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番外編、聖獣様の、焼け野原事件に巻き込まれた王子後編

後編にたどり着きました。次回更新は6月14日です。番外編のおまけになります。

隣国に向かって居るのだが、宿を取る度、暗殺者が次々やって来る。辞めて欲しい物だ。王妃の国の暗殺者が、沢山この国に入り込んで居るのも問題だ。


食事に毒を混ぜたり、街のゴロツキを嗾しかけたりと色々やってくる。鬱陶しい事この上ない。

捕まえて履かせてもいいのだが、捕まった暗殺者は直ぐ命を絶ってしまう。殺される気は全くないので、無駄な事をしているとしか思えないな。


しかし、宿でおちおち寝ても居られないとは、きついな。


「エルドラド殿下!大丈夫ですか。こちらは片付けました」


この男ラインゼルは私の小さい頃からの学友で友だ。侯爵家の嫡男だが私の近衛隊長になった時に、侯爵家の迷惑にならない様に後継を弟に譲っている。


王妃の嫌がらせ対策だ。後継を外れる事で、弟や妹たちに害が及ぶのを止めやすくなる。迷惑をかけている間はあるが、ラインゼルに代わる人間はいない。


信用できないのもあるが、下手に貴族との繋がりを作ると、王妃の喚起に触れ、母への攻撃が酷くなるからだった。


国の学院にいる時は良かったが、卒業すると付き合いを絶っている。気の毒だと思っている人たちも多く居るのだが、王妃のやり口が酷いので仕方なかった。


私の近衛は第2隊だ。第1は弟の近衛になる、隊長は王妃の後押しをしているカドーワキ侯爵嫡男のクロイだ。弟を煽てて、いい様に動かしているからタチが悪い男でもある。



「ああ、大丈夫だ。1人逃げられたが、傷が深いので助からないだろう」


「隊長、近衛第2隊全員戻りました。暗殺者達の遺体は町の警備隊に渡しました」


残りの雑務を片付けて隊の残りの人員が宿に戻って来た。


「ご苦労、明日も早い、もう休むといい」


「はい、エルドラド殿下、隊長、侍従殿、失礼します」


「凝りませんね、王妃様も。いい加減自分の息子が劣ってる事に気付きませんか?」


「母親だから、盲目に信じているのだろう。自分の息子は素晴らしいと」


「だからと言って、エルドラド殿下を殺そうとするのはダメだと思うんですが」


「目障りだと思ってるからだろうな。母も私も王位が素晴らしいとは思ってない、むしろ、父上の苦労を見ていると積極的になろうとは考えてなかったが、弟があれではな」


「エルドラド殿下、聖獣様の契約者の婚約者になるのでしたら、王位を継承なさった方が無駄なトラブルを引き起こさないですよ」


「そうだな、あの弟では聖獣様を怒らせて、国土を焼け野原にされるのは勘弁願いたい」


「そうですよ、殿下。聖獣様の情報を殿下に言われて教会で調べて来ましたけど……あの聖獣様は危険です」


「問題あるのか?いや、焼け野原を作るほどだから、危ないか」


「いいえ、それだけではありません。調べた結果、昔の契約者と婚約破棄した王子の城が蒸し焼きにされました。幸い怪我人は出ませんでしたが、なぜか吹き出物が身体中にできて半年ほど痒みに、痕がれるまで一年程かかって、城にいる全員が悩まされたようです」


「それは、地味に嫌だな。それに、母たちに嫌がられそうだ」


「そうですね、そんな事になったらミリアに怒られます」


「女の人には嫌がられるな。王位継承はエルドラド殿下にお願いします」


「努力するよ」


そう言うと、ほっとした2人がいる。婚約者が、私の母付きの侍女をしているからだ。気の強い、2人の婚約者がそんな事になれば黙っていないだろう。


「聖獣様の契約者、これは別の人の時ですが、契約者を侮辱した全員がピロリン毛一本だけ残してハゲにされたそうですよ、一生一本だけだったそうです」


「はあ!それは……私もなりたくないな」


「私だって嫌ですよ」


「って、事で、隣国に行った際には、言動には注意してください。お願いします」


「分かった。調べてくれてありがとう」


「それと、これは(おおや)けになっていませんが、隣国の王子ハゲにされてるそうですよ」


本当に気をつけなければ、小さな綻びが大事に至りそうだ。


「私も気をつけよう。丸焼けもハゲも遠慮したい」



数人の暗殺者を片付けて、お付きの騎士と侍従と話していたら、細いナイフのような物が飛んで来た。


「危ない!避けて!」ドン!


