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ゴブリン

相変わらずの遅交信


異世界への生き方は、『異世界について』に書いてあった。異世界の生き方は駅らしく電車に乗って行くらしい


「それにしても、遅えな……」


閃太は、体感時間一時間位ベンチで座って待っていた。おもむろに鞄から神からもらった『異世界について』を取りだし、パラリと表紙を一枚めくる。一ページ目には目次が書いてあるようで、どうやらこの本には異世界の地理に始まり、通貨、国政、国交事情や、果ては郷土料理の作り方などいったものから、魔物の習性、分布図などといったものまで書いてある。閃太はふと、あるページで手が止まる。魔法について書かれているページだ。


「ステータス、フォーカス、ピックアップ炎魔法!」


閃太が早口にスペルを組み立てていく。それすらももどかしい様子で閃太は出てきたパネルを食い入るように見る。




炎魔法LV 1


スキル情報


炎を操る。



アクティブスキル


とだけ書かれている。しかし閃太にとって重要なのは、炎魔法という単語だけだった。


「つまり、俺にも魔法が使えるんだな!」


閃太はいままでに無いくらいに興奮していた。


「っと、何時間前に死んだとは思えないテンションだな……」


自虐ネタで少し冷めてしまった。





★☆★☆★





魔法とは魔力を変換させることによって『現象』を起こす技術である。魔法には四大魔法というものがあり、炎、水、土、風の四つである。大抵の魔法がこの四つである。しかし中には例外もある。


『異世界について』の魔法のページにそう定義されている。閃太は小一時間程この本を読んで過ごした。しかし魔法のページだけ読んでもなんのことかさっぱりだった。閃太は少し戻って、魔力のページを開き、読み進めていく。



魔力とは、心臓の近くに魔力を蓄え、心臓が脈を打った時に身体中を流れる。魔力の使い方は大きく分けて3つある。


1つめは、魔法を使う場合だ。魔力を魔法に変換させる技術であり、高威力になればなるほど魔力の消費も大きくなる。


2つめは、付与魔法だ。付与魔法とは、道具に魔方陣を描き、道具に魔力を注げば魔法が使えるものだ。付与魔法は大抵、四大魔法のものが多く、日用品から戦闘用まで様々ある。しかし魔法より大量の魔力を消費するのでたいした威力は望めない。


3つめは、強化術というものだ。大抵の人間は魔力が流れている。身体中を流れる魔力を一時的に増加させると、筋力や、頑丈さが強化される。これを強化術という。強化術は筋力×魔力で決まる。


と、3つの部門に別れている。閃太は更に一時間近く、本を読んだ。




「よし!魔法実践編ステップ1魔力を魔法の使用したいところに集める、これは出したいところに意識を集中させる!」


閃太は口に出しながら、魔法発動の手口を行う。


「ステップ2は、魔法のイメージを明確にする。」


閃太がイメージしたのは、ライターの火程の小さな炎だ。

すると、魔力を集めていた右手が先程神に当てられていた右目程では無いが熱を帯始める。じんわりと温かくなってきたところで、閃太は再びイメージする。すると指先に小さな炎が灯る。


「おぉ!できたぜ!」


閃太は魔法が使えたことが嬉しくて、しばらく灯したり、消したり、別の箇所で灯したりなど行った。



「じゃあ、ステップ3だな♪」


閃太はるんるん気分でステップをこなしていく。


「え~と、ステップ3魔法を飛ばす。ってやつと魔法らしいものが使えんのか!?」


魔力を集め、魔力を体の外に押し出すのをイメージ

する。と、本には書いてあり、閃太はその通りに行うことにした。


「まずは、魔力を集める!」


ベンチ閃太は右手に魔力を集め、炎を出す。炎のサイズは先程のより数倍も大きく、閃太の手のひらが見えないほどだ。イメージしたのは、某配管工でお馴染みの火の玉だ。

そして、甲子園球児よろしくみごとなフォームで振りかぶった。しかし、炎は手のひらでめらめらと燃えていた。


「やっぱりテキトーに放っただけじゃダメか……」


魔法は奥が深そうだ。






★☆★☆★






読んでは発動の繰り返しでどれ程の時間がたっただろうか?時間は過ぎているが一向に変わらない。寧ろ、やればやるほどどつぼにはまっている気がする。魔法とはなんなんだ?魔力とはなんなんだ?閃太の頭に根本的な疑問が渦巻く。一度整理した方が良さそうだと、閃太は鞄から卒業アルバムとペンを取りだし、魔力と魔法についてわかることをまとめていく。魔力とは心臓が脈を打った時に身体中を流れるものであり……


