その1 転生者の呟き
あの夏の日のあの日、私の17年間の人生はあっけなく幕を閉じた。
普通に気が付いたら死んでたっていう感じで。
でもまさかあの時滅多に車が通らない山道で大型トラックに撥ねられるなんて思いもしなかった。
今思えば油断していた自分がばかだ。
音楽を大音量で聴きながら山道歩いていたから後ろから急ブレーキをかける音すらも分からなかったし、撥ねられた直後も頭がついていけなくて痛みなんかなかった。
さすがに地面に叩きつけられた時は尋常じゃないほど痛かったけど。
それでこのままじゃ死んじゃうなーとか思ってたら、本当に死んじゃったし。
もうこの時点でいろいろ諦めたわ。
こうして私の十七年間の人生は終ったわけだが、これで話が終わりというわけじゃなかった。
どうやら、まだまだ話は続くらしい。
「これで天国にいってお終いだったはずなのになぁ……」
そう、私はあの後天国に(存在するか分からないけど)行くはずだったのだ。
なのにこんな理不尽な死に方をした私を神様は哀れんだのか、私はいらないのに転生させてくれた。あの後本当にどうなるのかは分からないけど、とりあえず面倒臭いことに巻き込まないで欲しい。
おまけに異世界ってどういうことや!!
どうせ転生するならもう一度日本に生まれ変わりたかった。
魔法と剣が存在するハイスペックな世界で生きてけるのかすごい不安なんだけども。
そんな私には、二人の超が付くほどのイケメンのお兄ちゃんが三人います。
これだけは転生してよかったと思う。
だって前世のお兄ちゃんは一言で言えばまともじゃなかった。
いつも自宅警備員でこれを世の中の人はニートというが、家の手伝いなんか一切しないしお風呂とトイレの時しか部屋から出てこない。
そのくせ偉そうな口で、お前何様だよ!! お口だけは立派ですねって言ってやりたかった。
それに比べてこっちのお兄ちゃんはイケメンだし優しいし何より家族を大切にしてくれる。
ちょっと過保護な面はたまに傷だけど、それでもこっちの方が何倍もましだった。
お陰様でちょっと私も優しくなったよ。
前世では棘の入った言葉を言いたい放題だったけど今ではちゃんと控えめに言えるようになった。
でも一回近所の子共を泣かせたときは殺されるんじゃないかというくらい怒られた。家族皆に。
だから反省して今は近所の子共達とも仲良くしてます。
そんなこんなで十年。
今年で十一歳になる私は、明日はじめて魔法というものを習います。
ちなみに学校はない。一言で言えば、いらないからだそうだ。
基本学校で退屈な勉強というよりも、皆で楽しくレッスンみたいな感じでゆるかったし。
まぁ楽しかったからそれはそれで結果オーライ?
でも一言だけ言わせてくれ。
昔から運動音痴な私が魔法を使うなんて無謀すぎる。
生まれ変わったんだから運動くらいはましになってると思っていたら全然違かった。
むしろ逆にもっと酷くなったような気がする。
ニトラ=パープル十歳、修羅場です。いや、ピンチと言うべきか。