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「魔王がここでゆっくりしている謎と、急いでいるけど急いでいないという矛盾した言葉。どうすりゃいいかと悩みに悩んだ結果、こじつけと想像力で真の結末へ辿り着くことに成功した!」
「あらすじのことはどうするんだよ!? お前たち、あんなに好き合ってたじゃないか!?」
「……あらすじとは別れた。最初から俺には不相応だと思ってたんだ――秘書エンドは無しだ! あらすじとは遊びだったのかと怒る奴もいるだろう。だが、俺は良い感じの新キャラと付き合うことにする。裏切り者と罵ってくれても構わない!!」
「……で、何エンドにするんだ? やっぱり思い付きませんでしたと謝るなら今のうちだぞ?」
「俺は――――魔王城周辺は時間が止まってるエンドでいくことにする!!」
「……そんな設定で着地は出来るのか?」
「魔王城の時間が止まってるから急がなくとも大丈夫。だけど中に囚われてる人達は早めに助けてやりたい。急いでるけど急いでいないの答えがこれだ。そして、時間が止まってる魔王城には近づけない……つまり玉座に座れない。魔王が放浪している理由も良い感じでクリアした。そして――――テキストの3ページを開いていただきたい! 過去になんとなく書いた文章を実は伏線だと言い張って回収します!」
『道案内くらいしてあげなよ、お兄ちゃん。薬草のストックも足りなくなってきたし、採取ついでの観光だと思えば♡』
「このように魔王城は観光地化している。これが時間が止まっている証拠ではないでしょうか!?」
「意義あり!! 魔王城周辺の時間が止まっている噂も描写も無かった! 驚天動地過ぎて寝耳に水だと思いまーす!」
「とある文献にこのような記述がある――『地下牢に捕らえられている少女』――その地下牢があるのはここの魔王城だったとすればいい。つまりは同じ世界だったと――この物語はサイドストーリー的な奴だったのだ!! その少女についての詳細は省くが、時間が止まっているのはそのせいだ。俺には止まった時間を動かす方法など分からない――が、時間は勝手に動き出す。そこへ都合良く訪れた予言者の俺が祭り上げられるって寸法だ! これでハッピーエンド! 時間が止まってる理由も知ってるしな!」
「知っているのか!? 雷電!!」
「簡単に説明すると、五億年ボタンを勝手に連打されて、肉体は無事でも魂は焼き切れるのかという悪魔の実験だ。神の戯れだよ」
「酷くないか?」
「ああ、酷い! さっそく助けに行かねば!」
「……何の情報も無しにこの答えに辿り着くとは、さすが予言者を目指しているだけはある。頼む、魔王城を救ってくれ!」
「ああ、後のことは全部俺に任せろ!!」
「……それでハッピーエンドだとしても…………私がついてきた意味ってあったんですか?」
人がせっかく結末をやっとこさ思い付いて勝利を確信しているというのにこの妹は、空気も読まずに自分も何かしたいと駄々をこねるとは――
「え? いる? ハッピーエンド目前なんだぞ?」
「……約束したじゃないですか」
……ったく、しょうがない。
適当にこれやっとけって言っておけば、こいつも満足するだろう。
うーん。
――
――――
――――――お?
この展開は熱い!!
ちょうど妹は名乗っていないし、幼女という共通点もある。
だけど、それは駄目だろう!!
面白くなりそうという理由で、残される者の心情を無視していいはずがない!!
だが――残念ながら、二人が同一人物ではないと証明する手段が……存在しない。こんなことなら、お互いの姿を正確に描写しておくんだった!!
「どうしたんですか、お兄ちゃん? もしかして――――私の正体に気付いちゃいましたか?」




