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D&T~幻想的な夜~  作者: 頁宴人
9/10

2:____⑤

短いのに掲載するのに時間がかかったしまったことは、申し訳ないです

 校舎に授業の終業チャイムが鳴り響き、特に特筆することのない授業の終わりを告げる。むしろ学生にとって特筆すべきはこの放課後からだと言っても過言ではない。


 教室に残って友人たちと会話に興じたり、部活動の準備に追われる生徒とは別の帰宅しようとする生徒の流れに乗って、桔梗と操希は生徒玄関に向かっていた。


「あ~今日もよく勉強したー」

「私の目には一日の授業の大半を寝て過ごしたようにしか見えなかったのですが」

「うっ、そ、そうとも言うけど。でもちゃんとノートは取ったわよ」

「あのミミズがのたうち回ったような文字で書いたものがそうだというのなら、まぁそうなんですね」

「うわっ、ひどい!」

「事実ですよ」


 昇降口から出た生徒のうち半数がアルバイトをしている生徒だろう。桔梗たちもそのうちの二人。ちなみにここにいない零人も入っている。

 目的地の喫茶店を目指し、歩いて街中を抜けていく。二人とも徒歩なのは、桔梗は零人のバイクで一緒だったためで、操希は車で送迎されているからであった。


「レージも薄情よねぇ。どうせ行先は同じなんだから、一緒に行ったってイイじゃん」

「夜東くんにもお店の準備があるからしょうがないと思いますよ。それに私たちの方がルーズだと思うのです。それに――」

「それに?」

「………。はぁ、寝て忘れるっていうもの才能なのでしょうね、――(そこもキョウちゃんの素晴らしいところですけれど)。」

「え、なに?」

「夜東くんと、ちょっとだけ気まずかったのでなかったのですか」

「…………。ああ、そうだったね」

「あら?反応が薄いですね。朝はあれだけ落ち込んでいたのに」

「んーそうなんだけどさ」


 時間が経ったからか、それとも寝て忘れたからか、操希の言う通り心に陰は感じられなかった。むしろ冷静さまで取り戻していた。

 客観的に考えれば、確かに零人に自身のあられもない姿を見せてしまったわけだが、その後こちらから報復制裁は済んでいる。喧嘩両成敗(?)なのではないかと思った。だからこそもう気まずさはなかった。


「もういいや。忘れてたってことはもうどーでもイイってことにする。逆に気を使わせてアリガトね」

「いえお礼を言われるようなことは………チッ――(キョウちゃんがしどろもどろに赤面して謝るところを撮影したかったのですが、残念)」

「ん?」

「はい?」


 何かに感づいた様子の桔梗を誤魔化しながら、操希はそっとスタンバイさせていた小型カメラをカバンに戻すのであった。


≪試行錯誤のボツ≫

補足章

 この世に完璧なんてモノはない。

 元から無いのか、あってはならないのか。『完璧』の名を冠するスイーツでさえ完璧を追い求め未だ彷徨っている。

 だから、人生も完璧はなく、人間誰もがその最期を迎えるまで彷徨い続けるのだろう。

 誰もが夢見る『完璧』というやつを求めながら。(別のところで使用)



「今までの政治はベストではなくともベターなのだろう。

 しかし、この日本を本当に変えようと思うのではあればベターであってはいけない。

 理解されなくとも、莫迦と罵られようとも、私は十年二〇年後の先を見据えて動く。

 それが未来のベストと信じて」


 これはかの有名な『政界の魔王』――織田上総介が内閣総理大臣に就任した際に宣言した言葉である。歴代最年少での就任とのことで教科書にも載っている。

 そしてこれ以来、彼が打ち出した政策によって日本は大きくそのその在り方が変わったといえよう。


 首相になる前、まず政治家の彼が行ったのは告発だった。盗聴盗撮など、あまりに正当性の欠く行為で集めた証拠をマスメディアに流し続けた結果、多くの政治家や官僚が捕まった。当時、贈賄は一種の交渉手段だった為だと思われている。

