プロローグ
このゲームを初めてから1年、何故かは知らないがログアウトボタンが消え失せていた。
始めは何かのバグやトラブルかと思っていた。だが1年経った今でもログアウトが出来ないという状況、そしてこのゲームを抜け出す方法はただ一つしかない――!
そして俺は1年間、モンスターと戦わずにずっと訓練所で過ごして来ていた。
死ぬ恐怖が無かった訳ではない、あったにはあったが実感が沸かなかったのだ……
左の腰には訓練所で貰った短く上に反り上がっている片手剣、そして背中にこれまた訓練所で貰った長い片手直剣、目の前には初めて見るモンスターの姿、モンスターの名前の上にそっけなく伸びているHPゲージ、俺は目の前のモンスターを相手に左腰にある片手剣を抜く。
今回が初めての実戦だ。
姿勢を低くして臨戦態勢を整える。1年間素振りや動き回る擬似モンスターを斬り伏せてきた馴染みのある態勢、
実戦は訓練のように、訓練は実戦のように――!
息を大きく吐いて一気に足を踏み込む。直後、すごい勢いで加速して目の前にモンスターが迫る。
「はっ――!」
目の前にいるモンスターは反応できずにそのまま片手剣の餌食になっていた。
「1年間の賜物か……」
俺は苦笑いしながら剣を腰に納める。
その一連の行動は決して遅い訳ではないが速い訳でもない、ただ単に無駄が無い。
1年間素振りをしたりして上げた片手剣の熟練度はとてつもなく多くなっているだろう。
ウインドウを操作して初めて貰ったドロップアイテムを一瞥すると片手剣を左腰にしまう。
「このくらいじゃ弱いかな? もっと強い奴に行くか」
何を隠そう俺はずっと訓練所に篭もっていた為モンスターの強さが分からなかった。
俺とは違い、皆はもう10日経ったくらいから訓練所を卒業して普通にモンスターを狩っていたのだから……
だが一つだけ確信出来る事と言えば俺はこの1年間のほとんどを訓練に当てた為、努力した時間なら誰にも負けていない事くらいだろう。
……くだらない事だったか?
見上げると真っ青な青い空が見えていた。だが所詮この空だってただのデータかもしれないのだ……。
どっちにしろ現実の空かどうかなんて俺達には分かる訳もないが……
サラサラと砂になったモンスターを一瞥して狩場の奥に入っていった。