キーン!キン!キン!キン!ボトッ!カコーン!グサッグサッ!


「エルドラド殿下!大丈夫ですか!」


侍従につきとばされた。お付きの騎士が剣で弾き、細いナイフのような物が足下に、落ちたり、飛んで行ったり、刺さったりした。


外に控えていた騎士たちも飛び込んで来た。


「エルドラド殿下!隊長!何かあったのですか!」


「賊だ!逃げられた。今は深追いしなくていい。外を注意していてくれ」


「はい、分かりました」



「……うっ!」


助かったが、突き飛ばされた時、顏を撃ってしまった。咄嗟で手加減できなかったのは分かるが、地味に痛いぞ。周りには何でもない風を装った。


「ふう、ありがとう。危なかったな、落ちた物は素手で触らない方がいい。多分、毒が塗ってありそうだ」


落ちた細いナイフような物を見たら、王妃の私に対する毒が見えそうだ。


「はあーっ、気が抜く暇もないですね、殿下。でも、今夜はもう来ないでしょうから寝た方がいいですね」



諦めて戻って来ないだろう、と皆寝る事にした。警備を交代でしながら、次の朝早めに出発して隣国の王都に向かった。


その後も、妨害は色々あったが無事王都に着いた。急いで、王城門まで行き門番に自分の身分を言い国王に謁見をしたい旨を話した。


「私はガーデン国第1王子エルドラド・ガーデンだ。カーデン国王からの信書を持って来た、国王に謁見願いたい」


普通なら馬車から出ず、侍従のキイトに頼むのだが、一刻を争う事案だ。私が直接言った方が早く会ってもらえる可能性がある。


「ガーデン国王子様、分かりました、上の者に報告して来ます。暫くお持ちください」


門番の1人が中の方に向かって走って行った。


「殿下、今日会えるでしょうか?」


「会ってくれるのを願うだけだ」


「しかし、契約者の令嬢は国王に知らせてくれているですよね殿下」


「ああ、ルリア嬢には国境で別れる時に頼んでおいたが、それが叶ったかは確認していないから定かでない」


馬車で待っていると、周りが騒がしくなって、叫び声が聞こえた。


「聖獣様ああああーっ!お待ちください!勝手に外に出られては困ります!」


長い回廊を騎士たちがニワトリ聖獣様の後を追っていた。


「俺様の邪魔はするなコケー!証の力を感じたので調べるコケー」


「邪魔〜コケー!焼印蹴り入れるわよ!コケー」


あの声は聖獣様だ。少し物騒な事を言ってる。外へ出て出迎えるか。


「エルドラド殿下、今の声聖獣様でしたよ。殿下が来たのが分かったのでしょうか?」


「そうみたいだな」


ニワトリ聖獣様にもらった証が微かに光を放ってた。


「殿下、聖獣様、物騒な事言ってましたね。騒がしい所に聖獣様ありですか」


ラインゼルが彼らも大変だなと言った。騒々しい声とコケー、コケー、と聞こえる。本当の大変だな、と今からの事を思うと気が重い。


「見つけたー!コケー!婿コケー」


「間違いないわ〜コケー、王子よコケー」


てってってってっと、走って来たニワトリ聖獣様が私の周りをぐるぐる回る。

それも、片足を上げてくるくる回りコケー、コケー、と踊ってる。


「聖獣様、お願いいたします!勝手に走り周るのはご遠慮ください」


「聖獣様、侯爵令嬢ルリア様がお待ちになってます。お部屋にお戻りください」


どうしたものかと思ってると、聖獣様付き騎士とは別の数人近衛騎士がやって来た。



「お待たせ致しました。エルドラド殿下、陛下がお会いになるそうです。こちらから、どうぞ」


「ありがとうございます。ご配慮感謝します」


「聖獣様、陛下が待っておられます。ご一緒にお願いいたします」


私を迎えに来た近衛騎士と謁見の間について行った。ルリア嬢が話してるらしいな。ニワトリ聖獣様も一緒だと言う事は、心を引き締めてこれからの話を決めなければ。失敗は許されない。呑気な聖獣様は私たちの後をついて来て、コケーコケーと話しかけてくる。