 当然のことながら、政界の彼に対する風当たりは激しいなんて言葉で表すのはまだ足りなかった。針のむしろでもまだ優しい。彼を恐れて、宥めるようにと賄賂を贈ったならば片っ端から警察に突き出された。

 政治家不信に陥った国民は、唯一頼れる織田を支持した。言うまでもないことだが、全票獲得という完全制覇選挙の果てに、織田上総介は内閣総理大臣となった。


 各政党並び党員の削減から始まり、画一的だったそれまでの政治から一転、画期的な――否、狂気的な政策は様々問題を解決し、様々な問題を生み出した。


 以後、彼が『魔王』と呼ばれるようになった。



◇◇◇◇◇

 二二世紀末。日本はとうとう少子高齢化に歯止めを掛けることができなかった。人口の減少に地方の多く町村は過疎化が進み、やがて廃れてしまった。残された大多数の国民は今なお人が集まる都会に住み移った。

 また、人手不足から地方にある企業は倒産、もしくは移設を余儀なくされた。

 農業・水産業などの第一次産業は機械の発達により安定した生産量を確保はできているが、やはりこちらも高齢化が進み跡継ぎについて懸念されていた。


 このことに『魔王』織田上総介首相は、出産育児などに対して今までにない手厚い保障を手当てるとともに、さらにその前の段階――婚姻についても、同性婚・近親婚・重婚など、結婚に関する規則をかなり緩くするように法を改定した。

 当然マスコミに叩かれたが、国民が子供を産まなくなってからでは遅いと一蹴。この発言にも一悶着あったのだが、それは別のお話。

国民は最初こそ騒がれたが、次第に沈静し受けれるようになった。かくして半世紀、時間が掛かった政策ではあったが、よって緩やかではあるが人口は右肩上がりとなり、二一世紀以前の人口を取り戻すことができたのであった。


 また、地方の過疎化――大都市に集中している人口については、都心に集中している大手大企業などを地方に移設することで解決を図った。『働き場』を提供することによって人が集まり、移設地とそこを結ぶ街道にある市町村の再発展に繋がると考えられた。そうしたことを受けて交通機関や重要施設など都市の再開発が行われていった。


 と、そんな日本の情勢背景が関係あるのかないのか議論されることではないし、ここでわざわざ語ることでもない。


 例年関係なく企業や職場は、『人材不足』・『新人育成』という共通の悩みを抱えていた。

 そこで政府は成人前の学生を対象に『非正規学生雇用体制』を実施した。これは義務教育を終えた学生――高校生・大学生が一般職員とともに労働することで学生のうちに新人教育を施して、卒業し入社した際に即時戦力とするのが目的であった。さらにこれで不足しがちな人材を事前確保もできた。

 最近では、『後継者育成』と題して大企業の子息たちに教育を施していた。とはいえこの光景は跡目という観点から政策が実施されるより前に見られたものであった。

 学生は学業が仕事であるため労働時間については各職場で異なっているが、八時間フルタイムの業務を行っているところはない。長くても五時間程度だ。


 非正規学生雇用体制を受けて教育機関と授業風景もガラリとその姿を変えた。

 まず多くの高等学校が『学年制と単位制の併用した教育』だったのが単位制となった。学業と職業の両立を狙ってこのような形となり、そのため夕方までだった授業が夜間にまで伸び、昼間に働いて夕方から夜の間に授業を受けることができるようにもなった。

 とはいえこの制度の対象は学生であるが、新入生と成績が芳しくない者は除外するように教育機関が条件を押し付けた。従ってこの制度が適応されるのは二年生からである。ほとんどの学校が一年生のうちは従来どおりのカリキュラムで、二年生からは履修科目を選択で受けるようにしている。

 となると上級生たちの教室はクラスメートが全員集まるというのは、終始業式や学期考査などの季節行事ぐらいと少なくなった。


 学校が紹介してくれる職場はその地域に関係しており、拡大した支店企業だけではなく地場産業にも深く貢献している。例をあげるとしたらその高校が海に近ければ水産業、山が近ければ林業といったものだ。

 よって最近の学生が決める進路の理由として、『この学校は何が働けるのか』が大半を占めていた。



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