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ドンと恋!〜 私たちのStarting Block 〜インターハイで日本新記録を出したら表彰台で公開告白されました。  作者: 空知美英
3章:崩壊へのプレリュード

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プロローグ「私のプライド」

ベッドの中、玲奈は考える。

千尋の優しさと、明日香の想いを。


(千尋にお粥を食べさせてもらって、純粋に嬉しかった……)


あの笑顔と優しい手つき。

熱いお粥をフーフーして冷ましてくれる千尋の姿は、女神や天使のように綺麗だった。

その手で優しく口に運んでもらうお粥。

間違いなく、人生で一番美味しいお粥だった。

そして、間違いなく人生の思い出に残るような体験だった。

きっと、生涯忘れない。

あの笑顔を思い出すだけで胸が締め付けられる。

あの味を思い出すだけで幸せになれる。

不思議。

こんな気持ちになることなんて、今まで一度もなかった。

……私は、どうしてしまったの?

千尋は水泳部キャプテンで、私はチーフマネージャー。

部を導く者と、部を支える者。それだけの関係のはず。

確かに一目惚れはした。

高身長、端整な顔立ち、一般人ではありえない不思議なオーラ。

入学式で一目惚れ。惹かれない方が無理。

明日香と私は初等部から白波にいる生粋の白波女子。

成績もよくてそれなりに目立っていたので、多少強引でも千尋と同室になれた。

寮生活一日目は、欲情を抑えるのが大変だったのをよく憶えてる。

明日香も一緒。

二日目の朝には二人で笑い合った。

でも、三日目、四日目、一月、半年と過ごすうちに、そんな感情はなくなった。

千尋はすごすぎた。

千尋が普通だったのは一年生の初めの頃だけ。

すぐに先輩のタイムに並び、エースに並び、高校トップになり、日本新を叩きだした。

千尋は英雄。

そんな人に欲情するなんて失礼すぎる。

すぐに恋心はなくなり、千尋のタイムを伸ばすためだけの役割に徹した。

嬉しかった。

私のデータで千尋のタイムがコンマ1秒でも縮まることが。

そう。私のデータで千尋を笑顔にすることこそ、私の存在意義。

だけど——明日香は裏切った。

……裏切った?

なんで裏切りだと思うの?

明日香は一途に千尋を想っていた。

恋愛相談にだって数え切れないぐらい乗った。

そして、告白して、結ばれて、一つになった。

いいじゃない、それで。

裏切ってない。

明日香は明日香はのまま、なにも変わってない。

ずっとまっすぐに千尋を追いかけて、追いついて、隣に並んで、結ばれた。

でも——千尋の隣りいるのは、どうして私じゃないの?

ずっと千尋の後ろにいたのは私。

ずっと千尋を支え続けてきたのも私。

明日香はすごい。それは認める。

初等部の頃から天才スイマーと呼ばれ、ずっと期待に応えてきた。

私のデータを超えて、自己新を出したのも称賛する。

ありえない結果を出し続けたきたのが、朝倉明日香という超人。

そして、今は千尋という英雄の隣りに、我が物顔で立っている。

——許せない。

英湯の隣に立っていいのは、英雄を支える者。

そして、ずっと支えてきたのは、私。

……ああ。また、ドロドロした感情が溢れてくる。

私は千尋に、職務以上の『なにか』を持ってるの?

尊敬?

畏敬?

畏怖?

恋慕?

愛情?

ない。

ないったらない。

そんなものは不要。

キャプテンとチーフマネージャー。それだけでいい。

もっと機械的に、事務的に、冷静に、冷徹に——。

明日香が挑んでくるなら、私は私のプライドで迎え撃つ。

支える者——チーフマネージャーとして、全力で。

絶対に……負けない。

この後21:00にも追加で投稿します。

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