ドロップアイテムと新魔法
投稿遅れてすいません。この間に葬式やら事故の後処理やらで更新できませんでした。
次回から更新速度あげます。
ゴブリンLV 6
ゴブリンLV 12
神からもらった『オーディンの右眼』の能力で出現させたパネルにはそうかいてあった。
(やべぇ!異世界着ていきなりピンチかよ!しかもゴブリン二匹とも俺よりレベル高いし!)
閃太は敵の存在にびくびくしつつ、取り敢えず、戦うことにした。右手でしっかりと剣の柄を握り、鞘から抜刀する。シャランと涼やかな音色とともに鋼色の刀身が露になる。そしてその場から少し移動し、石などが少ない場所まで移動する。右手に魔力を込め魔法を発動させる。
「フレアボール!」
野球のボールほどの火の玉がゴブリンがいるであろう茂みに飛んでいく。ちなみに名前は閃太が即興で考えた。
時速にして60km ほどの火の玉が茂みに飛んでいくと茂みから二つの物体が飛び出してくる。身長は130cm ほどだろうか、猫背のためよくわからない。黒板のような深い緑色の皮膚に、尖った耳に若干角のようなものが生えている。LV12の方は右手に石の刃の斧を持ち、 LV 6の方は木から削り出したような棍棒を持っている。アーモンド型の大きな目がギョロリと動き閃太をとらえると、
「「ギュエーー!」」
鼓膜を破こうとする勢いの金切り声をあげ、閃太を威嚇する。そしてお互いの顔を見合わせ、二匹して突っ込んで来る。
20mほど離れている距離を積めてくる。そして得物の攻撃範囲に入った瞬間、ゴブリンは武器を振るう。その攻撃に連携などはなくただ好き勝手に振り回しているだけだった。それでも自分に対する、敵意に閃太は怖じけづく。
あと1mのところで閃太はやっとの思いで右に跳び、二匹の初撃を回避する。ゴブリン二匹は閃太の左を駆け抜けていく。
ゴブリン二匹の攻撃は一撃では当然終わる筈もなく、LV 6より早く反応したLV 12のゴブリンは振り返り、閃太に斧を振るう。お世辞にも鋭いとは言えない振り方だが当たれば当然ただではすまないだろう。LV 6はLV 12の後ろでいつでも戦えるように身構えている。
ブンブンと振り回す斧をかわしていくうちに、閃太の眼は慣れていった。
ゴブリンの横薙ぎをバックステップでかわし、
「とりゃっ!」
閃太はゴブリンの足元に右足でローキックを入れる。ゴンッと鈍い音が響き、グラリとゴブリンの体勢が崩れる。間髪いれずに剣を捨て、ゴブリンの右手を掴み、グルリと反時計回りに回りながら、腰をおとし相手を背負い投げ、腰を上げる力と体の捻る力を利用してゴブリンを投げ飛ばす。ゴブリンが軽かったのもあり、勢いよく飛んでいく。
「ギュエ!?」
投げ飛ばした方向はもう一匹のゴブリンがいる方でゴブリンは二匹してその場で倒れた。LV 14の下敷きになったLV6は打ち所が悪かったのか気絶してしまった。LV 12は投げられたときに斧を話してしまったので無手になってしまった。LV 12は相方ゴブリンの棍棒を手に取り最後の特攻に出た。
★☆★☆★
閃太は酷く興奮していた。あまり死にかけた訳ではないが命のやり取りをし、命の灯火を消そうとしているのだ。目の前からゴブリンが走ってくる。閃太は足元の剣を拾い上げ、ゴブリンと対峙する。
ゴブリンが垂直に棍棒を降り下ろす。閃太は右に移動しかわす。そして体を捻り、腰をおとし、剣を右から左に一直線に振るう。狙ったのはゴブリンの首だった。ぶちっ、ブチッと肉や血管を斬る感触が剣から右手へと、伝わる。間もなく骨に当たったが閃太は構わずに剣を振り抜く。ばしゅっとおとをたてて、ゴブリンの頭が地に落ちる。ゴブリンの体体から大量の鮮血が吹き出し、宙を舞う。パネルは消え去り、ゴブリンはガラスのようにパリーンといって砕けて消えた。そしてゴブリンの砕けた一部から光の粒が現れ、閃太の体にすうーーっと染み込むように入っていった。しかしそんなこと今の閃太には関係なかった。血の赤色が閃太をさらに興奮させる。閃太の脳内は一刻も早く殺さなければという言葉しか頭になかった。
閃太は気絶しているゴブリンに近づき、喉に剣を突き立てる。そのゴブリンもガラスのようにパリーンといって砕けて消えた。光の粒が現れ、閃太の体に染み込むように入っていく。
閃太はその場をキョロキョロと確認し、剣を鞘に収めて、その場で腰を下ろす。
「はぁ、はぁ、た、たすかったのか?」
閃太は額の汗をぬぐう。時間にして5分も動いていないが汗の量が酷かった。しかも脂汗だ。身体中がベトベトして気持ち悪い、服もゴブリンの血で赤くなっていた。右手にはゴブリンを斬った時の感触がまだ残っている。動物を殺した罪悪感が閃太の感情に揺さぶりかける。閃太はあれは仕方ないことなんだと、呪文のように唱え続けるしかなかった。
★☆★☆★
少し汗が引いてきてから、閃太はゴブリン達の場所に何か落ちているのに気付く。
