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妹と俺が入れ替わった  作者: どんどこどん
日常の再開
9/10

代わりな替わり

 屋上。

 昼休み。

 俺は今そこに、『俺』の姿をした咲と、一緒にいる。

 既に売店で食料確保はしてある。今日は弁当じゃないからな。

 日陰に(一応スカートに注意して)腰掛ける。


「疲れた・・・」


「お疲れ様」


 いや、普通逆だろ。

 俺が労うべきだろ。


「そっちは、どうだったんだ?」


 とりあえず、労う為のネタを探す。


「普通」


 咲は、カレーパンを食べながら続ける。


「普通に、簡単」


「はぁ?」


 俺は、焼きそばパン(一日限定十五個)にかじりながら、聞く。


「お兄ちゃんを演じるなんて、今まで見てきた私からすれば、歩くのより簡単」


「えぇ・・・?」


「つまり、誰と何をしようと誰も違和感を持たない」


 俺は危うく焼きそばパンを落としそうになる。

 誰と何をしようと・・・?


「例えば、浮気することで橘さんと別れる」


「っ!?」


「他の女を寄せない為には・・・」


 咲がニヤリと笑う。


「男同士」


「っ〜〜〜〜!?」


 お、と、こ、同士!?

 つまり、咲が、いや俺がか?が、男と・・・あんなことやこんな事を・・・?

 う、うわぁぁぁぁぁ!?

 ・・・。

 想像してしまった・・・。

 今、目の前にある俺の顔が他の男の・・・ブツを・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 また、想像してしまった・・・。

 なんか、体がムズムズっていうか、モヤモヤしてきた・・・。

 男のブツを想像した瞬間、腹か腰のあたりがキュンって感じになって・・・。

 咲にキスされた時とは違う感じで、心がじゃ無くて、体がキュンとして・・・。

 なんか、キスの事を思い出したら・・・また変な感じに・・・。


「安心して、冗談」


 恐らく、俺の顔が真っ赤になってるのか、咲がフォローを入れた。

 なんでお前はそんなに冷静なんだよ・・・。

 俺は気を取り直し、また焼きそばパンにかじりつく。

 ・・・やっぱり。おいしいな。


「お兄ちゃんの初めては私の初めてと一緒に喪失させる」


「そ、喪失!?」


 俺は焼きそばパンを落としそうになるが、咲がキャッチしてくれた。


「はい」


「あ、ありがとう」


 俺は焼きそばパンを受け取る。

 ・・・俺と咲が一緒に初めてを喪失する。

 つまり、咲に、俺の・・・。

 いや、今は咲が俺に・・・か?

 ・・・想像するの、やめよ・・・。

 俺は増幅したモヤモヤ感を無視しつつ、既にカレーパン×2を食べ終わった咲を横目で見上げる。


 咲は、本気で言っていたのか・・・?

 こんな、澄ました顔で?


「・・・まだ、体は適応しきってない」


「は?」


 いきなりなんだ?


「昨日は全く立たなかったけど、今日はよっぽど抑えないと立ってしまう」


 俺は、思わず咲の腰に目を落とす。


「 (°_°) 」


 言葉に出せなかった。

 だって、だって・・・。


「それは、そっちも一緒みたい」


「どこがだよ」


 俺は焼きそばパンの最後を口に運ぶ。

 俺は、そんな欲求は得ていない。

 そもそも、妹の体でそんなことはしない。


「・・・足」


「っ!?」


 俺は、思わず足を開く。

 なぜなら、無意識に俺は足を擦り合わせていたから。

 まるで、何かを求めているみたいに・・・。思えば、咲とのキスを思い出してからだ。

 足を開いたことで、何かが足りない様な、そんな気持ちになってくる・・・。


「ここで、ヤッチャウ?」


「咲!冷静になれ!」


 俺は思わず立ち上がる。

 咲の方は分かるが、俺の方はわからない・・・。そんな、そんな状況で・・・。


「咲のは、しょうがないことだ!それが、普通だ!俺の方は何がどうなってるのかよくわかんないが、そんな状況で、危ない事になったらどうするんだよ!」


「え・・・?」


「ど、どうした?」


 咲が、心底驚いてそうな顔になる。


「いや、わからないなら・・・いい。それより、て事は、お兄ちゃんがモヤモヤしたりムズムズしたりキュンキュンしたりしなければ、いいんだ?」


 どうして、咲が俺の症状を知ってるのかは知らないが、それよりも大切な事を忘れてた!


「そもそも、兄妹なんてダメだ!」


「じゃあ、将来お兄ちゃんは男とするの?」


「そ、それは・・・元に戻れば・・・」


「戻れなかったら?私は、一応心は女だしBLにもGLにもならないと思うよ?」


 確かに、男とするなんてもってのほかだ。

 だけど、それはあくまでも・・・、


「戻れなかったら、な」


「む、無理だよ!戻るなんて!手がかりもないし、それに私も邪魔するし!だから、諦めてよ!」


 だけど。

 だけどな、咲。

 例え方法が分からなくても。

 例え誰かに邪魔されても。


「俺は、諦めないから。安心して、待っててくれよ」


 そう言って、俺は咲を残して屋上の扉へと向かい、中に入ってから扉を締める。


 予鈴が鳴ったのは、それから間もなくしてからだった。

健介「・・・」


美緒「・・・?」


咲「・・・」


 何だなんだこの雰囲気は・・・。


 湿ってやがる・・・。


美緒「?」


咲「・・・な、何もない」


 何を考えてるのかな?


咲「・・・何もない」


 妹ちゃんは言論で初勝利だね。


健介「・・・うるさい」


美緒「どうしたの!二人とも!


健介「え?二人?」


美緒「?二人じゃん。健介君、咲ちゃん」


 ちなみに、この声は君たちにしか聞こえてないよ。


健介「な、何でもない・・・」


美緒「そお?」


健介「なら、呼び方・・・」


 わかったよ。健介君。


健介「!」

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