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駅と爺と異世界と




更新遅くてすいません。



ー気がつくと駅にいた。ー





森のなかにぽつんと駅が建っている。駅と言っても近代的なものではなく、木造で屋根はトタンで出来ている。柱は所々朽ちていて、屋根も錆びて、赤茶色になっている。外装もペンキが剥げて木目がむき出しになっている。


閃太は駅の前に設置してあるベンチに寝かされていた。丁寧にも鞄を枕のように頭の下にあった。閃太は上半身を起こし、キョロキョロと回りを見渡す。


「うにゃ?ここどこだ?」


いくら回りを見渡しても見えるのは、古い駅と森だけだった。


「森のなかにぽつんと駅一件だけって…」


嘆いてもなにも変わらないので持ち物を確認するため、ベンチに座り、がさがさと鞄を調べた。しかし入っていたものは、飲みかけのペットボトルのジュース2本と、財布、卒業証書、筆箱だけだった。


「ほとんど使えないな…使えるのも、ジュースだけか…」


卒業証書なんて言ってしまえばただの紙だし、財布の金だって使える店がなければ、ただのコインと紙切れだ。


「怪しいのは、この駅か…」


そう言って閃太は目の前の駅を睨む。武器が素手だと心許ないので近くにあった錆びた鉄パイプを武器にすることにした。錆で掌が汚れるが、閃太はしっかりと鉄パイプを握る。


しかしここは一体どこなのだろう?閃太は目が覚めてから30分近くたつが、さっきから鳥の鳴き声はおろか、なんの音もしない。全くの無音だ。

普段から音の溢れかえった生活をしていた閃太には

この静けさは耳がキーンとしてくる。


音だけではない。風すらも全く吹いてない。完全に無風だ。気温も三月にしては暑すぎる。体感温度は軽く20℃を越えている。初夏と言われても納得しそうな温度だ。


「一体ここはどこなんだ?」


幾つかの疑問を胸に閃太は駅の中へ入っていった。






★☆★☆★




駅の中は大して変わったものはなかった。ベンチに、幾つかののポスター、時刻表、電車の整理券の

発行機だけだった。もともと無人駅なようで人がいそうな場所はなかった。


「はぁ~、本当に何もないな…」


閃太は駅のホームにあるベンチに座って呟く。一時間程駅の中をくまなく探したが特に変わったものはなかった。いや変わったものはあった。まずこの駅の看板が全て壊れていたり、無かったりしてなに駅なのかもわからなかった。実に不自然ではないだろうか?駅には幾つかの看板があるはずだが、その全てが読めないのだ。しかし不自然だがあり得ないことではない。

一番不自然なのがまるでここは時間が止まっているかのように静かだった。太陽の位置も止まっている。


「一体どうすらゃ良いんだ?」


閃太はここで目覚めてわからないことだらけだった。ここがどこなのかもわからない。今何時なのかもわからない。更に自分が生きているのか死んでいるのかさえわからない。


「何が何やら…はぁ……」


駅のホームにあるベンチに座ってぼやく。


ー空は高く、どこまでも青いー


稀にある雲が青いキャンパスに自由に絵を描く。



そんな空を閃太は、ひたすら眺めていた。





一体、何時間空を見ていたのだろう…体感的に2,30分位に感じるが、実際はもっと長い間見ていたのかもしれない。実際に2.30分しか見てないかもしれない。太陽の位置が全く動かないのでどれくらいいたのかもわからない。


「ふわぁ……」


大あくびをつき、途方にくれた表情で、


「これからどうすりゃいいんだ…」


わからないずくしの場所の中、閃太はふと、家族や、倉木、岩橋のことを思い出す。そういえば明日は合格発表だったな、明後日は遊びに行くんだったななど、どうでもいいことばかり頭のなかを過る。


「はぁ……」


閃太は今日のため息回数を更新する。


「どうかしたかね?閃太君」

「んッ!?」


驚いて、隣を見ると、そこにいたのは年は60を回った位で、やや太りぎみな体型に白髪まじりの髪、仕立ての良いスーツを着込み、革のバッグに黒の杖を持った男がニコニコしながらこちらをみている。


男の存在に、閃太は警戒し、鉄パイプを握る手に力をいれる。


「ハハハ、そう警戒せんでくれ。なに、手出しはせんよ」

「そう言うの、信頼できないだろ……」


閃太はそう言って、番犬よろしく男を睨み付ける。


「信じる信じないは別として、儂かこの世界についておしえてやろう」



この世界について


これは閃太が一番知りたかったことだ。


「お前はここについてどれだけ知っている?俺は死んだのか?ここは何処だ?あんたは誰だ?」

「ほぅ……キミは案外冷静だねぇ」


閃太の余裕のない顔と違い、男は終始ニコニコしていた。


「いいから答えろ!」

「驚かんと聞いてくれ。まず君は死んだ」


大体予想していた通りなので驚きは薄い。


「二番目の質問じゃが、ここは死後の世界ということになるかの」


ここまで予想していた。


「最後に儂は神じゃ」

「ふぅん……神ねぇ、まぁ妥当か……でこのあと俺はどうすりゃいいんだ?」


と、閃太が未来プランをたてていると、


「フフフ、ハッハッハ、いいぞ実に面白い子だ!」

「は!?ジジイなに笑ってやがる?」

「いや、すまんすまん。儂を神と知って跪ないのは珍しくての、多分お前さんが最年少じゃわい」

「そうなのか…」

「今までに跪なかったのは悟りを開いたものばかりだったぞ、君も何か悟ったのかね?」

「さぁな」


閃太はどうでもよさげに答える。


「桃崎閃太君」

「ん?急に改まってどうした?」


男もとい神は、先ほどのニコニコした顔は引き締められ真剣な表情をしている。




ー異世界に行く気はないか?ー






これが閃太の運命を変える言葉だった。

































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