桜
大天使ウリエルは外へ出ていた。
彼女は無事に別館から救出されて、今はようやく外へ出てこれたところである。彼女を助けた天使たちは、やることがあるのか討伐対象の四人が滞在していた別館をいろいろと調べている。一人になったウリエルは、満月が輝く夜空の下にいた。あの四人と別れてから、しばらく経っている。彼らが今、どのような状況にいるかは、まだ彼女の耳には届いていない。
「……」
ウリエルは顔を上げる。
綺麗な夜空を見上げているのではない。彼女が見つめているのは、ほとんど散ってしまった大きな桜の木の枝だ。
わずかに四枚だけ、生き残っている。
たった四枚の桜だったが、四枚だからこそ似合っていると思えた。
しかし、その瞬間。
大きな風が横から吹いて、ウリエルの白金の髪を揺らす。すると同時に、四枚の桜の内二枚が、とても綺麗に舞い散っていった。
残るは二枚。
先に散っていった二枚の桜は、とても美しい散り様だった。
最後の二枚は、未だに枝から離れることはない。
散ることは、ない。
だがしかし。
果たして、それはいつまで続く悪あがきなのだろう。
散ることが宿命といえる桜が、散らないことなどあるはずがない。
今にも終わりそうな桜は。
いつまで終わらないでいてくれるのだろうか。