表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/24

ヤンデレ攻め【逃がさない】

「やっと捕まえた」

怯えた表情のお前の視線は、呆然と空を見つめたままだ。

俺の名前すら呼ぼうとしないのに焦れて、さっさとベッドルームへと連れ込んだ。

何が何処にあるか、何処の誰とどういう付き合いがあるのかなんて、すでに調べはついている。

単純なお前の考えなど既にお見通しだ。


お前が俺の前から姿を消したとき、俺は考えた。

行方など簡単に突き止められる。幸い、親の遺産で食っている俺には、金も時間も充分にあった。

だが、どうすれば逃がさすに済む?

お綺麗でお堅いお前が俺との関係に悩んでいることなど、とうに知っている。

このまま捕まえても、またお前は逃げ出すだけだ。

「い、やだ」

「そんな戯言は聞かない」

抵抗してくる身体を封じ込め、体重を掛けた。

嫌だと云うお前。そんな嘘を俺が見抜いていないと思ってるのか?

怖いのは、俺か。それとも俺から離れられなくなることか。


はじめて出会ったときから、俺はお前だけ見てきた。

追いかけて、捕まえて、俺のモノにしたとき、泣きながらしがみついてきたお前。

それを諦められるとでも?


姿を消したお前を、俺はすぐには追わなかった。

まずは檻を作り上げてからだ。

お前の親友面したあのすかした野郎に、悩んでいるフリでお前との関係を告げる。

最初はびっくりしていた奴だが、俺が切々と訴えると、お前と話し合えと云って、実家の住所を漏らした。

次は実家に手を回す。

そこでは、親友の身を案じる誠実な男を演じた。

女たちは馬鹿だ。

俺の容姿に簡単に騙されてくれる。

誰にも云うなと云った、お前の願いを簡単に裏切って、俺へお前の居所を教えてくれた。

この部屋を突き止め、借りるフリをして、不動産屋へと出向く。

ちょっと突っ込めば部屋の造りも簡単に判った。

三階の奥。窓も少なく、ベランダは無い。入り口は一箇所。

近くのスーパーでバイトをしていて、大学は休学中。

親しい友人は無く、家とスーパーを往復するだけの毎日。

口の軽い近所の連中や、スーパーの同僚は、ちょっと水を向けるだけで、ぺらぺらとしゃべりだす。

俺は愛想を振りまきながら、情報を集め、外堀を埋めていく。

二度と逃がさない為の。

そして、周囲に張り巡らせた俺の檻の中へと、お前を閉じ込める。

お前が頼る先は、全て俺の手の内。


遠い花火の音が響く。

最後にお前と出掛けた思い出の夜の花。

「いや、だ。お願い」

すがりつくように俺を見る。嘘吐きめ。本当のお前の気持ちを聞かせてもらう。

今日は、絶対に。

「駄目だ。逃がさない、もう二度と逃がすつもりはない」

お前は俺の一部だ。

切り離されては、お前も俺も生きてはいけない。

抱き締める躯は、やっとひとつになった安堵で震えている。


「俺のものだ」


可愛い小鳥、帰っておいで。俺の胸に。

二度と飛ばないように羽をもぎ取ってあげるから。



<おわり>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