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006 閑話 とある白い少女の思い

 奴隷商人に捕まってしまいました。

 妹と遊んでいるうちに、パパに言われていた場所を越えていたみたいです。


 妹があんまりにもはしゃいで蝶々を追いかけていたので私も気がついていませんでした。


「お姉~お姉~」


 無邪気に笑いながら私を呼ぶ妹。

 ダークエルフの妹は、ママが違うけど私の妹です。

 パパは一緒なのにママが違う。

 ママが一緒でないと姉妹じゃないというグレン。

 あ、グレンはお友達のエルフの男の子です。

 

 良く解らないけど、ママが違っても私達は姉妹です。

 だって、ずっと一緒だし妹は妹で、姉妹じゃないなんてわかりません。


「エリラ~戻ろうよ~」


 追いかけて家に戻るよに走ったら目の前が真っ暗になって眠りました。


 目が覚めたときに、ガタゴト揺れるのでビックリして飛び起きました。

 飛び起きて、周りを見ると女の人が一杯いました。

 鉄の檻の中にいて沢山の女の人が周りにいて、私もエリラもその中で埋もれていました。


「エ…エリラ、起きて」


 まだ寝ているエリラを起こそうと揺さぶります。

 

「う~ん、まだ眠いよ~」


 それでも私は必死に起こします。

 だって檻から見える景色が移動していて、ガタゴト揺れいているのです。

 多分どこかに移動している。

 パパに聞いていた話と同じだから、怖くて怖くてエリラを起こして逃げたかったんです。


 寝ぼけたままエリラが起きて、2人で何が起こったのか解った後は、もう帰ることが出来ないと泣きました。

 パパが言っていました。

 エルフは森から出ると攫われて、どこか遠くに連れて行かれて奴隷になっちゃうと。

 そしたら、もうお家に帰れなくなっちゃうと。


 奴隷になると首輪が嵌められて、魔法が使えなくなって、何も出来なくなるって。

 泣きながら、私はエリラの首に首輪があるのを見ました。

 そして私にも首輪があることに気がつきました。


 さんざん泣くと、怖そうな人間の男の人が檻の外から木の棒で私達を叩きます。


「うるっせーぞ!餓鬼が!!泣くな!うっとおしい!」


 泣くなと言って私達をいっぱい叩きます。

 怖くて怖くてまた泣くと、もっと叩かれます。

 いっぱい叩かれて、そのうち私もエリラも泣かなくなりました。

 泣くのを止めると何も考えが浮かばなくなりました。

 ただ、何も考えないでじっとしていることしか出来ませんでした。


 何日も何日も馬車に揺られて、移動してます。

 もう何処に来たのか解りません。

 風の精霊さんに聞くことも出来ません。

 パパとママの顔が浮かびます。

 でも、もう会えないし逃げれません。

 私とエリラはずっと身動きしないまま、また何日も経ちます。


 森に入ると暗くなってきて、今日はなんだか変な感じがします。

 精霊さんとお話できないので、何が変なのか解りませんが良くない事がありそうです。

 でも、良くない事があっても何も出来ません。

 だから何も考えず、このまま死んでいくのかな~って思っていました。


 目の前では女の人が食べられています。

 喜んで食べられているのは何ででしょう?

 私もああなっちゃうのかな?

 怖いよ…


 良くない事はオークが近づいてきていて、私達を襲いに来ていたからです。

 ワーっと聞こえたらもう皆死んでいました。

 オークはとても強いです。

 動きは早くないけど、とても強くて硬いみたいです。

 だから、皆すぐに死んでいきます。


 今も目の前にオークが2匹来ます。

 とうとう私も食べられる番かもしれません。

 エリラも私ももう死ぬから何もしません。

 ああ、あのオークに食べられるのかな~


 私とエリラが抱っこされます。

 このオークが私達を食べるようです。

 最初に近づいたオークは何もしないで立っています。

 変なオークは私を見て悲しそうな目をします。

 何でだろう?

