第三話
あなたの心許せる人は誰ですか?
階段で降りるよりも速いと思って、二回の柵から飛び降りた。その結果速かったが足がジンジンとする。
「剛!てめぇら何するんだよ!」
俺が怒鳴り散らすと、さっきまで剛を殴ってた奴らが一斉に俺の方へ向いた。
気味悪ぃ…。
「織田だ!織田がいたぞ!」
バットや鉄パイプを構えた10人ぐらいの集団が、俺に向かって走ってくる。
ヤバい、何か武器を…。これで…。
俺はとっさに掴んだブロック塀で一人の頭を思いっきり叩くと、相手の頭が割れ、血が水道管が壊れたかのように噴いている。
ドサッと倒れ、手から離れた鉄パイプを握り、次々と襲ってくる人の頭を鉄パイプで叩く。
よかった、剣道部主将で…。
この場にいる人は全員倒したであろう。
俺は一息つくと、倒れている剛のもとへ向かった。
「おい、剛!大丈夫か?」
「…ん…」
死んでいた目が徐々に蘇り、俺の方を見る。それだけでも泣きそうになったが必死にこらえ、剛を見る。
「か…ずや?」
「そうだ、俺だ!」
「生きてたのか?」
「お前の言う通り、ちゃんと部屋にいたよ」
「そっか…信じてたんだ…よかったよ…」
「…なんで…いつも俺を信じてるんだ…」
「何言ってるんだよ…」
「ダチだからに決まってるだろ」
それだけ伝え、剛の目は優しく、ゆっくり閉じていった。
『なあ、剛』
『ん?』
『人ってさ、必ず本当に心から許せる人に出会えるんかさ?』
『何いきなり真面目な質問してるんだよ』
『いいから答えろよ』
『んー?わかんねぇよ、俺は人の人生なんか予測できねーし…。でも人は必ず人に会うじゃん。親だったり近所のおばさんだったり、要するに本人が心を許せるのかどうかの話だよ』
『そうか』
『俺は和也に心許せるけどな』
『そうか…』
『喜べよ(-"-;)』
『なあ、剛』
『ん』
『俺はお前の味方だからな』
『あ?』
『たとえ、全世界の人間がお前の敵になっても俺は味方だから』
『でもなぁ、お前裏切りそう』
『心許せるんじゃねえのか(-"-;)』
『…俺も和也の味方だ』
俺も和也の味方だ…。
気が付いたら、俺は涙をボロボロ流していた。
許せねえ…。許せねえ…。
俺は鉄パイプを握り走った。