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卒園式と放課後デート

校長の長い話、PTA 会長の長い話、その他な偉い人の話も終わり、卒園式も幕を閉じた。いつもの帰り道、閃太は今朝のメンバーで下校している。


「グスッ…私たち卒業したんだね…ひくっ」


このメンバーの中で一番涙脆い倉木が、嗚咽をもらしなきじゃくっていた。


「あぁ、そうだな…」


岩橋も結構ぎりぎりだ。閃太だけは、ケロッとしている。


「明日どっか遊びに行かないか?」


閃太が呑気に提案する。


「私たち明日合格発表でしょ…」


泣き止んだ倉木が軽く返す。その発言で岩橋はその場でから動かず、顔をうつめかせてしまう。


「岩橋どうした?」

「岩橋どうしたの?お腹でも痛いの?」


二人が心配するが、岩橋は顔をぶるぶると横にふった。そしてその重い口を開く。


「明日合格発表だろ?俺落ちてるかもしれん…」


その発言で倉木は少しだけ顔をしかめる、閃太は、


「このチキン野郎!ビビりすぎだろ!」

「しょうがないだろ!俺この中で一番頭よくねーもん」


頭がいいと言っても閃太は中の下、倉木は、中の上くらいである。因みに岩橋は下の中くらいである。

閃太が受けた高校は地元の普通の学校だ。志望理由はただ単に近いからだ。倉木も閃太と同じ高校を志望している。理由は家から近いのと、好きな人と同じ高校にいきたかったからだ。岩橋は、地元から少し離れた工業高校を志望している。


「二人共、明後日どっか遊びに行かない?」


倉木が強引に話題を反らす。その提案に二人が頷き、話題が変わる。


そんな話をしているうちに岩橋の自宅の前についた。


「お二人さん、じゃあな!」


岩橋が家に入るのを見届けた後、閃太はちらりとスマホを見る。時刻は昼前、昼食にするにはちょうど良い時間だ。


少しの間二人は大通りを肩を並べて歩いていく。


「どっかで昼飯でも食べてくか?」

「いいね、なら早くいこ?」


そう言って倉木は小走りに駆け出していく。


「おい、ちょ、待てって!」


そうして閃太は倉木の背中を追った。







☆★☆★




「いらっしゃいませ」


自動ドアを潜ると電子音とともに作り笑顔の店員が挨拶してくる。ポテトの揚がる良いにおいが二人の鼻をくすぐる。いま二人がいるのは大通りにあるハンバーガーチェーン店だ。


「本当にいいの?私財布持ってきてないよ?」

「大丈夫だ、俺がおごってやるよ…」

「でも…」

「卒業した祝いだ、気にすんな」

「う、うん…」


ここにくる前、倉木が鞄の中から財布の中を確認しようとして鞄を調べたが、今日は卒業式だから家に置いてきたことを思いだし、家に帰ると言っていたが、閃太が無理矢理連れて来たのだ。連れてこられていたとき、逃げられないように手を繋がれて、顔を赤くしていたのは乙女の秘密だ。


「ご注文お決まりでしょうか?」


カウンターの前に行き、二人はそれぞれ注文していく。


「俺はダブルチーズバーガーのLセットと…後、単品でハンバーガー一つ」

「私はチーズバーガーのMセットで」


二人でメニューとにらめっこしながら頼む。


「お飲み物はお決まりでしょうか?」

「コーラで」

「私,ジンジャーエールで」

「少々お待ちください」


いかにもマニュアル通りの受け答えの後、閃太はぐるりと店内を見渡す。昼前だからか幾つか空席がある。


「座れそうだな」

「だね」


と二人で話していると注文したハンバーガーができたので店員に代金を支払い、二人で席についた。倉木は閃太と対面するように座り、二人ともモグモグとハンバーガーを食べていく。しばらくして、ジンジャーエールを飲んだ倉木が口を開く。


「結局明後日どこ行くの?」

「そういや決めてなかったな、お前はどっか行きたいとこあるか?」


倉木は少し考えた後、


「私は特に希望はないかな…でもできることなら二人っきりになれるところが…」


最後の方は声が小さかったが一生懸命言葉を紡ぐ。


「え、最後の方なんだって?」

「な、なんでもない!訳でもないけども関係なくもないと言うか…」

「そうか?」

「そうなの!」


と倉木に押しきられ、二人ともしばらく眼を泳がせる。


「そうだ、明後日は隣町のショッピングセンターで良いか?」

「いいけど、どうして隣町なの?ショッピングセンターならこの町にもあるのに」

「どうしてって近くに公園あって二人っきりになれそうだから」

「え!?」


閃太の言葉を耳にして倉木は完熟したトマトみたいに赤くなる。


「つまり二人っきりになりたいんだろ?…岩橋と」


急に倉木の顔色が戻り、眼を点にする。閃太はどや顔で倉木を見つめる。

しばらくの沈黙、先に口を開いたのは倉木だった。


「は?」


余りにも、予想の斜め上をいく答えに、素手聞き返してしまった。


「ドヤッ」

「いやいや、どや顔されても困るから!なんで私が岩橋と二人っきりにならなきゃいけないの!?」


倉木は鬼気迫る表情で閃太に問う。閃太は不思議そうな顔で


「え、倉木って岩橋のこと好きなんじゃないのか?」


どうやらその言葉は地雷だったようだ。倉木の視線が冷めたものになる。もともと整った顔立ちなので冷たい表情がとても怖い。


「あの、倉木さん、ドウナサイマシタカ?」


そこにいた倉木の回りにはブリザードが吹き荒れていた。


しかし、唐突にその冷たい視線は涙目にフォルムチェンジ。


「も、モモの鈍感ヘタレヤンキー!」


そう叫んで店を出ていってしまった。


「お、おい!ちょ!待てよ!」


閃太とは本日二度目の倉木の背中を追った。






☆★☆★





倉木はハンバーガーチェーン店から50mほど離れた交差点にいた。信号が赤なのでしっかり待っている。閃太はその間に倉木都の距離を積める。あと5m と言うところで信号が青に変わってしまう。

倉木は小走りに閃太から逃げようとする。そのせいで左右の確認を省いてしまう。


突然のクラクション、倉木がクラクションの鳴った方を見る。そこには大型トラックが倉木目掛けて結構な速度で迫ってきている。


少女はその場から動かなかった。否、足がすくんで

動けなかった。迫りくるトラックがクラクションを響かせながら突っ込む姿は雄叫びをあげながら突っ込む獣のようだった。


「倉木!」


閃太は吠える。


閃太は走る。倉木に向かって


5m…4m…3、2、1


そのまま倉木を押し倒そうと手を伸ばす。



ー届け!届け届け届け、届け!ー




そのまま倉木を押し飛ばすことに成功する。しかし

倉木の代わりに閃太がトラックに跳ねられる。



ドゴン!



閃太の身体の右側面に大きな衝撃を食らう。そのまま閃太はバウンドしたボールのように放物線を描きながら、7mほど吹っ飛ぶ。まともに受け身もとれず、アスファルトに叩きつけられる。頭から落ち、閃太はそのまま気を失ってしまう。



無慈悲にもトラックはまだ閃太に向かって突っ込んでくる。それに抗う術もなく、閃太は、二回轢かれてしまう。そのままそこには見るも無惨になった肉の塊と血の水溜まり、泣き叫ぶ少女、野次馬だけになった。


3月18日、桃崎閃太の死、それは余りにも唐突だった。
































駄文、更新遅くてすいません。

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