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妹と俺が入れ替わった  作者: どんどこどん
第一章◇入れ替わり
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入れ替わりな始まり

 体が揺すられてる。結構強く揺すられてる。

 何なんだ?まだ目覚まし時計も起床を強制してないと言うのに。俺を起こす奴は。

 俺を起こす人はいない。むしろ俺が妹と叔母さんを起こしている。

 だから今日はいつもとは違うのだ。

 まぁ、この揺すらす力の強さ的に考えて、叔母さんかな?

 妹はこんな強い力はでない。二十代で長身な叔母さんなら辻褄が合う。

 推理完了と言うことで俺はまだ重い瞼を開こうともせずに、来訪者に声をかける。


「叔母さん・・・?ですか?」


 来訪者はなにも言わない。目を開ければいいと思うが、俺と妹はどちらも低血圧な朝弱いタイプなんだ。

 妹のほうが、弱いんだが。

 と、さすがに来訪者が揺するのを止めて沈黙が長すぎる。聞こえなかったのか?

 ・・・もう一回言うか。


「叔母ふぁんでふか・・・」


 言葉の途中で、俺は頬を伸ばされ、嫌でも眠気が覚める。

 何なんだよ・・・一体。

 さすがにイラついたので俺は目を開けた。

 視界の先には俺の頬を引っ張る、黒髪の高校生くらいの男がいた。

 あれ?家に男っていたっけ?

 あ、そっか。『俺』がいた。ていうか、この顔は俺だ。


「え・・・?」


 意識が覚醒した。

 おかしい。どうして『俺』が目の前にいるんだ(しかも俺の頬を引っ張りながら)。

 俺は双子だが、それは妹との話だ。

 まさか、三つ子だったのか!?俺は。


「起きた?咲」


 そう言っていつもの口調で俺の頬から手を離す『俺』。

 『俺』は膝立ちになっているようだ。

 って、ちょっと待てや。


「さ、咲?」


 思わず呟いた、咲。それは花が咲く。の咲。

 そして、俺の妹の名前でもある。


「どうした?まだ眠いか?」


 優しい声で俺の頭をやけに大きく見える手で撫でる『俺』。

 なんか、落ち着くな・・・。

 って、そんな場合じゃない。『俺』がそこにいる。と言うことは、俺はどうなってるんだ?

 嫌な予感を嫌々感じつつも、慌てて起き上がって、俺は『俺』に聞く。


「か、鏡!」


「あそこ」


 まるで妹の部屋のような部屋の中央に、まるで用意されたかのように全身鏡が置いてあった。

 その、鏡にはベッドから起き上がった一人の小柄な少女がいた。

 少女は薄く紫が混ざった綺麗な黒髪を腰まで伸ばし、ジャージを着ていて、驚いたような、まだ眠そうな顔でこちらを見ていた。

 その、まだ成長が見込めると俺が見込んだ少女は、間違いなく俺の妹だった。

 そして、俺の写る鏡に妹がいた。

 呆気に取られる俺に『俺』が話しかけてきた。


「理解した?咲。いや、健介お兄ちゃん」


「え・・・あ・・・」


 俺は、まともに言葉を返せなかった。


 ベッドの横で膝立ちして、俺を見る『俺』。


 鏡の中で、俺が写るはずの鏡の中で、らしくない表情を浮かべる『咲』。


「お、お前は・・・」


 俺は震える指で『俺』を指差す。


「お前は・・・咲・・・なのか?」


「うん。私」


 簡潔に、涼しい顔で答える『俺』。いや、咲。

 つまり、どういうことだ・・・?理解できない・・・。


「私とお兄ちゃんが入れ替わった。ただ、それだけ」


「っ!」


 俺が目を背けて、目を向けないで、理解しようとしなかった事実を咲は俺に突き付けてきた。

 特に思うところがないように。否、少し嬉しそうに、咲は言った。


「私ってこんな風に驚けたんだね」


 咲は俺の、いや。『咲』の体の髪に手を触れ、咲は呟く。

 自分を卑下するようなその台詞も、どこか声が弾んでいる気がした。


 ・・・何なんだ。その台詞は。

 いてもたってもいられなくなった俺は、髪に触れる『俺』の腕をつかんだ。


「・・・?どうかした?お兄ちゃん」


「咲・・・お前が咲だって名乗るなら・・・そんな、そんな自棄な態度をとらならないでくれ・・・」


 俺だって、おかしくなりそうだ。でも、『俺』が咲だって言うんなら、俺は『俺』を、咲を支えなくちゃならない。

 そんな、まるで諦めているような言葉は咲には言ってほしくない。

 もう二度と、俺は咲を傷つけたくない。

 俺は、無意識に力を込めて、腕を握る。


「絶対・・・俺はこの体をお前に返してみせる。方法も探してみせる。だから咲。お前は───」


「お兄ちゃん」


「──────っ!?」


 俺の言葉を遮るように、咲は左腕で俺の腕をつかみ、一瞬。力を込めた。

 痛い。痛い。痛い!?

 思わず俺は掴んでいた咲の右腕に更に力を込めてしまう。

 だが。


「わかった?」


「はぁっ、はあっ・・・」


 ようやく俺の腕を離した咲に、俺は思わず壁際まで距離をとった。

 ジャージを捲って腕を見ると、腕は痛々しく赤くなっていた。

 そして何故か、俺の体は震えていた。

 震えが止まらなかった。


「お兄ちゃん。私を助けてくれるなら───」


 咲は立ち上がって、いつもと同じようで違う口調で、いつもより多い口調で、信じられないことを言った。


「───私は、元の体に戻りたくない」


「さ、咲・・・?」


「その、お兄ちゃんに守られてばかりの体に戻りたくない。ちょっと力を込めただけで壊れそうになる体に戻りたくない。私は、お兄ちゃんと一緒にいたい。私は『一生』、お兄ちゃんと一緒にいたい」


 明らかに、いつもの優しく可愛く静かな、口調とは違う。


「私は、『一生』お兄ちゃんを守る」


 強く、重い口調だ。


「だから───」


 その口調のまま、咲は言った。


「私は、この体を返さない」

 ◇ ◆ ◇


 はい、ということでぇ、入れ替わりましたぁっ!


健介「ま、待てっ!どういうことだ!」


 いやいや、読者の皆様は理解してるよ。それに声可愛いね。


健介「なんなんだよ、これ!咲の体っ!?俺が何をしたんだよ!」


 表情がよく動くなぁ・・・。持ち主よりベストマッチなんじゃないか?


咲「やっと・・・やっと・・・」


健介「ていうか、お前は何者なんだ!どうして俺の体にいるんだ!」


咲「だから、言ったでしょ?健介お兄ちゃん」


 うわぁ・・・。こっちは声に口調でバッドマッチだ。


咲「でも、これで色々できる・・・」


健介「え、えっと・・・なんか笑顔が怖いぞ・・・?」


 案外健介は美形野郎だったから、クールなそういう笑みも似合うな。これはこれでベストマッチかもしれない。やっぱり。


 と言うことで、閲覧ありがとうございました。

 まぁ、やっぱり。爆ぜよリア充、弾けよイケメン。だな。

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