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番外編・聖獣様の焼け野原事件に巻き込まれた王子中編その2

すみません。終わる筈が、書いていたら終わらなくなって後編までいきませんでした。次回は後編、おまけが終わったら本編に戻ります。無茶振りな作者でごめんなさい。

書き忘れてました、次回更新は6月7日です。

私は急いで王都に向かった。侯爵令嬢と聖獣様との話を決めて遅くなった。王都に着くのは朝になりそうだ。父上に婚約者が出来たと知らせなければならない。


聖獣様の契約者との婚約を聖獣様本人に示唆された事。約束を違えれば国ごと丸焼けにすると言われたと、国のトップである父上にこれからの事を相談して決めなければ。


「エルドラド殿下、大変な事になりましたね。聖獣様が味方につけば国内の勢力図が変わりますよ」


「あの王妃のやり口は、元王家の姫にしては汚いものです。侯爵令嬢だった殿下のお母上の方がよっぽど姫らしい」


お付きにの騎士と侍従が言った。まあ、見た目が儚そうな母と、気の強そうできつい物言いの王妃では周りの評価も、受け答えさえ差が出て、王城の使用人の間でも有名だ。それに、昔から嫌がらせをして来る王妃に、2人は怒っていた。迷惑を被っていたのもあるが。


「どちらにしても陛下に相談してからだ。2人とも一緒に来てくれ」


聖獣の契約者との事を話す為に、謁見の間に急いで行った。伝令を先に飛ばしておいたので、直ぐに会うことができ、話し合いが行われた。



「陛下、ただいま戻りました」


「うむ、それで急ぎの話とは?そなたの申す通りに重鎮らを集めておいたが」


この大事な話をする為に父上に頼んでおいたのだ。内容は書いていなかったが、集めておいてくれたのには感謝しかない。


「陛下、発言してもよろしいでしょうか?」


重鎮の1人、大臣のカドーワキ侯爵が私を見ている。何か言いたいようだ。この男は王妃に通じている、何時も父上の政策や発言に難癖をつけてくると聞いている。



「うむ、よかろう」


「エルドラド殿下、此度は陛下が私たちに重要な話があると聞きましたが、それは昨日の火柱に付いてですか?」


周りの視線が私に集まった。そうだろうな、朝早く呼び出されて機嫌が悪そうだ。


「それもあるが、それよりも重要な話だ」


私はわざと辛そうな態度をして重々しく話し出した。


「あのすざましい火柱の原因よりも重要ですか?」


怪訝な顔をしたカドーワキ侯爵に頷いて、周りの重鎮たちの顔を見ながら話しを続けた。


「まず、火柱の原因は聖獣様の制裁です。契約者を侮辱した罪だそうです」


聖獣様、この世界で知性を持ち、神の使いだとも言われている。それに契約者となった国に恩恵をもたらすと。だが、反対に契約者を傷付ける物には容赦ない制裁が落ちると言われている。


今まで聖獣様の契約者になった人は綺麗な心を持った者に限られていた。悪意を持ちは聖獣様の好みに合わない、と教会の聖典に書かれている。


「なんですと!聖獣様が現れたのですか!」


重鎮たち全員が驚いていた。聖獣持ちの国の、国力が増すのは歴史の史実に現れている事実だ。隣国との関係悪化を招くのは得策ではない。


「それは、新情報です。聖獣様は契約者を守り、国に守護を与えると言われているが、本当ですか!」


外交を任されているランダム伯爵が悲鳴をあげた。分からないでもない、情報通だと言われている伯爵にその話が来ていないのだから、焦るのは無理もない。


「エルドラド殿下!聖獣様の制裁が火柱だとすると、それよりも重要な事とは何ですか!教えてください!」


宰相が、聖獣様の制裁よりも大事な事を知りたいと焦って次の言葉を急がせる。周りの重鎮たちも聞きたそうに私をみた。緊張した空間で息も止まる静寂の中で、父の視線で促され続きを話した。