「早く行くコケー!待たせるなコケー」


「そうよ、レディーを待たせるのは男の恥よーコケー」


ニワトリ聖獣様にとっては、私が来るのが遅いと感じたようだ。空を飛べないニワトリ聖獣様と一緒で、どんなに急いでも王都までは遠かったのですよ、分かってますか?聖獣様。

かと言って、機嫌を損ねるのも得策ではない。


「聖獣様、申し訳ございませんでした。契約者であるルリア嬢に指輪をと思い少し時間がかかってしまい、すみません」


一応の言い訳にはなるだろうが、聖獣様が納得してくれればいいが。


「光り物か!ぴかぴか凄いぞーコケー!」


「女王様も喜んだ指輪コケー!見たいコケー、うらやまし〜コケー!」

光り物は好きらしい。鳥は好きと聞いた事があるが、聖獣様もか、ちょこまか動く聖獣様の場所特定魔法具を作って持って来たが、付ける事ができそうだ。


指輪に興味津々の聖獣様、見せて欲しいらしいが、婚約指輪なのでルリア嬢が先である、そこは分かってもらえるだろうか?


「聖獣様、陛下とルリア様が謁見の間にいらっしゃいます。そこで頼んで見ては」


近衛騎士たちの助言にニワトリ聖獣様のテンションは上がる。


「いい考えだコケー!走れ!コケー!」


「急ぐのよコケー!女は待てないコケー」


訳の分からない事を言いだして、後ろから嘴で突いてくる聖獣様に困ったので、皆急ぎ足で歩いた。長い廊下と入り組んだ場所を通り抜け、通常の通路で通らなかった私たちは謁見の間に短い時間で着いた。


「陛下、ガーデン国王子、エルドラド殿下をお連れしました」


「うむ、入れ」


扉の前の騎士たちが開けてくれたドアを通ると、豪奢な椅子に座るこの国の王がいた。そこから二歩下がった場所にこの国の重鎮らしき人物と聖獣様の契約者のルリア嬢がいた。


私は決められた位置まで足を進め、王に挨拶をした。


「この度は、無理を聞いてくださってありがとうございます。ガーデン国王子エルドラドにごさいます。我が国王より信書を預かって参りました」


話した間も、私の周りをぐるぐるしていた聖獣様は我慢できず、大声で文句を言い出した。


「そんな事はいいコケー!早く指輪をやるコケー!」


「そうよ!コケー!難しい話は分からないコケー!それより指輪コケー!早くしなさいコケー!」


聖獣様に大声で言われて、困惑気味の一同を睨みつけ、早くする様にコケーコケー言っている。


「俺様の言うこと聞くコケー!」


「何をしているの!丸焼けコケー!」


「聖獣様〜!大人しくしてください!」


契約者であるルリア嬢が涙目で聖獣様たちを静かにさせようと頑張っているが効果はない。


丸焼けと言われて、焦った陛下が丁寧になだめる言葉を言うと、聖獣様が喜んで加護を掛けた。


「分かりました聖獣様。どうぞ好きな様になさってください」


「俺様の話が分かるコケー!加護をやるコケー!」


聖獣様が言うと陛下の頭が光、薄かった頭がキラキラのサラサラヘアーに早変わりした。


「おお〜!ストレスで抜けた我の頭が昔の様に!」


「凄いぞ!陛下の髪が若い頃に戻ってる!」


「あああー!羨ましいー!」



喜ぶ陛下を見た重鎮たち全員が、聖獣様に頼み込んだ。


「「「「聖獣様!私たちにも希望の光を!お願いいたします!」」」」


凄いと言われて気分が良くなったニワトリ聖獣様。おまけよー!と全員に加護をかける。


「私たちの凄さが分かった!おまけよー、コケー」


「偉い俺様の力は子孫もハゲないコケー!」


そう、聖獣様の力は言うまでもなく凄かった。謁見の間にいた者たちは知らなかったが、ニワトリ聖獣様が子孫も、って掛けた加護はその瞬間に陛下、重鎮の子供たち全員にも恩恵をもたらしたのだった。


「!!サイル殿下!殿下の髪がふさふさになってます!」


「ガル!お前の髪もだ!奇跡だ……神よ感謝します」


聖獣様と契約者の侯爵令嬢の事件で、多大な苦労をしているこの国の皇太子殿下とその侍従の髪は、ストレスと家系による遺伝に悩まされ、その薄い髪を日々散らしていた。それが淡い光を感じた途端にふさふさになったのだ。涙を流して喜ぶ2人であった。


