第一話
正月もあっという間に過ぎていき、バイト先からもらった休みも無くなった。
正月って言っても、特に何もなかった。
実家に帰って、母親が作った雑煮を食べて、ゆっくりと過ごしただけ。彼女がいないからこその正月の過ごし方だ。
部屋の壁に掛けてある時計は、二時四十五分を指したまま微動だにしない。なので、ケータイでも見て時間を確認しようとした時、間違って押してしまったテレビの電源ボタンに映ったテレビの映像は、俺の目を疑っていた。
「地球の神より指令、地球の神より指令。今回、世界に害する人物はこの方、織田和也さん、25歳。織田和也さん、25歳」
不可解な声のナレーション。
ズームアップされる俺の顔。そっくりさんでもクローンでも無い。俺だ。
「我が人類は、織田和也を消滅する事が目標となりました」
嘘だろ…?俺が世界を害する人物だと…?
次に映ったのが、地図。地図には店名からアパート名まで細かく記してある。そこの中心にある、赤い星印。
まさしく俺のアパートだ。
「住所まで…」
俺が震えながら後ずさりすると、ケータイに着信が入った。友達の剛だ。
「はい…」
「おい、和也、お前、何かしたのか?」
「わかんねえだよ、俺は何したんだよ!!」
「それはどうでもいい。それより、お前。外出たら確実に死ぬぞ」
「はぁ!?」
「だからコンビニで何か買ってくるから、お前は外に出るなよ。マジで死ぬからな!!じゃあな!!」
プツ。
俺、死ぬ?
織田和也を消滅するのが我が人類の目標になった…。
俺、殺されるのか?
俺は全てに恐怖を覚えた。今、俺は何もかもが怖い。
普通に過ごしてきた俺の命が、全世界中の人間に狙われている。