「聖獣様に、契約者の婚約者に指名されました」


「「「「「⁉︎………」」」」」


驚くと言葉が出ないと言うのは本当だった。息を飲む声が聞こえたかと思ったら、怒涛のごとく質問された。


「本当なのですか殿下!」


「聖獣様の契約者は、隣国の貴族の令嬢ですか?」


「加護は!加護は、この国にも貰えますか?」


「聖獣様の指名は断れないな、エルドラド婿に行くのか?それとも、この国に嫁いで来られるのか聞いているか?」


宰相や大臣の質問のあと、父上が聞いてきた事に答えた。


「嫁いで来てくれるそうです。婚約破棄はありえません。もしそうなれば……この国ごと丸焼けにするそうです」


周りの重鎮たちを見ながら言った言葉に全員が固まりました。


「じ、冗談は言わないでください殿下。たちが悪いですよ」


大臣の1人が言うが、私は首を横に振った。それを見た全員が恐怖に震え出した。国境の様子を、一緒に行った騎士の1人に証人として話してもらった。


「嘘じゃありません。私と共に行った者も見て聞いております。ジェット、皆に様子を話してくれ」


私の後ろに控えていたジェットが前に出て話をした。


「はい、エルドラド殿下。今、殿下が話された事は真実です。誓いの宣誓をしても構いません。聖獣様の言う事には、約束を破れば丸焼けだと叫んでおられました」


この世界の誓いは厳しい。宣誓して神に誓えば嘘は付けない。付けば、罪びとの身体中に荊の模様が浮かぶのだ。


「うむ、聖獣様の契約者の婚約者になったエルドラドには、次期王位を譲らねばなるまい」


「陛下!次期王位は正妃様の子であるオチルド様ではないのですか!」


カドーワキ侯爵が文句を言ってきたが、事は聖獣様に関わっているのだ。元々、私に後を継がせたいと思っている父にとっては、今度の事は都合のいい話のようだ。


「仕方あるまい、カドーワキ侯爵。聖獣様の機嫌を損ない、この国を火の海にするつもりか?」


陛下に言われて、しどろもどろになっている。普段の鬱憤を晴らす様に父はカドーワキ侯爵をやり込めたい様だ。


「い、いえ、そんなつもりはありません」


「そうですぞ、カドーワキ侯爵。あれ程の火柱を使い、領土全部を焼かれた隣国の、辺境伯の様にはなりたくないものですぞ」


宰相が首をふりふり、怖い事だ。あんな目にはあいたくないないものだぞ、と言って周囲の大臣たちを見ている。皆宰相の意見に頷いていた。


「エルドラド、これからどう動く?聖獣様は、直ぐこの国に来られるのか?」


「はい、契約者である侯爵令嬢と共にこの国に来られるのは間違いありません。準備をして、隣国に婚約の申し込みをして参ります」


「そうか、早めに動かねば機嫌を損ねるといけない。私も隣国の王に信書を書こう、届けてくれ」


「はい、陛下。急ぎ準備を済まして出立いたします」


「うむ、頼んだぞ」


私にそう言ってから、重鎮たちの顔を見て宣言した。


「皆の者、聖獣様に国を焼け野原にされない為にも、次期王位はエルドラドに決める。異論は無いな」


反論なく私が次期王位を受ける事になった。後から王妃が文句を言ってくるだろうが、聖獣様の意向に勝てるわけがない。母親に心配はかけたく無いが、しばらくは警護を強化しておく事も忘れない様にしなくては。


部屋に戻り、手に入れた宝石を指輪にしておいた物を出した。元々、いつか好きな人にあげたいと取っておいた物。


父上があまりの美しい宝石を見て、母親に贈りたいからくれないか?と聞かれたくらい珍しい物だった。運良く、修行の旅に出かけた時に手に入れた逸品だ。これなら彼女のイメージに合いそうだ。気に入ってくれるといいが。


あの、聖獣様に振り回されている彼女と一緒に、国を良い方向に持っていけるといいが。これからは、私も頑張るしかない。


そろそろ出かけるか、早い方がいいだろう。今度は王家の馬車で贈り物を積んでいかなければならない。その辺は侍従に頼んでおいたから大丈夫な筈だ。外に出る通路に急いで歩いていた。


「待てよ!いい気なものだ!次期王位をお前が継ぐ?私が正妃である母の子だ!何故だ!どんな手を使ったんだ!王位をかすめ取るとはあの女の子だけあるな!嫌らしく醜いな」


出かけようとした、私の肩を乱暴に掴み言いたい放題だ。誰から聞いたものやら、私に王位を継いで欲しく無い、カドーワキ侯爵辺りが教えたのだろう。


それに、母を侮辱した事を父上に知られれば、ただでさえ嫌われている自分たちの方が不利になると思うが……考えが浅いのか?弟の事は父上に任せるしかない。


「その話は陛下に聞いてくれないか?私には大事な用がある」


「ふん!、侯爵令嬢に婚姻を申し込むのだろう!王妃の血を引く私の方が、相応しい相手だ。お前は引っ込んでいろ!」


ふう、勝手ばかりを言うものだ。この弟に行かせたら、確実に怒らせて我が国の丸焼けは決定する。仕方ない、この手は使いたくなかったがしょうがない。


「オチルド、ゆっくり眠るといい。スリープ」


不意を突いてスリープを弟のオチルドに掛けた。1日眠るだけだから心配ないだろう。この場所なら誰かが見つけて部屋に連れて行ってくれる。諦めてくれ、隣国に来られてトラブルを起こされても困るのだから。