「心臓が脈を打った時に身体中を流れる……まさか!」


閃太はもう一度右手に魔力を集める。先程よりも多く集めるイメージで行う。炎のイメージも先程よりも明確にする。すると、右手を中心としたにバスケットボール位の直径の赤い魔方陣が宙に描かれる。閃太は軽く驚くがひたすらに魔力を集めることに集中する。そして目を閉じる。


ードクンー


「はっ!」


気合いの入った短い掛け声とともに右手から火炎放射器のように炎が吹き出した。目を開いた閃太は驚き、魔力を集めるのをやめてしまう。すると魔方陣はスゥっと空気に消えてしまう。


「できた……今できたよな?やった!俺も魔法が使えたぁ!」


喜んだのも束の間、閃太はすぐに結果と考察を行った。


「俺が想像してたのと、ちょっと違うんだよな。もっとファイアボールみたいのができればいいんだけど……今度は火の玉のイメージでやってみるか」


閃太は立ち上がり、右手に魔力を込め、魔方陣を描く、そして


ードクンー


今のは先程のと変わらない。火の玉のイメージをもって、魔方陣を描く。


ードクンー


今のは一回めより炎がまとまったがする。もっと強いイメージが必要なようだ。


ードクンー


ビュンと、火の玉がまっすぐ進み、電車のレールを超え、向こう側の木に当たり、霧散する。


「ぇ!い、今できたよな?」


その後何度か練習すると、完璧にできるようになった


「なんか色々疲れた……少し寝るか……」


その後閃太は鞄を枕にして眠った。







★☆★☆★





閃太は、男の声でめが覚めた。


「まもなくホーム参ります電車は異世界、異世界行きでございます。危ないですので黄色い点字ブロックまでお下がりください」


と、意味不明なアナウンスがかかる。そして閃太の右手から白と青のシンプルな電車がホームに入り、やがて狙ったように閃太のまえでブシューとおとをたてて開く。


「んにゃ?……ってうぉい!?で電車来た!?」


閃太はベンチから跳ねるように起き上がり、鞄を担ぎ、鉄パイプを握り、身支度をする。そしてその場で軽く柔軟体操し、深呼吸し、決意したような顔で


「よし!いざ異世界ヘ!」


閃太は勇み足に電車の中にはいっていく。とたんに体が重くなる。比喩ではなく、重力で体が押し潰される。閃太は必死に手すりにてを伸ばす。が、更に重力が増し、閃太はその場で踏み潰された蛙のようになってしまう。足掻くが血液も重力で頭にまで回らない、薄れゆく意識のなか



ーだらしないなぁ、そんなんじゃまたすぐに死ぬぞー


そう誰かの声だけが聞こえた気がした。








★☆★☆★










気付いたら森にいた。なんだかデジャヴを感じるが、ここは鳥のさえずり、どこからか聞こえる川のせせらぎ、葉の触れる音が聞こえ、神の世界ではないことがわかる。閃太は森のなかベンチほどの高さの岩に燃え尽きたボクサーよろしく座っていた。閃太は現状を確認する。鞄の中身は、前見たときと寸分狂わぬように入っていた。立ち上がると、コツンと足に当たる。下を見てみると、約80cm 程の簡素な剣と、麻でできた藍染めの服が二着、小さなメモ用紙があった。メモ用紙には


『閃太君ヘ


このメモを読んでいるということは異世界にいったのだろう。鉄パイプは剣になっておる服は餞別じゃ。では頑張るのだぞ』


とだけ書いてあった。メモ用紙をポケットに突っ込み、閃太は剣を拾い上げ、鞘から抜く。剣は変わった様子はなく、服も普通のものだった。閃太は剣を鞘にしまい、ズボンとベルトのあいだにはさんで帯刀する。服は丸めて鞄に突っ込んだ。


「回りを見回しても当たり一面森ってどうよ?普通は、村の近くとか、町の近くとかに飛ばされるもんじゃないのか?あのじじいそこら辺しっかりしろよ!」


嘆いても現状は変わらないので辺りを散策することにした。不意に閃太の後ろからガサガサともの音が聞こえ、閃太は剣に手を掛けて構える。


「ステータス!」


そこには、赤色のパネルで


ゴブリンLV 6



ゴブリンLV 12



と出てきた。



(異世界に着て、行きなりピンチかよ!)







7/1ゴブリンのレベル編集

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