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ドンと恋!〜 私たちのStarting Block 〜インターハイで日本新記録を出したら表彰台で公開告白されました。  作者: 空知美英
5章:恋と笑いと日常と——

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第46話「悪い虫はお断り! 鉄壁の両翼ガード」

放課後のプールサイド。

全体練習が終わって自主練の時間になると、そこには奇妙な光景が広がっていた。


「キャプテン! ここのストロークの動き、もう一度教えてください!」

「キャプテン! このビート板にサインお願いします!」

「キャプテン! あの! 腹筋、触ってもいいですか!?」


自主練中の千尋の周りには、1年生を中心とした後輩たちの人だかりができていた。

これまでは『高嶺の花』あるいは『明日香先輩のもの』というブレーキが全体にあった。しかし、あの宣言動画と、その後のオープンな関係性が広まったことで、「ワンチャンあるかも?」という謎の親近感と誤解が生まれ、ファン心理が爆発してしまったのだ。


「あはは、えっと、順番にね」

「「「はい!!」」」


千尋は困ったように笑いながらも、拒むことなく一人ひとりに対応していた。

後輩たちは嬉しそうに頬を染めていたが、天然の人たらしはそれに気付かず、丁寧に接していく。それが『誤解を加速させている』と知らずに。

そしてその様子を、少し離れた場所から般若のような形相で見つめる二つの影があった。


「……ねえ、玲奈」

「……なによ」

「千尋、隙がありすぎじゃない?」

「同感ね。キャプテンとしての責務とはいえ、あれはファンサービスを超えているわ」


二人の視線が交錯する。

言葉はいらない。

昨夜、部屋で『平等条約』を結んだ二人は、今や千尋を守るための最強の同盟関係にあった。


「行くよ、玲奈!」

「ええ、排除するわよ!」


二人はドカドカドカドカ——と聞こえてきそうな鬼気迫る足取りでプールサイドを蹴り、人だかりへと突撃する。


「はいはい! そこまでぇーーー!!」

「全員、すぐに解散しなさい! キャプテンの時間を邪魔しない!」


明日香が千尋の右腕を、玲奈が左腕をガッチリとガードし、後輩たちの前に立ちはだかる。

手を掲げてブロックする様は、まさに鉄壁の『両翼ダブルウイング』だった。


「明日香先輩!?」

「篠原先輩!?」

「公認が来た……」

「私たちにも……」


後輩たちがブーイングを上げるが、明日香は千尋の肩に頭を乗せ、勝ち誇ったように言い放つ。


「千尋は今クールダウン中! だから愛の力で癒やしてあげなきゃいけないの!」

「そ、そうなんですか?」

「そう! だからこれ以上の接近は、この『正妻』と『愛人』が許しません!」

「待って、誰が正妻で誰が愛人よ。どさくさに紛れて荒唐無稽なこと言うんじゃないわよ、バカ明日香」


玲奈がすかさずツッコミを入れつつ、千尋の身体をタオルで丁寧に拭き始める。


「すぐ拭かないと身体が冷えるし、風邪でも引いたら大変よ。ほら、ドリンク」

「うん、ありがとう」

「コンディション管理はマネージャーの仕事だからね。あと、変な虫がつかないように管理するのもね」


玲奈はそう言いながら、鋭い視線で後輩たちを牽制する。

その目は「千尋に触ったら練習メニュー倍増よ」と語っているようだった。


「さ、さすが篠原先輩……」

「なんかガードが硬くなってる……」

「これが公認カップル——いや、公認トリオの絆!?」


後輩たちは圧倒的な独占欲と連携プレーに、恐れをなすどころか、感動して目を輝かせ始める。


「尊い……」

「生は迫力ありすぎ……」

「鉄壁の両翼ガード……!」

「ありがとうございます!」


なぜかお礼を言われ、後輩たちは満足げに散っていった。


「……なんなのよ、あの子たちは」


玲奈が呆れたように息を吐く。


「ま、いいじゃん、追い払えたし」


明日香はニシシと笑い、千尋にさらに密着する。


「ねー、千尋。守ってあげたんだからさ、ご褒美ちょーだい」


千尋の腰に明日香の手が回る。


「そうね、今後のためにもあった方が良いかも」


対抗するように玲奈も反対側から手を回す。

プールサイドのベンチ。右に明日香、左に玲奈。二人の美少女に挟まれてロックされた千尋は、困ったように、でも嬉しそうに微笑む。


「それじゃ——」


千尋は二人の前髪をそっと上げ、おでこに軽くキスをする。


「これでいい?」


観客席と他の部員から黄色い歓声が飛ぶ。

そして、小悪魔のように微笑む千尋に、鉄壁のガードを誇った二人は瞬時に顔を真っ赤にし、撃沈した。


「なにさ、そのイケメン対応……」

「そういう不意打ちは反則よ……」


「あはは。さ、練習に戻ろっか」


千尋は軽やかに立ち上がり、プールへと戻っていく。

その背中を見送りながら、明日香と玲奈は顔を見合わせ、同時にため息をつく。


「勝てないわね」

「だねー。守ってるつもりでも、手のひらで転がされてる気がする」


それでも二人はすぐに立ち上がり、愛する恋人の背中を追いかけた。

騒がしくも幸せな、部活のワンシーン。

鉄壁のガードは、今日も明日も明後日も——千尋のために稼働し続けるのだった。


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