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ドンと恋!〜 私たちのStarting Block 〜インターハイで日本新記録を出したら表彰台で公開告白されました。  作者: 空知美英
5章:恋と笑いと日常と——

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第44話「ファンクラブ大フィーバー! ~コメント欄は戦場?~」

動画公開から一夜明けた世間は、まさに『白波一色』に染まっていた。


『白波女子学園・堂島千尋の緊急報告動画。二人目の交際宣言!!』

再生数:1億2000万回以上。

いいね:1億以上。

コメント:計測不能。


国内最大手の短文SNS【 Chirp 】のトレンドワードは、上から下まで白波関連で埋め尽くされている。


1. #白波は家族

2. #ちひあすれな

3. #堂島千尋

4. #ハーレム宣言

5. #尊すぎて浄化された


寮の談話室。

テレビには朝の情報ニュース番組が映っており、局の美人アナウンサーが朝らしい爽やかな口調でトップニュースを伝えていた。


『昨日の昼、白波女子学園水泳部の公式ファンクラブサイト【 White Wave 】に突然投稿された愛の波紋は、一夜明けた今でも治まっていません。この騒動を受けて、白波女子学園の理事長で、水泳部顧問でもある白波美沙氏は、昨晩の20時に緊急記者会見を開き——』


画面が切り替わり、美沙顧問の記者会見の様子が流れ始める。

その様子を唖然として見つめるのは、当事者である千尋だった。


「……なんか、すごいことになっちゃったね」


千尋からは、呆れ半分、苦笑い半分の声がもれる。

昨日からずっと、SNSやメールの通知が止まらないのだ。

画面を更新するたびに、秒速で数千件のコメントが増えていく。バッテリーが持たないので、ずっとモバイルバッテリーに繋がっている始末だった。


「あははは! 千尋、見てよこれ!」

「なに?」


明日香のスマホには宣言動画のコメント欄が映っており、そこには 『千尋さん。前世でどんな徳を積んだら美女二人と恋人になれるんですか?』と投稿されていた。


「うんうん、確かにそうだよね!」

「それはそうだけど、なんか……照れるね」

「お、これなんかも!」


この調子で、明日香は昨日からずっとハイテンションだった。


「こっちもすごいよ!」

「今度はなに……?」


ずっと明日香に付き合っていた千尋はくたくただった。

そして見せられた画面を見て、軽くため息をつく。


『怪物・堂島千尋による、人類補完計画ならぬ、白波女子補完計画』


「……私って、そんな尻軽女に見えるのかな?」


メールフォルダに新しく追加された1000件を超える告白メールでさえ断るのが大変なのに、変な誤解まで広がっていると考えると……今度は深いため息が漏れた。

一方の玲奈。

眉間に深い皺を寄せ、高速でフリック入力を行っているその目は血走っていた。


「玲奈はなにしてるの?」

「エゴサよ。変なデマが流れてないか監視してるの。明らかなデマや中傷は見つけたら警告と即通報してる」


玲奈は画面を睨みつけたまま、早口でまくし立てる。


「……どこの世界にも幸せを妬む人っているのよね。【 Blue Script 】(玲奈FC)の人たちを見習って欲しいわ」


玲奈にタブレットを見せられ、専用コミュニティのコメントを読んでいく。


『玲奈様の長年の献身が報われた!』

『これぞ下剋上!』

『Water Bird様はどこいった?』

『幸せすぎて昇天してる?』

『玲奈様もWater Bird様も幸せにするとか、さすが千尋様!』

『千尋様と玲奈様の結婚式、今から楽しみすぎる」

『正妻は管理能力のある玲奈様にしか務まらない』

『うんうん』

『朝倉先輩、脳筋だから』


「……」

「こういったコメントなら大歓迎なのよ。正妻は私にしか務まらない。わかってるわよねー」

「はあ!? どこの誰が正妻だって!? こっち見ろし!!」


明日香が即座に反応し、自分のスマホ——【 SUN♡SPLASH 】(明日香FC)のチャット画面——を突きつける。


『太陽属性のアスカっちが最強。篠原玲奈は月。所詮は陰』

『幼馴染ムーブかましてた玲奈先輩は愛人枠が順当』

『明日香先輩の愛に負けて軍門に降った』


「——って書いてあるじゃん!」

「誰が愛人で軍門に降ったよ! 対等なパートナーって動画で言ったでしょ!」

「でも一番は私だしねー!」


朝から元気な二人だった。

千尋は苦笑しながら、自分宛のメッセージ——【QUEEN’s Current】(千尋FC)のタイムライン——に目を落とす。


『千尋様の包容力は海より深い』

『二人とも愛すとか、漢すぎる』

『私も混ぜて』

『↑抜け駆け禁止!』

『あの腕に抱かれたい』

『次の大会、恋人三人揃い踏みとか激アツ』

『やっぱり最強は千尋様』


そこには、賛否両論ありつつも、概ね好意的な、そして熱狂的な応援の言葉が溢れていた。


「……みんな、受け入れてくれてる、か」


ぽつりと呟くと、言い争っていた明日香と玲奈の動きが止まる。


「ま、時代だねー。愛に形なんてないってことっしょ」

「そうね。それに、昨日の宣言動画……あの痴話喧嘩的な感じが、逆に『ガチ感』がなくて良かったのかも」


玲奈が分析する通り、宣言動画の大半は明日香と玲奈を中心にした痴話喧嘩であり、たまに美沙顧問の『喝!』が飛ぶ様子が、『女子高生らしくて可愛い』と評判になっていたのだ。


「あ、なんか変なハッシュタグができてるっぽい」


明日香が声を上げ、玲奈がのぞき込む。


『#ちひろ争奪戦・関東の陣』


「なにこれ?」

「えーっと……」


スクロールし、詳細を読み上げる。


『関東大会の活躍次第で夜の主導権が決まる!?』

『千尋様のご褒美キスは誰の手に!』


「……だってさ」

明日香が読み上げると、玲奈がなにかを噛みしめるように顔を上げる。


「……ふ、悪くないわね」

「は?」

「関東大会。どちらがより千尋に貢献できるか、ファンのみんなが見てるってことよ。燃えるじゃない」

「ふん! 上等! バタフライ女王の座、見せつけてやるし!」


二人の間に、メラメラと対抗心の炎が燃え上がる。


「二人とも、仲良くやるんじゃ……」

「仲良く『競う』のよ、千尋」

「そうそう! 千尋は黙って、『勝者』の愛を全力で受け止めればいいの!」

「そっか……」


千尋は呆れながらも、二人の活き活きとした表情を見て頬が緩む。

SNSの喧騒は、三人の関係を壊すものではなく、むしろ新しい刺激となっていた。

まるで彼女たちの絆を、競い合う気持ちを、試しているようだった。


「とりあえずファンのみんなに『おはよう』投稿するよ! 千尋、玲奈、こっち向いて!」


明日香がスマホの正面カメラを起動して掲げ、二人を抱き込む。


「え、今!? すっぴんなんだけど!」

「みんな可愛いからノープロブレム! はい、チーズ!」


カシャシャシャシャシャシャシャシャ——!!


「連写!?」

「馬鹿なの!?」


撮られた写真は、慌ててピースする玲奈、ウィンクしながらピースする明日香、そして二人に挟まれて困り笑いする千尋の、爽やかなスリーショットだった。

選び抜かれた写真の投稿ボタンが押された瞬間、日本中の至る所で通知音が鳴る。

白波女子学園の騒がしくも幸せな『公認された』朝は、今日も多くの視線に見守られながら過ぎていくのだった。


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