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D&T~幻想的な夜~  作者: 頁宴人
6/10

2:____②

加筆修正版 2015/05/07

 桔梗はいつも起こされる無神経な目覚ましの音ではなく、何かを軽快に叩く音と焼く音、そして時折止まったり動いたりする足音――今まさに調理をしている人の気配で目を覚ました。


 体を起こしまだ十分に開きらない目で辺りを見渡して、自分がリビングで寝ていたことに疑問がわくが、すぐさま昨日の行動を思い出せた。

 送ってもらっている途中でうたた寝をしてしまって、到着してからは何とかシャワーだけでも浴びようとしたけど、少し休憩もしたいなと思いソファに座ったことまでは覚えていた。あとはそのまま寝てしまったと推理した。その証拠に制服のブラウスのままであった。


「……いい匂い」


 ふわっと鼻腔をくすぐる香りにお腹が刺激される。そういえば何も食べていなかったと思い返す。

 ここで忙しなく動いていた音が止み、仕切り戸が開き幼馴染の少年が顔を覗かせた。


「お、起きたか」

「…………Yシャツ制服エプロン、良い」

「は?なんて」

「あ!いや、なんでも………おはよう、レイジ」

「おはよ。メシはもうできてるからさっさと食え」


伝えることは言ったとばかりに零人はキッチンへ戻って行った。既にダイニングのテーブルには皿に盛りつけられたおかずが並ばれていた。


 幼馴染の少女がしっかり起きたこと確認して、二人分の白飯やみそ汁をよそった。ついでに飲み物の牛乳も二人の愛用のコップに注いだ。これで朝食の準備は済んだ。

 

なのだが、先ほどから桔梗がダイニングに来ようとしなければ物音ひとつしない。

 まさかと思った零人がリビングを覗けば、またソファに倒れタオルケットにくるまっていた。


「なに寝てんだよ、起きろッ!」

「はッ!?」


 怒鳴ったことで飛ぶように起き上がった。無駄にきょろきょろと首を回して何かを探すように辺りを見渡している少女は、やっとこちらを見た。


「今何時!?」

「六時四十三分」


 この起床はいつもよりは若干早い。HRが八時四十五分から始まるので三十分過ぎには学校に到着していたい。バイクで片道約三十分、バス通は七時五十四分頃に出発するので、あれこれあっても七時には起こすのがいつもの予定だ。

 しかし今回は身支度に時間が掛かるだろうと思い、早めに起こしたということだ。


「……え、なんで?まだ寝れるじゃん」


 未だ寝ぼけている様子で訊き返してきた。睡眠時間が少ないと皆こうなるのか、と寝ぼけるという経験がない零人はこの少女の危機感の無さに呆れを通り越して関心に域までに到達していた。


 とはいえ一緒に登校する身として、これ以上の惰眠をのさばらせては、のちに「何で起こしてくれなかったの」などと理不尽な責任を押し付けられてはたまらない。回転しない頭に言葉で訴えても意味がないし効果もない。再びタオルケットでミノムシ状態になった少女に強引で効果的な暴力で訴えることにした。


 正確には、タオルケットを引っぺがしソファから落とすという行為に及んだ。


「いい加減起きろ!」

「ぎゃん!?」


 引っ張る勢いが強すぎたのか、勢いよくソファから転げ落としてしまった。しかし、こうでもしないと恐らく目は覚めないだろう。寝起きのよくない彼女を起こすのは常に悪戦苦闘していた。今回は少々乱暴だったような気がするが開き直って、いい気味だ、と考えておくことにした。


「なにすんのよ!」

「起きなきゃいけないのに起きてこない奴が悪い。だいたいいつもドタバタするのはそっちなんだから―…………」


 セリフを言い切る前に言葉を詰まらせてしまった。


 原因は剥ぎ取ったタオルケットの中身、今の桔梗の状態であった。


 先ほどは気が付かなかったが、ブラウスのボタンはそのほとんどを外されており、胸がはだけた状態になっていた。してその奥、本来は胸部を覆っているはずの下着はなく、慎ましくもしかし確かにそこにある白い双丘の麓が見えていた。幸いというべきか、頂上付近は隠れていた。


 そしてタオルケットを剥いだことにより露わとなった下半身は一切の防御がなく、鍛えてはいるが筋肉質というわけではなく、引き締まっていると感じられる白い脚がたたまれてそこに存在していた。そう『防御がない』のだ。根元から爪の先までの素足が堂々と晒されていた。


 最後に、そんな太ももに挟まれた男子禁制の絶対聖域<サンクチュアリ>が、白と水色のストライプが丸見えであった。


 咄嗟に視線をずらしたその先に、無造作に置かれていたスカートと下着がソファから離れた場所にあった。恐らく勢いよくタオルケットを引っ張った際に飛んでいったのだろう。


 この時、零人少年は思った。詰んだ、と。


 横目で少女の様子を確認するとその眼は訝しむ色をしていた。そしてどうしても角度的に自然と目線が下に吸い込まれてしまう。そしてついにそのことに気づいてしまった少女の目が下に向いてしまった。


「―なッッ!!??」


 事実を知ってしまった少女の顔は一瞬で耳まで真っ赤になった。

 時間がないから辞世の句とはいえないが、一言文句は言いたかった。


「あーそのーなんだ。寝るんだったらベッドで、ちゃんと着替えてからにするんだな。これからは」

「~~~~~~~~~~ッッ!!!」


 早朝の住宅街に、年頃乙女のスクリームとコークスクリューが炸裂した。



お待たせしてしまったことは、ほんっっっっっと申し訳ないと思っています。

時間を見つけつつコツコツ書いてはいます。

温かく長い目で見守って下さると幸いです。

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