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その2 お手伝いをしよう

お気に入り登録をしてくれた方、ありがとうございます。

他の作品もなるべく早く更新したいと思いますので、生暖かい視線で見守ってください。

「ニトラ、お願い。お兄ちゃんお弁当忘れていったみたい。これ親衛隊まで届けてくれる?」

「いいよー」


 正午前、長男が珍しくお弁当を忘れて行ったという事なのでお手伝いすることに。

 軽い返事をして、お母さんからお弁当を受け取る。

 それにしても重かった。

 どれだけ食べるんだよ、と心の中で突っ込みながらバッグの中に無理やり入れる。

 それをリュックみたいに背負う形にしたら準備万端。


「行ってきまーす」

「いってらっしゃい、怪我しないようにするのよ」


 お母さんにそう注意されたけれど、もう玄関先で小さな石に躓いて転んだとは言えない。

 お弁当大丈夫かなぁ。

 もう十分に転び慣れているので、自分の事を心配する事はなくなった。

 むしろお兄ちゃんのお弁当が心配。

 あの美形で優しくて超完璧なお兄ちゃんが、私のせいで形の崩れたお弁当を食べていると思うと申し訳なくなる。

 それでもお兄ちゃんは優しいから食べてくれるだろうけど、自分ならともかくお兄ちゃんに恥をかかせることなんて絶対にできない。

 ここでもうお分かりだと思うけど、私ブラコンです。

 ブラコンで何が悪い。

 こんなイケメンなお兄ちゃんをもって逆にブラコンにならない方がすごいと思う。


 あっ、そうそう。

 まだ家族の事を詳しく説明していなかったけど、


 お母さんは有名なデザイナーの仕事に務めている。仕事場では普段と違う顔してるけれど、家ではすごく優しくて家族皆を包んでくれるなくてはならない存在だ。


 お父さんは今年でもう四十代後半になるけれど、現役の親衛隊隊長に務めている。その腕前は伝説の四剣士とも謳われたほどの実力だ。

 ざっくばらんとした性格で、怒ると怖いけれど私にものすごく甘い。


 長男――マルクは、二十四歳という若さで親衛隊の副隊長まで上り詰めた頼もしいお兄ちゃんだ。努力家で家族の事を一番に考えてくれる優しい人で、いつも私の相談にのってくれる。

 いつか綺麗で優しい彼女ができるといいなーなんていう密かな願いは、私だけの秘密だ。


 次男――レオンは、王宮の優秀な使用人として陛下の下でせっせと働いている。だからたまに、私も王宮に連れて行ってくれるんだけどものすごいとは言い切れないほど広かった。

 初めて見た時は思わず感動した。身体が硬直するほどに。

 そしてまた今度、一緒に見学をしに行くと約束した。

 もちろん陛下には許可を貰ってますよ!! じゃないと私ただの不審者じゃないか。


 三男――リオは、家族の中で一番喧嘩っ早い。今は親衛隊の第三軍の司令官として働いてるけど、もしかすると拳だけの喧嘩なら家族で一番強いかもしれない。

 でもいつも怖い男に私が絡まれているのを発見すると一番に駆けつけてくれる。

 その後、その男はボロボロにされたなんて言うまでもないけど。



 家族については私が話せるのはこれだけだけど、ものすごく皆さん優秀なのが分かる。

 それに比べて私は……。

 運動音痴で特に自慢できるほどの特技はなく美人でもブスでもないと。

 え? これだけ?

 自分でもびっくりするほどの目立ちようのない自己紹介だったが、まぁ有名になるほど面倒臭いし平凡が一番の幸せだからそれはそれでよしとする。


 しばらくすると親衛隊の基地となっている建物が見えてきた。

 確かマルクお兄ちゃんは、えーっとこっちの執務室にいるはず。

 幸い方向音痴じゃなかった私は、いろいろ記憶を辿って無事マルクお兄ちゃんの執務室に着くことができた。でも、お弁当さっき転んだから無事か分からないけど。


「お兄ちゃん、お弁当持ってきたよ」

「あぁごめん。すっかり忘れてたよ、ニトラありがとう」


 そう言いながら、微笑むマルクお兄ちゃんはまるで天使のよう。

 私も微笑み返すと頭をポンポンと優しく叩かれた。

 この大きくて優しいマルクお兄ちゃんの手が好き。


「でも、さっき転んじゃった。中身崩れてたら……」

「そんなの全然気にしないさ。それにニトラがお弁当を持ってきてくれるなんて、すごく嬉しいよ。本当はこれからもずっと持ってきて欲しいんだけどな」


 え? 本当に?

 それじゃあ毎日お弁当持って行きますよ、何て恥ずかしくて言えなかった。


「でも危ないから今のは冗談。どうせだったらもっとゆっくりしていきなよ。その方がお父さんも喜ぶし、この後ニトラも暇だろ?」

「うん」


 残念だったなー、ソファーに座りながらちょっとがっかりする。

 マルクお兄ちゃんはそんな私に苦笑しながら、ちょっと形崩れたお弁当を淡々と口に運んだ。

 「ニコラも食べる?」って言って自分が食べた箸で差し出された時は、家族なのに無性に恥ずかしかった。

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