閑話、料理長は様々事に冷や汗を流す。
隙間投稿しましたー!
料理長は、必死にレシピ通りの物を作ろうと、弟子達と思考錯誤していた。
お屋敷の、お嬢様にお願いされた物だからだ。
「料理長、娘のルビィディアが作って欲しいとお願いしたものだ。宜しく頼むよ」
そう言って、伯爵様から渡されたレシピ。その眼差しは、「直ぐできるだろう?明日にはできてる筈だな」と伯爵に言われている気がする料理長は、冷や汗が出る自分を感じながら返事をした。
「す、直ぐ作ります!お嬢様が満足できる物を!」
「ん、期待している。材料の砂糖と色粉は直ぐ運ばれて来る。金型も朝には届くだろう」
金型!!普通は直ぐできる物ではない筈だ。
伯爵が調理場を去ると、急いで弟子達と一緒に飴作りを始めたのだ。
あの顔をする時の伯爵に逆らう気は起きない。数々の逸話を持つ方だ。
このお屋敷に、古くから勤める者は知っているが、若い頃、結婚前の奥様に贈ったプレゼントには、伯爵の熱意の入った物が多く贈られている。
その一例を聞いた皆が驚く物がある。宝石草である、キラキラ七色に輝き、今も奥様の部屋に飾られている。魔境と呼ばれる山の頂に咲いていると言われる花だが、咲いて10分の内に摘み取り、水の中に入れないと枯れてしまう特殊な花だ。
それを取って来た時期が隣国との戦争中だったと聞いている。前料理長の甥が一緒の前線にいて噂が流れて来たそうだ。
因みに、その花を保有しているのは、トラン王家位であるが国宝になっているので、見る事はできない。
その花がどうしても見たい貴族達が、伯爵家によく頼み込んでいるのを見かける。危険なプレゼントを贈る位、愛している奥様のお嬢様の希望を叶えないと、命がないと感じる!
「わああーっ!師匠ー!こげました!」
「すみません!俺のもです!」
「ううっ!鍋にこびり付いてしまった!失敗だ」
必死にやってますが、火を離すタイミングが合わない。直ぐこげて苦くなるのだ。朝までには成功させるぞおおおおおーっ!
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飴を、料理長に作ってもらったルビィディアお嬢様。色粉を入れて綺麗な飴に仕上がった物を食べていたのですが、お客様が来る事を忘れていました。
「お嬢様!今日は食べてはいけないと言ってましたはずです!」
恐ろしい顔をしたマリーさんがいます。忘れてました!ごめんなさい!経験ないですか?舌と唇が紫色に染まってます。ペロペロキャンディー美味しかったです。舐め方が悪かったのです。唇まで染まって、マリーさんに内緒にしてたのにバレてしまいました。くすん。
「ごめんなさあああい!ペロペロキャンディーの魅力には太刀打ちできなかったのー!」
「……魅力は否定しません。お嬢様、もっと上手にお食べください」
そう言ったマリーさんの舌が紫色でした。ふっ、ペロペロキャンディー恐るべし!甘味のない世界の救世主よ。
お客様には、顔色が悪いと言って会うのをお断りしました。ホントウデス、ペロで染まりました。
その頃、調理場でこんなやり取りが行われてました。
うああああーっ!無い!捨てようと思った失敗作!色があまりに悪かった物だ。紫と赤色が混じった汚い色になったので別にはねていた物だった。
「こ、こ、こ、ここにあった物を知らないか?」
「え?それなら、嬉しそうにマリーさんが持って行きましたよ」
「師匠、マリーさんがお礼言ってましたけど。仕事が早くて素敵だと」
喜んでた!失敗作だが……いや、しかし、どうしよう……マリーさんは怖い。
よし!知らなかった事にしよう。気付かなかった事にした料理長でした。
前に書いていた小話を入れました。伯爵様の逸話は後から書きます。




