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ドンと恋!〜 私たちのStarting Block 〜インターハイで日本新記録を出したら表彰台で公開告白されました。  作者: 空知美英
2章:静寂と揺らぎ

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プロローグ「世界が、波に揺れた日」

 春季大会が幕を閉じた、その夜。

 日本中が、白波女子学園が生み出した「波」に揺れていた。


 夜9時のニュース番組【NST Sports Nexus】のトップニュースは、もちろん競泳だった。


『全国のみなさん、こんばんは。本日の【Sports Nexus】は私、本条美咲がお届けします』


 画面に映るのは人気スポーツ番組とその司会者。

 大きなテロップと共に、トップニュースの見出しが表示される。


『まずはやはり競泳。本日行われた春季大会最終日、またしても歴史が動きました』


 大きなワイプが表示され、堂島千尋のレースの切り抜きが表示される。


『去年のインターハイで一躍時の人となった白波女子学園の堂島千尋選手。女子200メートル自由形で、自身の持つ日本記録を更新しました。さらに、最終種目の100メートルフリーリレーにおいても、チームを高校新記録での優勝に導くなどの大活躍。会場は大歓声に包まれ、SNSでもトレンドトップになるなど、非常に話題になっています』


 スタジオには、スローモーションで再生される千尋の美しいフォームと、チーム全員で喜びを分かち合うレース直後の映像が映し出され、コメンテーターが興奮気味に語る。


『すごいですねー。強さはもちろんですが、白波はチーム力としても他を圧倒してると思います』

『私もそう思います。堂島選手はもちろん、チーム全体が良い雰囲気に見えます』

『ですねー。これは、水泳部顧問である白波美沙さんの指導方針、個ではなく共同体で勝つという意識が完全に行き渡っているからでしょう』

『共同体——家族のような感じでしょうか?』

『そうですね。他人ではなく、家族のようにわかり合っている、という感じでしょうか』

『そういわれると、この様子も納得です』


 画面には4人が抱き合い、ピョンピョン跳びはねている様子が映る。


『仲の良さをすごく感じますね』

『堂島千尋選手と朝倉明日香選手はチームの柱であり、パートナーですから』

『私はあのサプライズ告白にすごく感動しましたよ』

『なんというか、歴史が動いた感じがしましたね』

『はい。特に——』


 春季大会の様子は特集が組まれ、40分に渡って白波女子の活躍が流れた。

 一方、深夜のカルチャー番組【TBCミッドナイト・アイ】では、少し違う角度からこの熱狂を分析していた。


『——興味深いのは、ファン文化の成熟です。水泳部顧問であるレジェンドスイマー・白波美沙氏が切り開いたといわれる水泳文化ですね』


 画面には、ファンクラブの名前や人数がランキング式で表示される。


『ご覧の通り、多くは水泳関連。ファンクラブの累計人数は1000万人超えともいわれています。アイドルグループや芸能人、インフルエンサーの方々を優に超えていますね、これは』


 水泳関連のファンクラブ名が白文字から赤文字に変わり、強調される。


『このうち、白波女子学園の関連ファンクラブはこちらです』


 赤色の文字が青色に変わる。


『ランキングトップが白波女子学園水泳部の公式ファンクラブ『White Wave』で800万人。2位が白波美沙氏個人の公式ファンクラブで『Aqua Eternity』で600万人。この二つが突出していますが、他の個人ファンクラブも数万から数百万。このように、『白波』は完全にブランド化しています』


 番組は次に活動内容や月額費などの比較にうつり、その巨大すぎる経済効果についても説明。

 ゲストコーナーでは芸能人が『私も白波ブランド欲しい〜』と冗談を言い、スタジオの笑い誘っていた。


 同時刻、国内最大手のSNSアプリ【Chirp】のトレンド欄は、白波一色に染まっていた。


 1位:#堂島千尋

 2位:#白波

 3位:#日本新

 4位:#チーム白波

 5位:#ちひあす


『白波やばすぎw』

『女子水泳の☆』

『ちひあすは至高』

『水泳星人』

『世界新狙えるんじゃね?』


 動画配信サービス『Stream+』では、大会の公式配信映像がアーカイブ化されるやいなや、急上昇ランキング1位を獲得。

 特に、千尋が日本新記録を達成したレースと、4×100mフリーリレーの映像には、数時間で数百万のコメントが殺到していた。


『鳥肌もの。これが女王の泳ぎ』

『最後の100m、一人だけ次元が違うw』

『リレー後の抱擁、熱すぎる……』


 これらの熱狂の中心で最も活発だったのが、各ファンクラブだった。


 堂島千尋のFC【QUEEN’s Current】では、いつもの号外が大会直後から配布され、大会の写真(現地FC会員お手製)を素材にした限定記念グッズ——Tシャツやポスター、アクリルスタンドなどの予約販売を開始。即時『SOLD-OUT』、『休止中』の大反響。

 FC公式【Pixsta】アカウントでは、現地取材したFC会員によるショート動画が多数アップされ、テレビや配信サービスにはない濃い内容に、数百万『いいね!』が付いていた。


 そして、明日香が名誉会長を務める公式FC【SUN♡SPLASH】では、明日香自身が【ReaTalk】で『優勝記念ゲリラ配信』を開始。千尋をゲストに呼び、「みんなー、応援ありがとー! 千尋の勝利は、あたしの愛の勝利でもあるのだ!」と生宣言。

 コメント欄は『ちひあす最強!』、『公式カップル尊い!』の弾幕で埋め尽くされ、投げ銭が多数飛び交っていた。


 それらが『動』のFCなら、こちらは『静』のFCだった。

【Blue Script】

 玲奈推しで構成されているこのファンクラブは、独自の論評エッセイを多数【ClipNote】に投稿していた。


『タイトル:勝利の設計者 — なぜ白波は勝ち続けられるのか』


 記事は、玲奈が作成したであろう詳細なラップタイム分析や、玲奈の的確なサポートがチームに与える影響を、専門的な視点から解説する、読者を選びすぎる内容だった。

 そして文末には『選手を輝かせるのは、光の当たらない場所で戦う者の献身である』と結ばれ、『#支える力』、『#真の支柱』、『千尋×玲奈』というハッシュタグと共に、静かに、しかし確実に拡散されていく。

 この記事の著者は『Water Bird』と名乗り、『千尋×玲奈』を最推ししているが、その正体はFC関係者ということ以外、謎に包まれているのだった。


 こうして、熱狂と喧騒の一夜が更けていく。

 世間の熱が少女たちの心にどのような影響を与え始めているのか、それは誰にもわからない。

 物語は、変わり始めた静かな日常へと、舵を切り始めていた——。

このあと21時00分にも投稿しますので、よろしくお願いします。

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