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「とうとう出発だな」
「油断するなよ。駆け込み乗車は重要キャラだと言ってるようなもんだ。走って近づいて来る奴がいたら馬車から飛び降りるぞ」
「重要キャラなら同行させた方がいいのではないか?」
「いや、これ以上人数が増えたら誰がしゃべっているのかわからなくなる」
「技術不足というわけか」
「違いますー、会話で繋げる物語だからですー」
「それだと状況が説明不足になるだろ。会話が不自然になるのは見えているが、天気くらい触れておいた方がいいんじゃないか?」
「あ? 晴れてんじゃないの? 知らんけど」
「私たちが乗っている馬車ってどんなのなんだ?」
「宇宙戦艦を模してる水陸両用のすごい奴だ。陽電子砲も撃てるぞ」
「……そんな適当で大丈夫なのか?」
「コネストーガ幌馬車みたいのに乗ってるって言われても何言ってるか分かんないだろ? 馬車の種類なんざ調べればどうとでもなる。重要なのはそこじゃない――」
「とうとう出発ですよ! ジョセフィーヌ、頑張ってくださいね。ひゃっふーい!」
「文字だけでロリをどれだけ可愛く表現できるかだ」
「医師からは何と?」
「末期だそうだ。注射が怖いから緊急手術は断った」




