具はそのままなのだからこれから稼ぎ直せるだろうしね。


 依頼として受けれたのは薬の素材としてイノシシの肝とガラナを全部、杖の素材としてトレントの原木六本、甘味料として砂糖と蜂蜜をいくらかの三件。

 その他素材は後で使う分を確保した以外は売り払うこととしていた。

 蜂蜜、砂糖は依頼の分以外はうちでの取り置きですわい。だって女性陣が絶対残してって威圧するんですもの。

 プロテインは俺が飲む分を確保したほかは以前世話になったマニワさんたちにおすそ分けする予定だ。

 なんとなくだが喜びそうだったからである。


 というわけで買取の総額なんだが202,900マニーになった。

 極彩色の羽が一枚5万マニーもしたのである。ランバーさんの話では貴族御用達の装飾品の素材でありドロップ率もかなり低いらしい。なにかに使えるかもと一枚残してほかは売却した。


 予想外の収入にマニワさんにご足労頂いて三連娘やティナちゃんの服を作ってもらうのもいいかもしれんと思いを馳せる。子供はすぐ大きくなるし作業で汚れたりするから私服と作業着作っちゃいましょうか。それと夜の営みのために皆に着せるムフフなコスチュームも依頼したいな! YES、ノブサダの野望はじまった!


 あ゛、そういえばマニワさんに依頼していたあれも出来ている頃だね。








 ~こぼれ話~


「それにしてもあいつってあんなに凄かったんだな」


「ああ、俺もしっかり侮っちまって賭けを外したよ」


「まさかあの『流星』にかすり傷を負わせられるとはなぁ」


「人間離れした動きしてたよな、まるで野獣みたいな」


「魔法も無詠唱で使うとかどんだけだよって話よ」


「魔法を使う野獣か。これからは『魔獣』とでも呼ぶか」


「うっは、それはありだな。あんだけの美女に囲まれて夜のほうも大層励んでるんだろう? 『魔獣』ってなぴったりだろうさ」


「『魔獣』のノブサダか。差し詰め周りの美女は調教師かね」


「「「「あっはっは、そりゃいい」」」」


 ノブサダの与り知らぬ所で二つ名はどんどんと改良されていくのであった。


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