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ドンと恋!〜 私たちのStarting Block 〜インターハイで日本新記録を出したら表彰台で公開告白されました。  作者: 空知美英
3章:崩壊へのプレリュード

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第24.5話「見守る者」

夜のプールに手を繋いだ二人が現れる。


『なんかドキドキするね、明日香』

『悪いことしてるみたいだもんねー』

『確かに』

『こんな夜に出歩くなんてとんだ不良少女だよ、千尋君』

『君も同罪だよ、明日香君』


その様子を、監視室のガラス越し見守る二つ影があった。


「最近のギスギスが嘘のようだな」

「そうね。日中の空気が嘘のよう」


白波美沙顧問と、高城麗子副顧問。

美沙顧問は練習後、千尋からプールの時間外申請と、外出申請の相談を受けていた。

普段であれば、こんな私的すぎる理由での使用は却下している。

しかし、今回の件に関しては『ノー』とは言えなかった。


「白波の瀬戸際……堂島も、それを感じているんだろうな」

「でしょうね。白波のキャプテンはタイムだけでは務まらない」

「ああ。まあ、こんな状況を引き起こしてる時点でマイナスだが」


美沙が向かいに座る麗子に苦笑いを浮かべる。

麗子は湯気の上るコーヒーカップに口をつけ、一息つく。


「青春してて楽しそうじゃない。私は羨ましい」

「三人の衝突で済んでれば可愛気もあったんだがな……」

「記録会で持ち直したように思えたのに、恋心というのは複雑ね」

「堂島のがあんな風に積極的ならすぐ解決するぞ。全く複雑ではないな」


プールでは千尋と明日香が抱き合い、唇を重ねていた。


「堂島の優柔不断、朝倉の独占欲、篠原のプライド……頭が痛い」

「玲奈ももう少し素直になればいいのに、とは思うわね」

「無理だな。学生の頃の麗子だぞ、あれは」

「あら、それは頑固者ってこと?」

「ああ。仕事が出来すぎるところまでそっくりだ」

「じゃあ無理ね。学生の頃の私に、大切な人のタイムより感情を優先しろって言っても、絶対に無視する」

「そこに朝倉という存在がいるんだ、余計に素直になれないだろ」

「そうね。もしも美沙の隣りに恋人がいたら——」


麗子の目が明日香を捉え、ギラッと光る。


「——きっと、恐ろしいことになってるわ」

「止めてくれ、容易に想像が付く」

「そう思うと、私は恵まれていて、玲奈はちょっと可愛そうね」

「……これは、雨降って地固まるのを待つしかないか……」

「でしょうね。下手に恋愛アドバイスとかすると余計にこじれそう」


麗子はプールサイドで抱き合う二人を見ながら、玲奈の境遇に同情する。


「プライドとプライドのぶつかり合いは大きな痛みが伴うのよ」

「ん? 経験談か?」

「ええ。プライドとプライドがぶつかって、崩れて、一つになった。それが今の私」

「そうか、己のプライドとプライド、か」

「美沙は大きなプライドがドンとあるタイプね。堂島さんも」

「……」

「そして——」


麗子の目が惚けている明日香の目を見る。


「朝倉さんと玲奈は、沢山の小さなプライドで出来ている」

「はあ……」

「レジェンドがため息つかない」

「だってな……」

「美沙や堂島さんが異常なだけで、普通の人はみんなそうなのよ」

「そう、なのか?」

「そう。だから惹かれるの。その大きすぎるプライドが眩しいから」


麗子は先ほど届いたメッセージを開き、可愛そうな後輩の顔を思い浮かべる。


「——報われると良いわね」

「ん?」

「なんでもない。それより——」

「二人とも、ある程度の気持ちの整理は出来たみたいだな」


千尋と明日香はシャワー室に一緒に入り、笑いながら身体を流していた。


「きっと、まだまだ荒れるわよ」

「とりあえず、結果を出してくれれば良いさ」

「冷たいのね」

「私はあいつらの保護者じゃないからな。水泳部の顧問で学園長。生徒全員の幸せを守る責任がある」

「そうね」

「あいつらも他の部員も、同様に扱わなければならない。それが顧問としての責任だ」

「ええ」

「もしも、次の都予選でぶざまをさらし、他の部員を不幸にするようなら——」

「どうするの?」

「……『喝!』を、入れてやる」

「優しい」

「ほら、堂島たちも帰ったし、私たちも帰るぞ」

「ええ。預けてきた結衣が心配だから、急ぎましょう」


美沙と麗子は甘い香りが漂うプールを点検し、三人の幸せを願いつつ、一緒に扉を閉めるのだった。

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