「なんだこりゃ?」
落ちているものを拾い上げて見てみる。高さ3cm ほどの乳白色の円錐がゴブリンを倒した場所に落ちている。しかも二個落ちていたので閃太は何かしらの関連がないか考えていく。閃太は試すようにステータスと唱える。すると今までに無かった黄色のウィンドウが
ゴブリンの爪
と出てきた。追加でフォーカスと唱えると
ゴブリンの爪
説明
ゴブリンの爪。素材や漢方として扱われる。
と出てきた。
「つまり、ドロップアイテムか……」
RPG でよくある魔物の落とし物だ。閃太は一人で納得し、その場で休憩する。
しばらく休憩して、閃太は寝床を探すことにした。このまま人里を見つけられなかったらの保身だ。
「早いとこ村か町か見つけないと精神的にも肉体的にもくたばりそうだ……」
★☆★☆★
ゴブリンと戦った場所から小一時間程歩くと川のせせらぎのような音が閃太の耳に聞こえる。
「川でも近くにあんのかな?」
音を頼りに閃太は歩き出す。人間、生活していく上で水は必要不可欠だ。その水が豊富なところに人々は文明を築いてきた。ここは異世界なので勝手は違うかもしれない。しかしある可能性は否定できない。閃太は、川を探すことにする。歩いていくうちに、木の本数は減り視界が開ける、雑草ばかりだった足下も石に変わる。
「おお!川だ!」
川幅は余り大きくない、しかし透き通るほどに透明な水は、閃太のいた世界ではあり得ない程綺麗だった。
閃太は手で水をすくう、波紋が光を浴びキラキラと光り、宝石ような輝きを見せる。流れも激しくなく、ピクニックにはちょうどいい場所だと思った。その場に鞄をおき、閃太は血まみれのYシャツを脱ぎ、ズボン、靴下を脱ぎ捨て、パンツに手をかけ、流石に恥ずかしく、脱ぐのをやめた。
閃太は、服と剣を持って、川にはいる。
川の冷たさが足を伝わり、からだ全身に回っていき、閃太の興奮した心を落ち着かせていった。閃太は衣服を水につけごしごしと洗っていく。しかし血まみれのYシャツはいっこうに白くならなかった。
「流石に洗うの遅かったか……」
閃太はYシャツを雑巾のようにきつく絞り、その他の衣服と一緒に鞄のほうへ投げた。次に、剣を鞘から抜き、剣と、鞘にについた血を洗い流していく。こちらはすぐに汚れがとれ、完全に綺麗になったら、剣を左右に振り、鞘へと戻す。
閃太は川から上がると、パンツを脱ぎ、きつく絞り、再び穿く。本当はパンツも着替えたかったが替えがないので我慢する。そして鞄から神にもらった服を着る。ベルトではなく紐で止めるズボンに多少ざらざらした服を着る。閃太はその上に制服のベルトをつけ、左に剣を帯刀する。
さらに鞄から、『異世界について』を取りだし、の魔物の分布図を見る。ゴブリンのことについてを調べていく。元々この世界は6つの大陸に別れていて、二つの文化が存在するらしい。ゴブリンはこの世界の6大陸に渡り広く分布しているこれだけの情報じゃ閃太がどこにいるかもわからない。
「クソッ!これじゃどこにいるかも分からん!」
閃太は、苛立ちながら本を投げる。しかし冷静になり、本を拾い上げ鞄にしまう。
閃太はふと今後の戦いのために、魔法の練習をしようと思った。そしてさっきの戦いを思い出していく、さっきのゴブリンたちは2匹だった。それ考えて思いついたのが二つの魔方陣を展開させるというものだ。閃太は左右の手に魔力を込める。そのままイメージし、魔方陣を展開させるが、魔方陣が安定しない。消えたり、小さくなったりを繰り返す。やっと安定したところで、
「ツインフレアボール!」
そのまま二つの火の玉を飛ばす。その火の玉は川の水面に当たり、じゅっ!と音をたて1m程の水柱を立てて消えた、閃太はそのまま両手を重ね、魔力を込める。今度イメージしたのは威力と安定感、両手から魔方陣を展開させると、今度はいつものフレアボールの魔方陣の1.5倍程の魔方陣ができる。
「フレアキャノン!」
今までの中で最大、最速の火炎の弾丸が水面に当たり、ドン!と破裂音をたて消える。川からもわもわと蒸気が上がっている。
「ここまで、威力がでんだな……ってなんだこりゃ?」
閃太は体の異変を感じる。いや異変というか違和感だろうか?閃太の第六感が魔力の残りが少ないことを伝えている。大体あとフレアボール換算だと5発撃てば魔力が空になると本能で悟る。
「え~と、俺がいままで撃ってきた魔法は異世界に来てフレアボール1発とツインフレアボール、フレアキャノンが1回ずつ……あの変な駅で何発だっけ?……でも少なく見積もったら俺の魔力量はフレアボール6発とツインフレアボール、フレアキャノンが1発ずつか……節約しないとヤバイかもな……」
閃太は鞄からペットボトルのジュースを取り出して、グビグビと飲み干す。そして空になったペットボトルに水を入れ、閃太は鞄にしまう。そして鞄を担ぎ再び、村と寝床を探しに川を下っていった。