番外編、聖獣様の、焼け野原事件に巻き込まれた王子のおまけ。聖獣女王様はニワトリたちに迷惑をかけられる。
これで、この番外編は終わり、次回から本編に戻ります。次回更新は6月21日です。
神様が御使の役目をさせる為に作った世界、この場所は聖獣様のいる楽園。12の聖獣様の頂点に立つ方たちがこの世界を治めているのです。それは、とても美しい場所。聖獣様たちが住んでる大きな城がこの世界の中心にあり、その周りを高い城壁で守られ、城下には聖獣様に仕える者たちが街を作り暮らしている。
一族の中に、聖獣と呼ばれる種が生まれる。その者たちは、この聖獣楽園と呼ばれる場所に来て、力の使い方を聖獣学園に入り学ぶ。そうしないと、世界を滅ぼす危険があるからだ。
そして、今、聖獣様の頂点に長くいるのは、チュウ族と言われる一族に生まれた聖獣様、チェルシー聖獣女王様です。力の強い聖獣は基本、両親が強い聖獣である事が多いが偶に、強さのランクとは別に、一般の田舎の一族から生まれる聖獣が学園に来る事がある。その者たちは常識知らずが多いのが特徴だ。ニワトリたちもその常識知らずに当たる。
「聖獣女王様!大変です。また、ニワトリがやらかしましたー!」
「何ですってえええええーっ!あのトリ頭が何をしでかしたのおおおおおーっ!」
女王様の執務室に飛び込んで来たのは、女王様の侍女長クルルです。女王様が頭を抑えながら叫びました。
そうです、度々問題を起こすニワトリに、聖獣女王様は普段からよく悩まされてました。ここ暫くの間静かにして居たので、油断していた。
「契約者が願ってない事を、しでかしましたー!教会で泣きながら、祈ってる声が聞こえてきました」
そう、契約者たちの声は、教会の神殿で祈れば聖獣様の世界に届くのです。感謝の祈りは聖獣様の世界と神の力の元になるのでした。
城の中には大聖堂と呼ばれる場所があり、下位世界からの祈りと聖獣様を崇拝する気が送られて来るのでした。
その聖堂を守って管理している者たちが、聖獣様の契約者の声を報せて来るのでした。
この頃穏やかに過ごしてきたのにと、女王様は怒りを露わにします。
「何をやったの?トリども!契約者は居ないはずでしょう!」
ニワトリの凶暴さと、身勝手さに、契約者となる者たちが敬遠して、契約語となるワードを唱える者は、ここ最近では居なかった筈では。
「それが……いつも居た島を出まして、よその国で契約者を作りました。契約者の元婚約者をハゲに、もう1人の領地を丸焼けにしましたー!」
まさか、島を出ようとする知恵があるとは女王様は驚いています。実際は、その島の住人に贈り物として連れて行かれたとは知らない女王様でした。
「ハゲ?罰がハゲとは……もしかして!」
「そうです!女王様に、前に罰でニワトリ達の頭の毛をむしった事があったでしょう、だから真似をしたのだと思います」
「あの子達の悪戯の罰を参考に……私がしたお仕置きを真似したと?」
聖獣女王様はその事実に呆然としてしまいました。
「ええ、多分。トリ頭ですから間違いなくそうです」
「……け、契約者は何と言ってるのかしら?」
聖堂に響いた声を皆が聞いてる筈、ニワトリ聖獣様の悪い噂がまた増えたのです。
「自分の意見を聞いて欲しいと願っています」
教会で、必死に祈る契約者の姿がありました。元々、お互いに好きな相手ができたら円満に別れる事が決まってたのにも関わらず、王妃様の誕生会の最中にわざわざ婚約破棄を宣言しました。
おバカな元婚約者の王子も悪いのですが、問答無用でハゲにされた王子の姿に驚き、契約者と婚約する筈だった男もそれを見て腰が引けて、話しをなかった事にされたのを聞いたニワトリたちが、男の領地を丸焼けにしてしまった。
良心の呵責に耐え切れなかった契約者が、教会の聖堂に篭り一晩中懺悔をしていたのでした。
「分かりました。あの子たちの中に夢渡りします。ちゃ〜んと言い聞かせましょう、ふふふ見てなさい!」
女王様、その姿はネズミに似ているが、身長170センチスレンダーな体型で赤いドレスがよく似合い、頭の上の小さな王冠が可愛い聖獣の女王様だ。
契約者に、ニワトリたちが迷惑をかけていると聞いて、お仕置きをしなければと女王様は決めた。
