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妹と俺が入れ替わった  作者: どんどこどん
日常の再開
10/10

憤りな行動

 学校に、チャイムが鳴り響いた。

 つまり授業が終わり、放課後になった。と、言う事だ。

 今日一日、俺は特に目立つ事をせずに、できる限り咲を演じた。

 授業では指名されなかったし、話しかけられたりもしなかった。

 ぶっちゃけ、喋っていなかっただけだった・・・。

 だが、まぁそれは、咲も一緒だろう。

 こんな状況の時に、必要以上に目立とうとする訳が・・・、


「佐藤君、速く行こう!」


「ちょっと!あんた佐藤君から離れなさいよ!」


「二人とも邪魔!私が一緒に・・・」


「健介君!私は彼女だよね!?」


「・・・」


 なんだ、あの状況。

 開いた口が塞がらなかった。

 俺が、美緒を含む四人の女子に囲まれている?

 ハーレムの中でモテモテになっている?

 目立ちまくっている?

 ・・・ちょっと、待て。

 どうして、こんな事になってるんだ?


「!」


「・・・フフ」


 俺と一瞬だけ目があった咲は、そのまま四人女子と一緒に歩いて行ってしまった。

 ・・・え?

 いつも通り、一緒に帰るんじゃないのか?

 こんな時に、別行動?

 俺は、憤りを感じていた。

 演じろって言ったのは、咲じゃないか!


「行っちゃったね・・・咲ちゃん」


「っ!?」


 突如、後ろから聞こえたイイ声に俺は思わず振り返る。

 そこには、知っている顔があった。


「正也・・・」


「ん?名前呼び?」


 兼子正也かねこまさや

 伊達メガネをしている、スポーツ勉強共に優秀な、俺の親友。

 成績は常にトップ10。体力テストはA。

 イケメンなのだが、どこからとも無く個人情報を入手したり、変態的な言動をしたりするので、面白い友達止り。

 彼女は、今までで0。


「・・・兼子」


 俺は、ジド目でそう返した。

 ・・・今の俺は咲なんだ。

 咲は、正也に対して(他の人にもだが)いつもドライだ。

 それを忘れない様にしないと・・・。


「おっと?もしかして、心の中では僕に対して名前呼びをしているのかな?」


「してない」


「ま、そりゃそうだ」


 俺の切り返しにあっさり納得する、正也。

 ・・・本当は、心の中では名前呼びなんだが。


「・・・それより、いいのかい?健介行っちゃったよ?」


「・・・別に」


 態度に怒ってはいるが、言われるまでもない。


「本当、あいつ鈍感だよな・・・。なんか今日はいつもより、イケメン度が増してたが・・・」


 ・・・。

 悪かったな、いつも鈍感でイケメンじゃなくて。

 って、え?

 どうして、正也が咲にそんな事言うんだ?


「どうして、鈍ーーー」


「見た感じ」


 言う前に答えられた・・・。

 こいつは、鋭過ぎる。

 美緒との仲を取り持ったのも正也だし、聞くところによると、他にも正也のお陰で恋愛が進展した人は多いらしい。

 俺は、正也を横目で見上げる。

 ・・・こいつは、どう言う意味で俺に・・・咲に健介が鈍感だと言ったんだろうか?


「・・・」


 わからない。

 正也の視点が、わからない・・・。

 こいつが何を見ているのか、俺には想像もつかない。


「咲ちゃん。いいのかい?行かなくて」


「どうして、そんなことを?」


 素直に疑問に思い、俺は聞く。


「・・・。好きな人を追いかけるのは当たり前だろ?」


「っーーー!?」


 俺は、驚きを隠せない。

 正也は、気づいていたのか・・・?

 俺が全く気づけなかった、咲の気持ちに・・・。

 だから、諦めさせる為に俺に美緒を紹介したのか?


