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皇太子殿下の裏事情

 王城の舞踏会で、私は婚約発表した。元々弟の婚約者だったのだが、別の人を選んで婚約破棄してしまった。

 隣国の王女と弟の仲を、引き裂く事ができず王である父上も頭を痛めていたのだ。

 私達に話を通さず、勝手に本人に婚約破棄を伝えるとは予想していなかった。

 伯爵は、大叔父である先の王弟殿下であった公爵の娘を妻にしている。


「父上、伯爵に何か言われたのですか?」


 父上の困惑顔が伺える。気苦労も多いのだろう。


「いや…隣国の王女に手を出したのなら仕方無いですね。と言われたが…」


 伯爵は、静かに怒っているのだと私は思う。


「他にはなんと?」


 他に何か言われたか問い詰めると、重い口を開けた父上からの言葉に息がつまる。


「…伯爵に、娘である令嬢から、愛し合う二人の仲を引き裂く事など出来ない。お幸せにと、言われたそうだ」


 凄い嫌味じゃないですか、相当怒ってますね。


「事故に遭ったと聞きましたが、容態はどうでしたか?」


 怪我が酷くないと良いが心配だな。


「大丈夫らしい。直ぐフロイドに見舞いに行かせたが、怪我などはしていないそうだ」


「それは、良かったですね。」


「いいや、そうでもない。令嬢は記憶を無くしてるらしいぞ。聞いた話によると、伯爵を知らないと言われたて落ち込んだと」


「え!記憶をですか?」


 娘に、知らないと言われれば落ち込むだろう。愛娘で大事にしていたのは知っている。

 元に戻ればいいが無理なのだろうか。


「ああ、全て忘れているらしい。」


 不味い!記憶を無くしてるとは……伯爵の怒りを間違いなく買っているようだ。


「……」


 ため息を、親子2人で吐きながら今後をどうするか思案していた。



 王国の権力は、概ね二つの勢力に分かれている。一つは公爵派、もう一つは王派だ。

 先代が、寵姫の子供を可愛がり王にしようとした。

 戦乱時代ならまだしも、好戦的な性格の王子に危惧した貴族が、反対に回った為にかろうじて父上が王になった。

 今でも、事ある毎に反対の意見を出し決まる物も邪魔をされる始末。

  伯爵は公爵派ではないが、どちらの勢力の人間とも、上手く付き合っているのだ。


「父上、私が彼女を妻に迎えましょう。」


 伯爵の怒りを買わない方が得策だ。何か起こってからでは遅い!只へさえ、弟の婚約破棄で公爵に付け入る隙を作ってしまった。


「いいのか?他に好きな女性はいないのか?」


 別にいません。気にしなくて良いですよ父上。

 それほど結婚には興味はなかった。

 国の為に王家を存続させるに相応しい女性なら誰でも良かったのだ。

 伯爵を味方につける方が遥かにいい。


「いません、それより伯爵の怒りを買う方が怖いですね」


 伯爵は、昔奥方に暴言を吐いた侯爵一家を滅ぼしてしまった。

 自ら命を断つように、様々な策を施して追い詰め自滅させたのだ。

 自分の手を汚さずに。そんな伯爵の娘を傷つけて、唯で済む筈はない。


「フロイドは、不味いことをしてくれた。王族としての義務を忘れている」


 せめて義務くらい知って欲しかったが。第二妃が甘やかしたのが裏目に出た。教育を間違えた様だ。元々王派に属してた力のある貴族の令嬢を娶った。父上は本当は我が母上だけを愛していたのだが、世情も、周りにも敵だらけで譲歩するしかなかった。

 先代王(私の祖父)は、寵姫の血を引かない父上には冷たかったそうだ。


「そうですね。伯爵を王派に取り込むための政略結婚でしたから」


 王家の権力を、安定させるための婚約だったのだから。

 派閥争いで国が滅びない為の縁組、それ位わかって欲しかった。

 馬鹿でも、一応私の弟で、国を守る者になって欲しかったんだが。


「エディアルドのおかげで、この国は無事だが隣国はどうなるやら」


 ため息を吐く父上には悪いが、隣国がどうなろうと知りませんよ。

 こちらの被害を防ぐだけで精一杯ですから。

 こちらに被害がこなければ問題ない。

 優秀な、伯爵長男、次男、三男に外交で手痛いしっぺ返しを受けても知らぬ振りをさせてもらう。


「伯爵を、怒らせたのだから仕方ないですよ。どんなことをされても」


 そう、どんな事をされても、半分はそちらに責任があるのだから残りはお願いしますよ。

 それから、直ぐ伯爵に使者を送り了承の返事を貰った。

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