14執務室職員日記
「室長、頼まれた書類まとめ出来ました!」
「ご苦労。すまないないつも。もっと他のことをやらせたいんだが、なかなかタイムテーブル通りに事が進まないからな。日頃なら七番に頼むんだが、生憎、七番がいないからな」
7番、第7執務室室長・スフィアさん。綺麗な銀髪で14人いる室長の中で唯一の女性です。西にある四聖の白虎様の大使に任命され前以上に多忙な方になりました。
僕の名前はマキリ。国家職員になるための試験を受ける資格がまだ満たして無いために研修職員として14執務室に派遣されてから半年。タイガ室長は厳しいですが、とても良いヒトです。
「一緒にお昼に行くか?」
「え!いいんですか!お供します!」
たまにお昼一緒にしてくれて僕の解らないところとか、悪いところを教えてくれます。今日の昼食は和食でした。相変わらず、タイガさん仕事しながらご飯食べてます。他の室長から注意を受けたらしいのですが、 結局、彼らの尻拭いをするのは長の自分の役目だからそこは目を瞑れと怒ったらしいです。
食べ終わると、タイガさんは昼休みに水上公園でお昼寝してます。魔王の警備の仕事だけではなく、書類上の仕事もあるので脱帽です。こんな立派な人になりたいです。
「マキリ、明日から法学の書籍もってこい。教えてやる。法学職員になりたいんだろ?いつも頑張ってるご褒美だ」
「本当ですか!」
僕はすごく嬉しかった。その事を大使の仕事から帰ってきたスフィアさんに聞かれて、
「は? こき使ってる私にはご褒美はないわけですか、室長」
この後2人は何か言い合いになって、怖くて逃げました。僕は昼から第6執務室……国立医院にお使いに行きました。受付には、緑花族のカモミールさんがいました。彼女は僕と同じでつい半年前に赴任してきたので、階級や部署は違えど同期です。僕は、いつものように毒劇物調査書を渡しました。
「マキリ君、お疲れ様。いつも、大変ね。コレ、前回のだから室長に渡しておいて」
「うん、カモミールさんもお疲れ様です!」
噂によると、西洋薬草についての知識は彼女の右に出るものはいないらしく、上司の方々はその腕を買っているそうです。
この書類を持って帰ると今日の仕事は終わりで、僕は近くにある王立図書館に寄ることにした。ここの蔵書量にはいつもびっくりする。床から天井までぎっしり本が並べられているのだから。その上、地下書庫もあるので探すのに苦労する。
「退いてくださーい!」
「あわわっ、すみません!」
ブレザーさん、今日も山積みの本を担いで何処に行くのだろう。僕が遠目で見ると、やはりまたバランスを崩して本をぶちまけていた。いつものことなので僕は拾うのを手伝った。
「ごめんなさい、いつもいつも!」
「いいよ、お使いの帰りだし。今日も山積みだね」
「どうも、一気に終わらせたくて。でも、出来ないのよね」
ハハハッとブレザーさんは苦笑いをした。頑張ってるのは知ってたから、さっき、カモミールさんからもらった疲れに効く飴を一つあげた。
目当ての本があったので借りて外に出ようとした時だった。雨が降っていた。本や書類を濡らすわけにはいかないけどどうしようと悩んでいたところだった。
「雨か………ん、君は王都に帰りたいのか?」
「え、あ、はい。でも、この雨なのでどうしようかなと」
この人なんで、僕が王都に帰りたいってわかったんだろう。その人の服装を僕は見て思った。見慣れぬバッチの数、軍服のような服装………第8執務室の航空部隊のヒトだと。
「14執務室側の離着場まで連れてってやる」
「えええ! いや、でも悪いです!」
「さして問題はない。どうせ、王都に帰るのだからな。その書類と本をしっかり持っておけ、飛ぶぞ!」
航空部隊のヒトは体は白く腹は青い竜へと姿を変えた。そして、僕を鉤爪で握り潰すが如く掴んで空に舞い上がった。
「ギャー!!!」
離着場に着いたころには魂が抜けそうでした。髪はボサボサになって酷い有り様だったけど、本と書類が無事だったので安心した。徒歩だと一時間以上歩いたこの道のりをこのヒトは15分もかからず到着させた。
「隊長! お疲れ様です」
隊長? ……………ウゲッ! 今思えば、航空部隊隊長のユーさんだ!そりゃ速いわけだ。大変なところに借りができちゃったよ! どうしよう。
「あ、あのう、お礼はどうしたら良いですか?」
「礼? そんなものはさして興味は無い! それより、速く室長の元に行け!」
かっこいいと言ったら悪いけど、8番室長がフラフラしてるから他の隊員さんがかっこよく見えてしょうがない。
「はい、今日はありがとうございました!」
タイガさんのところに戻ると、ご苦労とだけ言われて、今日の仕事は終了した。今日は、早く帰って本を読みたかった。
宿舎に帰ると、ルームメイトのミカさんがいた。白蛇族の出身でとても博識だ。今日も僕みたいに読書にふけっているみたいだけど、たまに笑ってるのが怖い。
「お帰り、マキリ君。この前、頼まれてた本持って帰ってるから」
「ありがとう、ミカさん!」
「マコト君が帰ってきたらご飯食べに行こ」
「そうだね!」
マコトさん………イケメン揃いのいや、僕が憬れている司法室の職員でイケメンを見るのが楽しみらしいけど、僕にはこの趣味分からないや。
あれ、机に何か置き手紙がある。なになに、今日は遅くなるので先にご飯食べ出て良いよと書かれていた。
「なんだよ、早く言って。 ミカさん、ご飯食べに行こう。まことさん、今日帰ってこないって」
「またなの? マコト君が遅くなると私達も連帯責任負わせられるのに。帰ってきたら、説教ね」
上司の接待や残業のせいでマコトさんは帰るのが遅くかることが度々あった。不真面目に見えてちゃんと真面目なんだ。ただ、帰るのが早いと文句ないんだけどね。こうして、僕の長いようで短い一日は終わる。
翌朝、マコトさんが、床で寝ていました。