「嫉妬、しちゃだめだよ?」


「し、嫉妬!?」


「・・・今日は、咲ちゃんもいつもと違うね。なんと言うか・・・可愛らしい」


 俺から顔を背け、それだけ言って正也は玄関に行ってしまった。

 こちらに一度も振り返らずに、顔を一度も向けずに行ってしまった。

 ・・・。

 あいつの言葉はスルーだ。

 それよりも、嫉妬・・・。

 俺は、俺の胸に手を当てる。

 俺は咲に嫉妬していたのか・・・?

 美緒を取られたと思って?

 だから、あんなに憤りを感じたのか?

 こんなに、イライラしているのか?

 それとも・・・、


「・・・」


 それ以上は、考えないことにした。



 ◇ ◇ ◇



 仕方が無いので、俺は一人で帰っていた。

 他にも何人か人が俺を追い越して行くが、あくまで俺は一人で歩いている。

 考えてみれば、一人で帰るのは初めてかもしれない。

 いつも咲のことを心配して、一緒に帰っていたからな・・・。

 ・・・。

 一体、咲は何がやりたかったんだろうか?

 いつもの俺よりも完全に目立って、あんなハーレムを作っているなんて・・・。

 社交的とは言えなかった咲が、演じろって言った咲が、どうしていつもと違う行動をしているのだろうか?

 ・・・、

 ・・・・・・。

 考えても、埒が明かない。

 俺は、左手で持っていた鞄を右手に持ち替える。

 いつもは俺が持っていて、軽く感じていたが、今となってはかなりの重量だ。

 ・・・。

 仕方が無いので、よく女子がやっているように、胸元で両手をつかって鞄を抱える。

 確かに・・・楽になった。

 俺が女子みたいな事をするのは、断じて嫌だったが、今は仕方が無いと思った。

 で、どうしようか・・・。

 俺は歩きながら考える。

 このまま家に帰るより、スーパーに行って食材を買いに行った方がいいかもしれない。

 いつもは咲と一緒に行っていたが、咲があの様子じゃあしょうがない。


「はあっ・・・」


 俺はため息をついてから、スーパーへと向かった。



 ◇ ◇ ◇



 スーパーで、お買い得品を俺はカゴに入れていく。

 ・・・正直、重い。

 持ちきれないので、鞄ごとカートに乗せた。

 咲は、いつもこんなに大変な思いをしてたんだな・・・。

 体が小さめの咲には、鞄も荷物も大きく見えたに違いない。と言うか、俺は大きく見えて仕方が無い。

 お、豚肉が安いな・・・。

 でも、今買ってる物の中じゃあ豚肉は合わないな・・・。

 まぁ、明日にでも使うか。と思って、俺はハッとなった。

 ・・・。

 俺、今料理できないじゃん・・・。

 しょうがないので、咲にレシピを渡して作ってもらうか・・・。

 咲には悪いが、飢え死にするわけにも、叔母さんを放っておく訳にもいかない。

 さすがに、いくら今の咲でもそれくらいはしてくれるだろう。

 してくれる・・・よな?

 俺は、重いカートを再び動かし、買う商品選びを再開した。

 そして、


「あれ?今日は一人?」


 ・・・レジで話しかけられた。

 その人はレジのお姉さんで、いつも俺と咲に話しかけてきていた人だった。

 明るく、親切な人だ。


「はい」


 俺は簡潔に答えた。


「じゃ、カゴを置いてくれる?」


 ・・・、

 ・・・・・・、

 ・・・・・・・・・。

 俺は何とか、カゴを指定された場所に置いた。

 重かった・・・。

 かなり、限界を感じた。


「だ、大丈夫?」


「・・・はい」


 労いの声に、俺は心配かけまいと答える。

 正直に述べれば、大丈夫じゃない。鞄もあるので、家に帰れるか怪しい。


「じゃ、会計っと・・・」


 そう言って、レジに商品を通していく。

 慣れた手つきで、あっという間に商品は無くなった。


「合計1800円、ね」


 ちょっと、買いすぎたな・・・と思いながら、俺は、ポケットから財布を・・・?

