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ドンと恋!〜 私たちのStarting Block 〜インターハイで日本新記録を出したら表彰台で公開告白されました。  作者: 空知美英
4章:決裂と再生

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第36話「チーム再起動」

都予選から数日後。

白波女子学園水泳部のミーティングルームには、大会に参加した全部員とスタッフが集まっていた。

窓から差し込む午後の光が、ホワイトボードに貼られた都予選の結果一覧を照らしている。

そこには、数々の優勝記録と大会新記録が並ぶ一方で、初日のフリーリレー『2位』という文字が、重い現実として刻まれていた。

部屋の空気は、数日前の宿舎のような重苦しさはない。

むしろ、メドレーリレーでの圧勝劇を経て、チームには確かな一体感と前向きな雰囲気が戻っていた。

しかし同時に、これまでの油断や慢心を捨て、敗北から真摯に学ぼうという、引き締まった緊張感も漂っていた。


「――以上が、都予選における各種目の結果と、個人のタイム分析データです」


玲奈がタブレットに表示された詳細なデータをプロジェクターで映しながら、冷静な口調で報告を締めくくる。

その分析は客観的かつ徹底していた。

個々の選手の良かった点、悪かった点を容赦なく指摘するものだったが、冷徹さはなく、チーム全体の成長を促そうという明確な意志が感じられた。

部員たちも真剣な表情で、玲奈の言葉とデータに耳を傾け、メモを取っている。

報告が終わると、玲奈は一歩下がり、千尋に視線で合図を送った。

千尋は頷き返し、チームの前に立つ。


「――ありがとう。これらのデータが示す通り、今回の都予選では、多くの課題が見つかりました」


千尋はホワイトボードに貼られた『2位』の文字を真っ直ぐに見つめながら続ける。


「――初日のフリーリレーでの敗北。これは、紛れもなく私たちリーダー陣の未熟さが招いた結果です」


部員たちへとゆっくりと視線を戻し、一呼吸を置く。


「チームを不安定にさせ、みんなに不安な思いをさせてしまったこと。白波としての勝利を掴めなかったこと、キャプテンとして、改めて謝罪します。本当に、申し訳ありませんでした」


千尋は深く頭を下げた。

その隣で、明日香と玲奈も再び頭を下げる。

部員たちは息を飲み込み、その姿を見守っていた。

前夜の決起集会で涙ながらに語られた言葉が、改めて全体に重く響く。

千尋は顔を上げ、しっかりとした目で前を向く。


「しかし、私たちはあの敗北から多くのことを学びました。最終日のメドレーリレーでは、チーム全員の力が合わさり、最高の泳ぎをすることができたと思っています」


その言葉に、部員たちの間に確かな共感と自信の空気が広がる。


「この経験を絶対に無駄にしてはいけないと考えています。関東大会はもちろん、続くインターハイ本戦に向けて、私たちはもっと強くならなければいけない。技術的にも、精神的にも、そして――チームとしても」


続いて、明日香が少し照れくさそうに、しかしはっきりとした口調で口を開いた。


「私も、フリーリレーでは本当にダメダメで、チームに大きな迷惑をかけました」


再び頭を下げ、ぐっと前を向く。


「めちゃくちゃ落ち込んで、もうダメだと思ったけど……でも、最後のメドレーで、みんなのおかげで、また前を向くことができました」


胸に手を当て、ぎゅっと握る。


「だから、もう大丈夫! 次の関東では、絶対に最高の泳ぎでチームに貢献します!」


力強い宣言に、部員たちから温かい拍手が送られる。

明日香は太陽のような笑顔で何度もお辞儀し、それに応えた。

最後に、玲奈が静かに言葉を続けた。


「私もチーフマネージャーとして、一人の人間として、今回の反省を活かしてチームを支えます」


ホワイトボードに貼られたデータを見つめ、部員たちに向き直る。


「より精度の高いデータ分析と、選手一人ひとりの心に寄り添ったサポートを徹底していくつもりです。チームの勝利のために、『白波』の一員として、私も全力で戦います」


その言葉には、データだけでなく、仲間を信じる「心」も大切にするという、新たな決意が込められていた。

三人の言葉を受け、チームの士気はさらに高まっていく。

その様子を、美紗顧問と麗子副顧問が、腕を組んで静かに見守っていた。

やがて、美紗がゆっくりと口を開いた。


「よく、自分たちの弱さと正面から向き合い、立て直した」


その声は穏やかだったが、瞳には厳しい光が宿っていた。


「都予選での敗北はみんなにとって必要な試練だったのかもしれない。だが――勘違いするな」


美紗顧問の言葉に、部員たちの表情が再び引き締まる。


「インターハイは甘くない。関東大会には聖明女学院はもちろん、打倒白波に燃える強豪たちが牙を研いで待っている」


ホワイトボードに貼られた『フリーリレー 1位 聖明女学院』の文字を教鞭でビシッと示し、全体に鋭い視線を向ける。


「今日の言葉がただの感傷で終わるようなら、また同じ過ちを繰り返すことになるぞ」


美紗顧問は、千尋、明日香、玲奈を真っ直ぐに見据えた。


「お前たち三人が本当の意味で成長し、チームを導けるのかどうか――。本当の戦いは、ここからだ。わかったな!」

「「「はい!」」」


麗子顧問も頷き、言葉を添える。


「敗北から学び、より強固な絆で結ばれた今の白波は強い。でも、その強さを過信しないこと。常に謙虚に、常に貪欲に、勝利を追求しなさい」


顧問たちの厳しい檄が、再びチーム全体の気を引き締める。

感傷と勝利に浸る時間は終わりだ、次の戦いはもう始まっている――その言葉に部員たちは起立し、姿勢を正して気合いを入れる。

千尋は活気あるチーム全体を見渡すと、大きく頷く。

その瞳には、もう迷いはなかった。


「私たちは都予選での敗北を絶対に忘れません。この悔しさを力に変えて、関東大会では、個人としても、チームとしても、圧倒的な結果を残します! そして、必ずインターハイ9連覇を達成します!」


キャプテンの力強い宣言に、全員が力強く頷く。

明日香が音頭を取り、声を張り上げる。


「行くぞ、白波! 自分を超えて、栄光をその手に!! エイ、エイ――」

「「「オーーーーッ!!!」」」


ミーティングルームに、復活を誓う力強い声が響き渡った。

敗北という名の嵐を乗り越え、白波女子学園水泳部は、より強く、より結束したチームとして、関東大会へと歩み始めたのだった。

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