第85話 仁と音羽の関係(その4)
「兼田クン、途中まで一緒に帰らない?」
「えっ?」
あっという間に放課後になり、仁が帰る支度をしていると、日花里が声を掛けてきた。
「何よ?」
仁は音羽の方に見てどうして良いか視線を送ったが、それを睨んでいると思った音羽は怒った口調で仁に言い返してきた。
「良かったら月見里さんも一緒にどうかな?」
「は? なんで私が兼田君と小山内さんと一緒に帰らないといけないわけ? 小山内さんが帰りたいって言っているのなら2人で帰れば?」
仁は音羽に伺いをとったが、仁の予想に反して音羽の答えは淡々としたものであった。焼き餅とかそういうものではなく、何の感情も無く勝手にすればいいと仁は捉えてしまった。
「ふーん、そっか。それじゃ、月見里さんも一緒に帰ろうよ。2人とも時間あるでしょ? あるよね? という訳で、今からカラオケ行くわよ。一緒に行く人ーっ!」
「わ、私、行くなんて言っていない」
「おい、誰も寄り道するなんて」
日花里は突然大きな声を上げて、一緒にカラオケに行くメンバーを募った。
「私、暇だから行くよ」
「私も、兼田クンが行くのなら、行ってみようかな」
「おい、兼田だけ良い思いをさせないぞ。俺も行くぜ」
「おっ、楽しそうだな。部活を休んで行ってやるか」
日花里の呼びかけに対し、複数の女子が名乗りを上げた。すると仁が居るため、女子だけの集まりでないことを読み取った一部の男子も参加に名乗りを上げた。こうしてクラスの3割程度が参加するという、このクラス初のカラオケ交流会が開催されることになった。
「月見里さん」
「なに? 小山内さん?」
「アナタも兼田クンを狙っているんでしょ? 私にはわかるわ。お互いフェアな勝負をしましょう」
「わ、私そういうのじゃ無いよぉおおお」
日花里は音羽に対してライバル宣言をした。音羽はこの日、確かに仁のことをチラチラ見ていたが、それはお金を返す機会をうかがっていただけで、そういう気持ちで見ていたのではなかった。結局、音羽も日花里に確保され、この学校に通ってから初になる寄り道遊びをすることになってしまった。
「ひかりん、抜け駆けだぁ。私も兼田クンの隣を狙っていたのに」
「月見里さん、その場所変わってくれない?」
「席順は早い者勝ちって決めたでしょ。ほら、あの男子の塊のところが空いているよ」
「「うほっ、女子キター」」
「キモくてイヤー!」
日花里が率いる一行は、学校から近いところにあるカラオケボックスの中に入っていった。この店には大部屋があり、クラスの半分の人数でも楽々入れるほどの部屋があった。日花里はその部屋を押さえて、参加した全員を部屋に案内した。その前の段階で、席順は早い者勝ちというルールを提示していた。それに従い参加者達は狙っている異性や、仲の良い友達どうしで座り、ごく一部の溢れたものは、どこか座る場所を探さなければならなかった。日花里は音羽の手を持ち、ある場所に座らせた。そこは仁の隣の席で、その反対隣には日花里が座った。