やはり、普段のお仕置きが甘かったのか、と女王様は考えた。
今度こそ、そのトリ頭に、たたき込まなければ、と握り拳を作り決意した。
契約者の部屋にあるクッションで寝ているニワトリ聖獣様。まさか、お仕置きをする為に女王様が夢渡りをして来るとは思ってなく、だらしなく涎を流しながら足を広げて2匹で仰向けに寝ていた。
「この!おバカ者!起きなさああああい!また、契約者に迷惑をかけたそうね」
低い声で女王様が威圧を放ちながら話した。
「ひっ!女王様!どどどどしてここに!コケー!」
「ひやあああーっ!女王様〜ごめんなさーい!コケー!」
いきなり現れた女王様に、ニワトリたちは驚き土下座ポーズをしてとにかく謝ってます。
「あなた達!契約者を泣かせるとは!何をやっているの!!契約者の意思を確かめなさい、といつも言ってるでしょう!分かりましたか!」
「……でも、女王様、浮気者は問答無用と言ってたコケー!」
土下座しながら、羽根の隙間から女王様を見て、言い訳を話すニワトリたちに女王様のこめかみの血管がピキリ!と浮かびます。
「う、浮気者は制裁よー!って女王様言ってたコケー!」
自分たちは悪くないと、女王様と一緒だと言い張ります。しかし、その言葉を聞いた女王様の怒りは頂点に達しました。
そう、女王様は、昔恋人に浮気されて、びんたと爪痕を付け、雷を問答無用で叩き込んだのでした。
「ランク様〜、チェルシー様より私と結婚しましょう〜。好きって言ってくれたでしょう」
「チェルシーは親が決めた婚約者で僕の好みじゃない。でも、怖くて断れないんだ」
女王様の婚約者ランク様は、巨乳美女と抱き合っていたのです。それを見たチェルシー様はあまりの怒りにかられ、捨て台詞とともに一発叩き込んだのです。その後、もう片方の手の爪を出して引っ掻きました。
「ランク!この浮気者!貴方とは婚約破棄よ!」バチィイン!!シャキン!!
ピカッ!ゴロゴロ〜バシィィイン!!
「……ゴフッ!」
雷で黒こげの頭の毛が風に吹かれてなくなった。聖獣たちはこれくらいでは死なないが、ダメージは大きかった。
「きゃああああああーっ!私は無関係よ!!」
ランクの、その姿を見た巨乳美女は怖くなり、走って逃げて行きました。
それを、小さなひよこだった頃目撃した、ニワトリたちの頭に焼き付いていたようです。
「きょわー!ぴよー!もえもえ!つめつめ〜!あとぴよ!」
「きゃみなりまるこげ!きょわー!ぴよー!ぶるぶるぴよ!」
刷り込みされたニワトリ聖獣様は丸焼けと爪痕とハゲは、最強のお仕置きだと思い込みました。
女王様は今まで知らなかったが、ニワトリたちが契約者ができる度に、守る時に使った技が、主にハゲと丸焼け足型お仕置きだったのです。
今回は契約者があまりの酷さに教会の聖堂で祈って事が発覚したのでした。
「時と場合によるのです!契約者の望みが第1です!しっかり訪ねなさい!」
拳がぷるぷる震え、息も切れぎれになりながら女王様が叫びました。
まさか、本当に自分を真似ていたとは……居た堪れない気持ちになった女王様です。
女王様はがっくりしました。
ああ〜!これが噂になれば、私の女王としての威厳も信頼もなくなるかもしれないわ。心の中で、みんなあの浮気者が悪いのよー!と思ったとか。
その後も、夢の中で懇々と説教して夢の中から去りました。説教の間中、雷の鞭がニワトリたちの足下をバチッ!バチッ!と叩きます。
ニワトリ達は、今度は契約者に聞いてから丸焼けやハゲにしようと決めました。
「……女王様、怖かった、ちびったコケー」
「……そうコケー、今度は聞いてから丸焼けよコケー」
いくら注意されても、少ない脳みそに刷り込まれたお仕置きの、丸焼けとハゲは無くならないのでした。
一度ある事は二度あると言います。女王様はニワトリたちが未来で、また島を出て契約者を作り、迷惑を掛けられる羽目になるとは、まだ知らない女王様でした。
聖獣様「昔話は懐かしー、コケー!」
聖獣様「女王様は、お仕置きの天才よーコケー」
ルビィディア「女王様、苦労してますね」
フラン「それよりもお嬢様、育ての親に似るとは本当ですね」
ルビィディア「しー、それを言っては女王様泣くと思うわ」
それを遠くで見ていた女王様は泣き崩れたのであった。ちゃんちゃん。




