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「緊急事態が発生した! このままだと俺の妹が地下牢へ単身突撃したのち、空へ向かって破壊光線を照射してしまう!」
「どういう状況だ!? お前の妹って何なの!?」
「……俺のミスだ。すまない」
「悔やんでも仕方ないさ。今は私たちに出来ることをしよう」
「そうだな、だが対処は簡単だ。つまり、同一人物ではないとちゃんと明記すればいい。ここであの設定を復活させるぞ!」
「どんなだ?」
「妹は猫耳が生えている設定だ」
「……何を言うかと思えば。お前の妹には最初から猫耳が生えていただろう?」
「ナイスだ、アダム!」
「兄は普通人なのに妹は獣人だから、あまり踏み込むのも良くないと思ってな。あの時は濁されてしまったが、これも伏線だったのだな?」
「ああ、誤魔化さずに今こそあの質問に答えよう。……実は母親は獣人だったんだ。俺に猫耳は生えてこなかったけどな」
「これで、いけるか……?」
「さすがに猫耳幼女の半獣ハーフヴァンパイアという設定には無理がある――――戻って来い、妹!」
「ね」
「ね?」
「猫耳なんて生えてませんよ!? …………はっ! 私は何を!?」
「成功だ。設定が破綻しすぎたらしい」
「何が起きたんですか!? 意識を誰かに乗っ取られた気がします!」
「ああ、実は、お前が魔王城へ単身突撃したのち、空へ向かって破壊光線を照射してしまうところだったのだ!」
「どういう状況ですか!? ――耳が!? 猫耳が私の頭に本当に生えちゃってます! ネコミミ、ナンデ!?」
「これから妹は語尾に『にゃん』を付けるのを忘れないように。また意識を乗っ取られるかもしれん」
「……そんな恥ずかしいこと言えないですにゃん」
「ついでに別人だとはっきりしておこう。妹よ、今更ながらお前に名前をつけるぞ!」
「本当に今更にゃん」
「お前の名前は――――B子だ」
「適当の極み!?」
「ビーコンをもじった。意味は目印。つまりは本体ではない――これで再び乗っ取られることもないだろう」
「……礼は言わないですにゃん」
「B子よりもさらに適当に名づけるぞ? 俺の名前はA男だ。意味はまっったく無い! ただ、これ以上ないほど明らかに兄妹だと分かる。だがせめてA男と呼んでくれ。……早く帰って来い、みんな待ってるぞ。バックルームコラボ配信は神回だった」
「個人的な感想をここで言うのはやめておけ」