「周りのハゲは治ったが、私は罰を受けたので戻らなかったな」


「……殿下」


ニワトリ聖獣様は忘れていたが、契約者の元婚約者のハゲだけは治らなかった。掛け直しの加護も通じなかったのである。ニワトリ聖獣様は気付いていなかったが、ひよこ時代に刻まれたある記憶により浮気者には制裁をが効いている、加護も避ける凄さである。


他の者たち、ハゲの家系で心配していた多く人の信仰が ニワトリ聖獣様に集まった。


「「「「聖獣様、ありがとうございました」」」」


お礼を言う重鎮たち、皆嬉しそうだ。


「さあ早く指輪だコケー!」


「ルリアに付けるコケー!」


急がせるニワトリ聖獣様に観念したエルドラド殿下はルリア嬢の前に進み出た。


「ルリア嬢、貴女を愛すると誓います。私の妻になってください」


「……あ!……はい」


片膝を付きルリア嬢の手を取りお願いした。もちろん、素早く指輪をはめて断られない様にしたのだ。指輪を見た、ニワトリ聖獣様のテンションが上がりだした。


「おお〜ぴかぴかコケー!」


「き、きききれ〜い!コケー!私も欲しいコケー!」



足下に来たニワトリ聖獣様に持って来た首輪タイプの中心に小ぶりの宝石を付けた物を出した。


「聖獣様にも持って来ております。宜しかったらお納めください」


キラキラした目で見てくるニワトリ聖獣様に首輪をはめた。黒いベルトに紅い宝石がついている。魔道具になってると知らない聖獣様、位置を知らせる機能が付いている。


「ほおおお〜っ!凄いコケー!」


「きゃああーっ!きれいコケー!私の宝石コケー!」


光り物の宝石を気に入ったニワトリ聖獣様だった。


「うむ、聖獣様が決められた2人の結婚を認めよう。 これからも、友好国として仲良くしたいものだ」


「陛下、ありがとうございます。聖獣様に証を頂いた私は皇太子と成りました。ルリア嬢には、我が国の皇太子妃として来ていただきます」


それまで黙っていた重鎮の1人彼女の父親が目を見開いた。


決まったのは国をでる数時間前なので、この国まで、まだ、私がガーデン国を継ぐ事は知られていないはずだ。皆の驚く顔が見える。


「おお!後の王妃は素晴らしい。ルリア嬢、息子の事はすまなかったな。エルドラド殿下と幸せになってくれ、それで良いな侯爵」


「はい、陛下。エルドラド殿下、娘をよろしく頼みます」


少し寂しそうな顔をしたが、真剣な目で彼女の父親の侯爵が言った。


「はい、必ず幸せにします」


色々な日程をルリア嬢と侯爵と決め、国に帰国した。結婚式までに障害になる王妃と弟を、私の暗殺の証拠を作り、王妃は塔に幽閉、弟は廃嫡となり王妃とは別の場所に幽閉された。


王妃の祖国は証拠がある為、表立って何かを言ってくる事はなかった。


2人には私の結婚式が終わったら、安らかに眠って頂こう。国が焦土になるのを防ぐ為、尊い犠牲になって貰うしかない。


私の暗殺を手伝っていたカドーワキ侯爵は、息子共々牢に入り、爵位と領民没収され、一時王家預かりと成り、領民を苦しめていた悪政は廃止されて、穏やかな暮らしを始めている。彼らの処分も結婚式の後だ。


焼け野原事件から、聖獣様の契約者であるルリア嬢と知り合えて結婚でき、お陰で両親を幸せにできた。暗殺者が多くいて外に出ることができなかった母親も、今では王城内を自由でき王である父上を助け優しき王妃となり善政が敷かれている。


聖獣様と知り合えて私は幸せになれそうだ。一目見たときに気になったルリア嬢を手に入れられた。上手く聖獣様と付き合いながらこの国を正しく治めていこう。

















ルビィディア「終わった。次回から私の出番?」


フラン「お嬢様、もう1話おまけがあるそうです」


ルビィディア「おまけ?内容は?」


フラン「聖獣様の秘密のようです」


ルビィディア「秘密って何かしら?」


フラン「聖獣様の女王様が出るとだけ聞いています。それ以上はおまけを読んでくださいと作者が言ってました」

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