 オークならそんな目をしないで食べようとするのに…


 どうしてだろう、変なオークから目が離せません。

 変なオークさんはものすごく私を見ています。

 変なオークさんの眼の奥にある感情が、私の怖い思いをいっぱいにします。


 涙が出ました。

 叩かれた時から出なかった涙が出ます。

 でも、結局変なオークさんとは離れて、食べられてしまうようです。

 服を破かれて、胸が出ます。

 パパに好きな人以外見せちゃダメだよ、と言われていたのにオークに見られました。

 そして私の胸をオークが掴みます。

 痛いけど…それよりもこんな格好で恥ずかしくて食べられることに、さっきみた変なオークさんの目が思い出せてまた泣けてきました。


 突然、変なオークさんが斧を持って走ってきます。

 ビックリしました。

 変なオークさんは斧で私達を食べようとしていたオークを二つに分けちゃったのです。


 あんまりにもビックリしていると、変なオークさんは私に声をかけてくれました。


『あ、あ~とにかくこっちだ』


 魔獣語で話す変なオークさんの言葉は綺麗でした。

 オークは皆言葉が汚いです。

 エルフは魔物ともお話が出来ます。

 森はエルフだけのものじゃないってパパが言ってました。

 魔物も動物も森に住んでいるから、出来るだけお話して喧嘩しないようにするんだってパパはいつも言ってました。

 だから、私もエリラも魔獣語が解ります。


『大丈夫か?心配するな、君も助けるから』


 変なオークさんは妹のエリラも助けてくれるみたいです。

 食べないで助けるオークって本当に変なオークさんです。

 私達は檻の裏に抱っこされて連れて行かれます。

 もしかして、さっきのは言い訳でこれからここで私達を食べるのかな?


『俺はこのまま奴らと戦う、だから逃げなさい』


 変なオークさんは本当に私達を助けようとしているみたいです。

 そして、変なオークさんは私達に向かって手を出してきます。

 怖くてビックリしてぎゅってなっていると、頭に触れるものがありました。


 目を開けてみると、変なオークさんは私達の頭を優しく撫でてくれています。

 本当に優しく撫でてくれて、パパを思い出しました。

 エリラも怖がっているけど、撫でてもらって嬉しそうです。


 私達を優しく撫で続けてくれる変なオークさんの目を見ます。

 この変なオークさんの目はとても綺麗です。

 私達を見る目がとても優しくて、ママを思い出します。

 パパとママを思い出してくれる変なオークさん。

 オークなのに怖くなくなって、変なオークさんをジーと見てしまいました。


『て、照れるな…』


 目を逸らされました。

 フフ…なんか可愛らしいオークさんです。


『さあ、逃げるんだよ』


 変なオークさんは離れて行きます。

 変なオークさんはオークと喧嘩するみたいです。

 逃げなさいと言ってくれたけど、私達は喧嘩を見るのも逃げるのも怖いのです。

 だからまた2人で抱き合ってじっとします。

 変なオークさんが一緒に逃げてくれるのがいいなって思って。


 じっと待っている間も怖い声がいっぱい聞こえます。

 喧嘩は凄いみたいです。

 怖い音がいっぱいします。

 だからじっと待っています。

 じっと待っていたらまた優しく撫でてくれるかなって。


 いっぱい待っていると誰かがこっちに来ます。


『逃げなかったのか…』


 変なオークさんが来てくれました。


『全部終わったよ?大丈夫。怪我はない?そういや逃げないとね~ほら、おいで俺がちゃんと送るからね』


 そういって、また優しく頭を撫でてくれます。

 私は怖かった思いがいっぱい思い出せてまた怖くなって変なオークさんにしがみ付きました。


『おっと、大丈夫かい?』


 しがみ付いた私を抱きしめてくれます。

 ママがしてくれたように優しい気持ちがいっぱいいっぱいです。

 妹も同じように抱きしめてくれます。

 この変なオークさんは本物です。

 優しい本物のオークさんです。

 私達を助けてくれるオークさんです。


 私達が泣き止むと、抱っこして逃げる準備をしてくれます。

 檻のほうに行って、大人の人を助けるみたいです。


『ごめんね、この格子ドアを開けたいからちょっとだけ降りてくれる?』


 檻の前で急に変なオークさんが言います。

 でも、私達は降りたくないです。

 まだ怖い。

 見えないようにしてくれているけど、いっぱい怖いものがあります。

 だから離れたくないので首にしがみ付きました。


『ちょっと、どゆこと?』


 驚いているみたいですが、私達を降ろすのを止めてくれました。

 そして抱っこし直して、優しく揺らしてくれます。

 抱っこされて揺れているととても気持ちよくて、怖い思いがちょっとなくなっていきました。


 それから…

 変なオークさんに連れられて逃げました。

 とても優しくしてくれて、私達は眠くなります。

 タライの中は私達のベットだそうです。

 なんだか冒険みたいで楽しくなってきます。

 エリラと一緒にタライで移動していると、目が閉じてきます。

 エリラはもう寝ているみたいです。

 私ももう目が塞がります。


 変なオークさんありがとう。

 お礼を言いたいけどまだ声が上手く出せません。

 明日にはお礼が言えるかな~

 私はとうとう寝てしまいました。

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