自身の身が危うくなるのを心配したカドーワキ侯爵は、オチルド殿下に王からの話を聞かせ、それから、王妃に知らせた。王位をエルドラド殿下に継がすと聞いた王妃は気が気でなく、陛下を部屋に呼び出していた。


普通なら、王を呼び出すなどできないものだが、大国の姫である事を棚に上げ、脅しともとれる言い方で、今まで好き勝手して来たのだ。


一方的に愛されないと愚痴をいい、夜の渡りさえ一度もない王に、やれ宝石をプレゼントしてとか、ドレスはどこそこの物がいいとか強請るだけで、王妃の仕事はあるが一切しなかった。


王妃付きの侍女が陛下を呼びに来た。この侍女もヨコドリ国から王妃について来た侍女なので、王妃の命令しか聞かず、例えこの国の高位の者にさえ態度が傲慢だ。


「陛下、王妃様がお呼びです。直ぐおいでください」


そう言ってさっさとドアの向こうに消えて行った。侍女が王に言う物言いではないが、嫁いで来た時からだ変わらない。だから王も、王妃も王妃に繋がる者を嫌っていた。


「宰相、済まないが行って来る。癇癪を、今起こされるのも面倒だ」


「王妃様にも困った者ですな。この国の者になるのではなく、今でも我儘な王女のままだ」


2人そろってため息をついた。王妃の呼び出しに行きたくないが、仕方ないと諦めて、王は執務室から王妃の部屋に向かった。入ると顔を見た途端ヒステリー気味に王妃が叫んだ。


「何故ですの、陛下!私のオチルドが次期王位を継ぐ筈でしょう!」


「聖獣様の指名だ。国を滅ぼす訳にはいかない、諦めてくれ」


エルドラドに眠らされたが、直ぐ王妃が治癒術師を呼び治療されて、オチルドは王妃の部屋にいたのだ。


「父上、私が聖獣様の契約者の婚約者に成ればいいんですよ。次期王位に相応しい私なら聖獣様も文句など言わないですよ」


王妃に我儘に育てられたオチルドは、勉強も武術も魔法も中途半端な腕しかない。誰もが王妃の機嫌を損ねない様にわざと、負けた振りをしていたからだ。それも分からず、自分が一番だと思っている。


「オチルド!お前は聖獣様について習ってないのか!その様な愚か者に王位など渡せぬな。もう少し勉強でもして、兄であるエルドラドを見習え!」


「王女であった私の子と、侯爵令嬢ごときの子と一緒にしないでください!高貴な血を持つオチルドを侮辱なさるつもり!私、父に言って正統な王位継承を願い出ますわ!」


「君に何と言われても撤回はしない。離縁しても構わない、好きな様にするがいい」


そう言い捨てて、王妃の部屋から出ていく王だった。


「許せない!あの女も、息子も!死ねばいいのよ!ふふふ、お父様に言って2人を始末してもらいましょう」


部屋の中の調度品を壊して、グチャグチャになった残骸の側で王妃は願う、この壊れた物の様に成ればいい、と呟いていた。


「お母様に任せないさい!オチルド。貴方のために2人を消してあげるわ。くくく、おーほっほっほっ!」


高笑いをしながら自身の勝利を、一切(いっさい)疑っていない王妃がいた。



その頃、エルドラドは隣国に向かう馬車の中で、お付きの者たちに謝られていた。


「エルドラド殿下、やっぱりオチルド殿下は妨害に来たんですね。私も急いで殿下の元に来たのですが間に合いませんでした。すみません」


いつもは、私の側に居るのだが、急な出立の準備に回っていて、来るのが遅れたのだ。心配してくれたのは嬉しいが、簡単にやられる程弱くはないぞ。


「気にするな。私が頼んだ用事を済ませていたんだ。それに私は、オチルドにやられる程弱くは無いぞ。心配し過ぎだ」


「しかし、殿下!王妃は油断できない人です!気を付けてください」


「分かった。気をつけるから、気に病むな」




これから先、トラブルがない事を祈りながら隣国に向かう。いい結果を国に持って帰ると決めて。これが、上手く行けば両親の心配も払拭できる。聖獣様の言葉がきっかけで、国が救われればこれよりいい話はない。







ルビィディア「私の出番はいつー!」


フラン「お嬢様、ゆっくりの作者に付き合うと苦労しますね」


伯爵「私はいつでも構わないよ」


聖獣様「俺様の偉大な話を聞けー、コケー!」


聖獣様「丸焼け〜!丸ハゲ〜!どっちも得意よー、コケー」


ルビィディア「今回は丸焼けも丸ハゲも勘弁してくださいー!」


フラン「ふっ、お嬢様、無駄ですよ。こうやってずっと黒歴史が作られて行くのです」

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