聖獣様は、内緒でルビィディアの元婚約者にお仕置き実行する。
次回更新は6月28日です。
ニワトリ聖獣様の取り扱いと昔話を夕方遅くまで聞かされました。今まで受けたお説教より酷いニワトリ聖獣様の行いを聞いて目眩がしそうです。
「ルビィディア様、分かりましたでしょうか。聖獣様の扱いは神経を使うのです」
「……それは、一歩間違えれば被害が止まらないと言う訳なのですね」
ああ〜!胃が痛くなりそう!大神官様の頷く姿に、聖獣様の取り扱いは難しいのだと……痛感しました。
お話を聞いていたルビィディアは半分しか理解していませんが、ニワトリ聖獣様は契約者の婚約破棄には敏感です。
兎にも角にも、女王様が刷り込んだお仕置きは小さな脳みそに焼き付いているのですから、油断すれば大火事になると言う事を、イマイチ分かってないルビィディアでした。
「はい、特に炎の翼と呼ばれる聖獣様は短絡的に行動なさるので、制御が難しいと言われております」
大神官様が、ものすご〜く疲れた様な顔で言われました。
炎の翼、それは、大神官に教えられる聖獣様の災害級順位一位を掲げる者、いいや、ルビィディア嬢の父親の伯爵と、同じ様に厄介だと大神官様は考えて、ニワトリ聖獣様の被害から遠ざけなければ自分の身が危ないと真剣にルビィディア嬢に、危険を避ける様に言い聞かせてます。
「どうしたらいいでしょうか?」
大神官様の真剣さに、凶悪犯と同居!運がない!どこかに運落として迷子になっています、誰か拾って届けてください!心の中でそう思いながら下を向いてました。そんな状態の私に上から声が掛けられました。
「契約者である、ルビィディア様には、この国に限らず、全ての命運が握られていると言っていいでしょう。心健やかに幸せに生きる事だけが、契約者の努めだと言って過言ではないでしょうな」
え?私がトラブルに巻き込まれてしまえば、周りが困る?って言うかやばい⁉︎平凡生活に向けての野望が頓挫する?せっかく悪役令嬢の演技までして頑張ってるのに〜。
大神官様の言葉に、愕然となってしまった私に追い打ちを掛けるニワトリ聖獣様!
「噂を聞いたぞ!コケー、前に婚約破棄したコケー」
「契約前だけど許せないコケー!丸ハゲコケ?」
聖獣様ー!どこから話を聞いてきたんですかー!いくら何でも丸ハゲ王子は可哀想なのでやめて下さい。
「む、昔の事なので、きききにしてません!」
否定してるのに、ニワトリ聖獣様の目は鋭く細められています。
「ん?そうコケー?婚約破棄はお仕置きコケー!女王様が言ってたコケー」
「お仕置きは常識コケー!女王様は絶対コケー!」
元婚約者の第二王子にハゲのお仕置きは常識だと言ってますが、違いますよ聖獣様!
憑依している私は何とも思ってないですが、聖獣様の女王様は許してもらえない事柄の様です。
「せ、聖獣様、契約者のルビィディア様が許しているのですから……」
大神官様の王子へのフォローが入りました!大神官様ありがとう!私もお話に聞いた丸ハゲ事件は、経験したくないです。
「そうです!聖獣様、私、気にしてません!」
拳にグッと力を入れて聖獣様に言いました。
「むっ、契約者が言う事は聞くコケー」
「女王様、契約者の意見を聞くコケー、約束コケー」
昔、聖獣様は女王様と約束していた様です。丸ハゲと焼け野原は見たくないので助かります。ほっと息を付いて安心したルビィディアでした。
「ほっ、ありがとうございます聖獣様」
私がお礼を言うと、聖獣様たちは隅に走って行きました。2匹でコケーコケーと小さい声で話してます。
「お仕置きは、我慢できないコケー。頭は目立つぞコケー」
「首から下を丸ハゲコケー」
「おお〜!完璧コケー!分からないコケー」
お仕置きを我慢できない聖獣様は、目立つ頭を避けて、首から下を丸ハゲにしたのでした。契約者の言う事は聞いて頭の丸ハゲはやめたので、いいと思った聖獣様たちです。
首から下を丸ハゲのお仕置きをされた王子は、トイレに入った時気が付きました。
「んっ?はあ?ぎゃああああーっ!」
「王子!大丈夫ですか!!」
第二王子の叫び声にびっくりした近衛騎士が駆け付けました。
しかし、王子は秘密を知られるのを嫌がり近衛騎士を下がらせます。
「な、な、何でもない!!入るな!」
「しかし、大声で叫ばれたので……大事ないでしょうか?」
大声を出せば、いったい何があったのか心配になるのは当然です。扉の前に立っていた騎士が中に来そうでハラハラした王子です。
「わ、私の勘違いだ。心配かけたすまない」
「それなら良いのですが……本当に大丈夫ですか?」
見られる訳にはいかない王子は、必死に冷静な声を出して誤魔化します。
「ああ、大丈夫だ。下がって良い」
遠ざかる近衛騎士に安堵し、自身の身体を見ます、何度見てもないのでした。
「……ははは……ない…一本も…つるつるだ……病気か?生えてくるんだろうか?」
首から下を、丸ハゲにされた元婚約者の第二王子ですが、表面上は痛くも痒くもない為、病気で抜けてしまったと勘違いし、恥ずかしいので誰にも言えず発覚するまで時間が掛かったのでした。
それを、ルビィディアたちが知るのはだいぶ先の事でした。
ルビィディア「悪役令嬢頑張ってるのに〜、ニワトリ聖獣様に阻止されそう」
フラン「お嬢様、ニワトリ聖獣様の性格は矯正不可能の様です」
ルビィディア「丸ハゲは阻止できたわ」
フラン「ふっ、知らぬはお嬢様たちだけだと」
ルビィディア「え?何?」
聖獣様「何も知らないコケー」
聖獣様「言う事を聞く良い子だコケー」
ルビィディア「……良い子、良い子のイメージが壊れる!!」
フラン「お嬢様、現実は厳しいものですね」