 ここで、俺はやっと気づいた。

 ・・・財布持ってきてねぇ!

 昼飯は、咲が買ってきたのを食べた。

 そして、今は咲の体。

 履いているのはスカートで、ポケットなどはない。

 いつもの様にズボンのポケットに財布が入っていない。

 咲の鞄にも財布は入っていなかった。

 つまり、金が無い。


「・・・!」


 ど、どうしよう・・・。


「?妹ちゃん?」


 さすがに不審に思ったのか、店員さんが聞いてきた。

 ・・・。

 よし。

 俺が答えようとした、その時。


「咲、忘れ物」


「え・・・?」


 狙い澄ましたようなタイミングで、後ろから咲の声ーーー俺の体の声ーーーがして、俺の頭に何かをポン、と乗せた。

 それは、財布だった。


「兄貴君、ちゃんと妹ちゃんの面倒見なきゃダメでしょ?」


「はい、すみません」


 普段の俺ができないような綺麗な笑みで、咲は店員さんを宥めた。

 だが、俺は料金を支払う咲の顔を見ながら、思った。

 きっと何か、ある・・・。

 ハーレムを作って、俺に1人で行かせて、また完璧なタイミングで戻ってくる。なんて出来すぎだ。

 恐らく、咲は何かを狙っている・・・。

 いつの間にか、俺は咲に警戒心を抱いていた。



 ◇ ◇ ◇



 帰路。

 俺は、疑問を咲にぶつける事にした。

 鞄と荷物を軽々と持って前を進んでくれているのは、ありがたいが、それとこれとは話が別だ。


「咲!」


 咲の高い声で、咲を呼ぶ。


「ん?なんだ?」


 咲は俺の声で返し、横目で後ろを見ていた。


「放課後のあれは、何なんだ」


 もちろん、ハーレムの事である。


「あれ?」


 ニヤニヤしながら、咲は答える。

 こ、こいつ・・・。


「あれって?一体なんだ?」


「お前が女子に囲まれてた事だよ!」


 俺は、顔を真っ赤にしながら答えた。

 これじゃあ、彼氏彼女みたいだ・・・。


「どうして、咲がそんな事言うんだ?」


 咲はあくまで俺の口調で答える。

 くそ・・・。

 俺は言い返せない。


「もしかして、嫉妬か?」


「そ、そんな訳あるか!」


 正也の言葉が頭に蘇り、俺は動揺してしまい、目を背ける。

 俺は、咲に嫉妬しているんだ。

 女子になんて、嫉妬してるはずが無い!


「・・・。咲」


「う、わっ!?」


 咲がこっちに振り向いて止まっていたらしく、俺は咲の胸元に突っ込んでしまった。

 そして、優しく抱きしめられる。

 ・・・。


「・・・」


 突然で驚きはしたが、温かく落ち着く状況に、俺は安らぎ、目をつむった。

 いつの間にか、咲は俺の頭も撫で出していた。


「ぁ・・・」


 気持ちいい・・・。

 思わず言葉を漏らした瞬間、


「っ!」


 俺は咲から突き離れた。


 俺は、思わず安心してしまっていた。

 女子はどこに行った?など、聞きたい事はまだまだあったが、あっさり俺は黙らされていた。


「どうした?咲?」


「な、なんでも・・・なぃ」


 真っ赤な顔を背けながら放たれた言葉は、消えかかってしまっていた。



正也「こ、ここどこだ?」


咲「正也」


健介「・・・え?どうして?」


美緒「正也君も?」


 新ルートが増えたって訳だ。


健介「・・・よくわからない」


 いずれ、わかるさ。


正也「どうした?咲ちゃん」


健介「何も、ない」


美緒「なんか・・・怪しいなぁ」


咲「そ、そうか?」


 際どいので、切ろう。


 次回は、キャラクター紹介再開かな?

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